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みぎあね
2026-02-23 20:29:27
3432文字
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二次創作
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とっぴんぱらりのぷう
一番とっておきの物語を一つ。詩って聴かせてあげようか。
―――――――――――――――――――
吟遊詩人がちゃんと吟遊詩人をしていて感動するグ・ラハの話。(サンクレッドは添えるだけ)
恋愛描写は入れてないつもりですが、ラハ光ラハ製造ラインと同じラインで作ってます。
珍しく晴空が広がるモードゥナ。冒険者達で賑わうレヴナンツトールの街は、今日も活気に溢れている。
客を呼ぶ店主達の溌剌とした声が飛び交う中、立ち並ぶ露店の一つで買い物をしていたグ・ラハは、タタルからお願いされた買い出しリストメモをもう一度確認した。
――
買い忘れは無さそうだな。
グ・ラハは一つ頷いて、紙袋を店主から受け取った。パンやら果物やら、その他諸々。主に食料品が詰め込まれたその上に、店主がちょこんと林檎を添える。
「一つおまけだ、受け取ってくんな!」
「ありがとう」
店主に人好きのする笑顔を返して、そこそこに重みのある紙袋を抱え直す。小さなタタル一人ではなかなか大変だっただろう。同じく手伝いを申し出たサンクレッドも、そろそろ買い出しを終えている頃だろうか。
合流して石の家に戻ろうと、キョロキョロ辺りを見回しながら歩いていると、
「あっ、冒険者のお兄ちゃんだ!」
その言葉にぴくりと耳が反応する。
ぱたぱたと目の前を駆けていく子どもたちの行先を目で追うと、門の入口に丁度帰ってきたばかりらしき冒険者こと暁の英雄の姿があった。
今日は竜騎士の装いらしく、その背には身の丈以上の槍が背負われている。
ぴっ、と無意識にグ・ラハの尻尾が立った。
強くてかっこいい冒険者のお兄ちゃんは、レヴナンツトールで大人気だ。一番人気者と言ってもいい。当然である。何せグ・ラハの一番憧れの英雄なのだから。
ふふん、とグ・ラハはなんだか鼻が高くなった。
「今度はどこに行ってたの!?」
「今日はどんなお話聞かせてくれるの?」
あっという間に子どもたちに囲まれたク・クィは、慣れた様子で皆をいなしながら道端に逸れる。一瞬で竜騎士の換装を解き、吟遊詩人の装いに身を包むと、ワッと子どもたちから歓声があがった。
しぃと人差し指を立てて静寂を促すと、青年はおもむろに口を開いた。
「
……
これから語るはとある小竜の冒険譚」
一音、ポロンと竪琴を奏でる。
「遠き異国 父竜の愛しきを求め三千里
小さな白き翼よ 大翼を胸にいざ羽ばたかん
……
♪」
「
――
なんだ、あいつ帰ってきてたのか」
「うわっ」
物語に耳を傾け聴き入っているとすぐ隣から声をかけられ、ビョッと驚いて思わず紙袋を取り落としそうになった。サンクレッドは紙袋から零れた林檎を素早くキャッチすると、悪い悪いと軽く笑った。
「聴くのは初めてか?」
林檎を受け取りながら頷く。戦いの中、味方を歌で鼓舞する姿は見たことがあるが、竪琴を片手に物語を詩っているのは初めて見た。
「あれってよくあることなのか?」
「第一世界から帰ってきてからだな。最近は外からレヴナンツトールに戻ると、いつもああやって捕まってる」
グ・ラハが原初世界で目覚めてから早数週間。クリスタルタワーの調査やら封印やら、身体の調整やら魔法の練習やら、第一世界での報告書やら何やらでグ・ラハは毎日てんやわんやしていた。それはもう落ち着く暇も無く。
どれも重要なことだった為、手を抜くこともできず、最近はやることをやって寝てを繰り返す日々だった。
だから、まさか、ク・クィがそんな詩を創って詩っているなど知らなかった。
「あいつの詩はすごい人気だぞ。酒場でもあいつが弾き語り始めると、酔っ払いすら静かになる」
なんだそれは。羨ましすぎる。英雄から生で冒険譚を聴けるなんて、最高すぎるだろう。
今まで何度の聴く機会を棒に振ったか
……
それを考えると、今すぐに荷物を放り投げて頭を抱えて転げ回りたくなった。
――
よし、止めよう。
グ・ラハは一先ず詩の続きに集中することにした。
♫・♪・♫
竜詩戦争がきっかけで、千年も昔に離れ離れになった父竜と番い。しかし、長きに渡る戦争は終わった。ならば今こそ、その番いを探して迎えに行こう。
眠れる猛竜、紅玉海の怪竜
……
嘘か本当かも分からないような伝説や噂を頼りに、小竜と竜騎士は東奔西走する。イシュガルドから始まりギラバニア、遂には海を渡ってクガネまで。行く先々で危険に見舞われながらも、一匹と一人は黒き竜の足跡を辿っていく。
そして旅路の果て、アジムステップでついに"漆黒の巨竜"と呼ばれるかの竜との邂逅を果たしたのだ。
ようやく会えた!遠くまで旅をして、何度も空振りを続けて!
……
しかしそれは手放しに喜べるものではなかった。
戦争によって愛する者と引き離された悲しみが、千年にも及ぶ孤独が、黒き竜の心を壊してしまっていた。
「郷愁叶わず 積年の孤独
我を焼き尽くし 獰猛な獣へと落つ」
「竜の眼は憎悪に曇り 喉を焦がす慟哭
劫火となりて 青葉を灰燼に帰す」
物語は佳境へと差し掛かる。軽やかだった琴の音色も低くなり不穏さを帯びる。
「草原が、燃えていた」
子どもたちは皆一様に拳を握りしめ、ごくりと固唾を飲んで聴き入っている。
勇気を振り絞って小竜は咆える。帰ろう、と。
けれどもその声はあと少しのところで届かない。あと少し、あと少し、足りない。
ああ、僕じゃダメなんだ。悲しみと悔しさに小竜の瞳から涙が零れそうになった。
――
その時、一陣の風が草原を吹き抜ける!
「小竜の咆哮 冬国の吹雪を呼び寄せん」
空から舞い降りたのは白き竜。小竜の父は天に轟かん程の力強い咆哮を上げた。狂気に飲まれた愛する者を取り戻すために!
「『嗚呼、我が愛しき翼よ、迎えに来た。
共に帰ろう、懐かしき故郷(そら)へ!』」
ク・クィの口から聞き慣れない言葉が発せられる。恐らく竜語を模した言語だろうそれの意味は、超える力を持たないグ・ラハや他の聴衆には分からない。
しかし、その"音"からは愛しい黒き竜を一心に思う、白き竜の切なる願いが痛いほど伝わってきた。
白き竜と小竜の想いが千年の苦しみから黒き竜を救いあげ、物語は大団円でフィナーレを迎える。
「小さき翼は大空へ 永遠に風よ吹けと
心向くまま赴くままに 風に乗って何処までも」
最後の一音が余韻の尾を引いて宙空に溶ける。詩が終わるや否や歓声があがった。
子どもたちと、いつの間にか増えた通りすがりの聴衆から拍手と喝采を受け、吟遊詩人は少し照れながら恭しく一礼した。
♫・♪・♫
人の群れが疎らになっていく中、はたとこちらに気づいたク・クィが手を上げる。サンクレッドと軽い別れの挨拶を済まし、グ・ラハは詩人の元へとすぐに駆け寄った。
「なぁ、今の!
……
っとっと」
袋の中からまた危うく林檎が転がり落ちそうになり、慌ててバランスを取る。すんでのところで何とか落ちずに耐えた林檎に、ほっと一息吐いて、大きく息を吸った。
「すごく良かったよ、あんたの詩!もしかして他にもレパートリーがあるのか!?」
興奮冷めやらぬままグ・ラハが食い気味に尋ねると、ク・クィは目を瞬かせた後、表情を緩めた。
「ありがとう。あるよ。君が聴きたいなら、幾らでも」
よしっ!と、ガッツポーズを決める。
なんせ英雄本人の口から語られる冒険譚だ。何にも変え難い価値がある。報告書で読むのとでは全然違う。全く違う。それはもう、本当に。
ぶんぶんと尻尾を振るグ・ラハの後ろから、ひょっこりと子どもたちが顔を出した。
「なぁク・クィ兄ちゃん、次は水晶の英雄の話をしてよ!」
「異世界の超かっこいい魔法使いの話!」
「もちろん」
ん?とグ・ラハは首を傾げる。
「なあそれってどんな話なんだ?」
グ・ラハの問いに青年はくすりと微笑むと、静かに人差し指を唇に立てた。
吟遊詩人は再び竪琴を抱え、ぽぉんと爪弾く。
「これは水晶が見た夢の話。皇の血を継いだ偉大な魔法使いが世界を救う話だ」
子どもたちが目を輝かせ異世界の冒険に思いを馳せる。その輪の中に混じって一人、顔を真っ赤にしたミコッテの青年がいたんだとか。
―――――――――――――――――――
天貫く水晶の塔 燐光受けし輝きは
時と世界を超える
悠久の風が運ぶ 幾千幾万幾億の唄
過去からの祈り 未来からの希望
夜闇に瞬く星を辿り 明日の朝日に手を伸ばせ
冥暗を恐れぬ 紅き星
唄う 其れは決意
絶望に砕けぬ 眩き水晶
描く 其れは道標
来たれ稀なる強者よ
時をかけ 世界の縁を繋ぎ
今一度 絶たれた夢の続きを紡がん
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