長月ユウ
2026-02-23 19:36:09
1598文字
Public 庶莉
 

【庶莉】お互いさま

何を書いたらいいかわからず、Geminiに「「ただ手を繋いで歩く」という話を書いてみては」というアドバイスを受けて書いたリハビリ文。

恋人である徐庶殿から「ええと……君が良ければ、街の散策に行かないか? 石韜殿から、点心が美味しい店を教えてもらったんだ」と言われ、二つ返事で答えたのは、ついさっきの事。

……で、ついてきたのはいいんだけど……恋人との散策って、何をすればいいの……?)

屋敷を出てから、私は隣を歩く徐庶殿に話しかけることもなく、ずっと考えてしまっていた。

懇意の仲であった異性……馬岱様と二人で外に出る時は後ろ暗い仕事をする時だったし、仕事とは関係のない話もした覚えがない。
敵をおびき寄せるために他愛のない会話をしたこともあるけど、内容は思い出せないというか、嫌な記憶だから思い出したくない。
馬岱様と普通に話していたこともあったけど……あの時のように、徐庶殿も失望させてしまったらと思うと、怖くて踏み出せない。
私は、徐庶殿に告白されたのが嬉しかったのに、彼の恋人に相応しいように振る舞うはどうしたらいいか、身体を差し出す以外、どうすれば喜ぶかを知らない。

何をしたらいいか、わからない。

……ん、莉杏?」
「はっ、はいっ!」

いつの間にか歩みが遅くなっていたらしく、数歩先を歩いていた徐庶殿が戻ってきた。

「顔色が良くないな……具合が悪いのかい?」
「あ……ち、違うの。そうじゃなくて……
徐庶殿が、不安げな顔で私を見る。
違う、こんな顔をさせたくなかったのに……これじゃ嫌われてしまうかもしれない。
「莉杏、俺に遠慮をしなくていいから、話してくれないか? 」
優しい声に促され、私は口を開く。
……私、恋人らしく振る舞うにはどうしたらいいか、わからなくて……
絞り出すように話す私を見て、徐庶殿が目を伏せた。
……そうだったのか。すまない、俺もいきなり誘っておいて、君への配慮が足りなかったな」
「そんな、徐庶殿に気を遣わせるつもりなんて、なかったのに……ごめんなさい」
「謝らないでくれ。それに、無理に俺の気持ちに応えようとしなくていい。あ、いや、これは否定してるんじゃなくて……なんというか、君らしくいてくれれば、それでいいんだ」
私に目線を合わせ、言葉を選びながら話してくれる徐庶殿の優しさが、私の胸を温かくしてくれる。
「私らしく……ありがとう、徐庶殿」
私が微笑むと、徐庶殿は軽く頷き、
「それじゃ、改めて散策に行こうか」
私に手を差し伸べる。少しためらいながら、節くれだった彼の手を取ると、優しく握ってくれた。

「実は、俺も少し緊張していたんだ」
「そうなの? 石韜殿から、「徐庶殿は水鏡先生のところで学ぶ前は今と違ってやんちゃだった」って聞いてたから、こういうのに慣れてそうな感じがしたのに」
徐庶殿が空いた片手で自分の顔を覆い、「何を吹き込んだんだ、アイツは……」と呟いた。
「あの、詳しくは聞いてないから……私が勝手に、「やんちゃだったなら、女遊びもしてたのかな」とか思っただけで……
……否定はしないけど、君が想像しているほどではないよ。けど、君はこんな俺の気持ちに応えてくれたから、どうしたら喜んでくれるのか、考えすぎてしまうんだ」

つまり……お互い様だな。
と、徐庶殿がはにかむように笑った。
その言葉が嬉しくて、私も彼の手をそっと握り返す。

「それなら……徐庶殿らしくしてくれればいいよ」

今、この時に湧き上がる温かい気持ちを恋と呼んでいいかわからないけれど、大事にしたい。
小さな幸せを噛み締めながら、私達は賑わう街の中に向かった。


end.

補足:石韜
史実・演義共に徐庶とは水鏡門下の友(史実では同郷の士でもある)。曹操軍に仕官し、官職は太守から典農校尉に至る。

私の中でしっかりした設定は今のところないですが、自称「徐庶の一番の友」。諸葛亮や、龐統とは別方向で砕けた性格。
イメージソングはKingGnuの):阿修羅:(