usagipai
2026-02-23 06:38:14
1169文字
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かみなりこわい

ラウスフィ

「ラウル様、始めましょう」

はらり、と。
絹のように柔らかな布が肩から滑り落ちる。月明かりを受けた白い肌は淡く青みを帯び、夜の静寂の中でひどく現実味を失っていた。

ゆっくりと、迷いのない足取りでラウルの元へ歩み寄る。

窓から差し込む光は二人だけを照らしている。
だがそこに、蕩けるような甘さも、浮かされるような熱もなかった。

あるのは――凍りつくような静けさ。

「俺はこんな理由で君を抱きたくないかな」

ラウルの声音は柔らかいが、はっきりと拒絶の色を含んでいる。

……? こんな理由……?」

スフィーは小さく首を傾げる。
その瞳には疑問しかない。

「貴方の身体が持ちませんから行うのです。そこに心情は必要ありません」

合理的で、正しくて、そして冷たい答えだった。

ラウルは小さく笑う。

「はは、そうだね。君ならそう言うね。でも違うんだ。俺は君に――

その瞬間。

轟音が夜を裂いた。

窓ガラスが震えるほどの雷鳴。

「ッッ!?!?」

思わず声を上げたのは、スフィーの方だった。

再び光が瞬き、部屋を白く染める。

ラウルが目を向けると、そこには――

布団にぐるぐると包まった小さな塊が、いつの間にか部屋の隅に出現していた。

「わ……今のデカかったな……。いつのまにカミナリに、スフィー?」

もぞ、と布団が揺れる。

…………すみません……その……あまり、好きではなくて……

さっきまでの無機質な口調はどこへやら、布団の中から聞こえる声は明らかに小さく震えている。

「すぐ戻りますので」

だが布団は戻らない。

むしろ、さらにぎゅっと丸くなる。

また一閃、空が光る。

びくっ。

布団ごと跳ねる。

ラウルは数秒黙ってから、くすりと笑った。

「合理的な君でも、雷はどうにもならないか」

……自然現象に対する恐怖は生存本能です」

言い訳のような声。

ラウルは立ち上がり、布団ごと抱え上げる。

「わっ……!?」

「すぐ戻らなくていいよ。今日はこれで十分だ」

再び雷鳴。

だが今度は、ラウルの腕の中だ。

布団越しに、ほんの少しだけ震えが弱まる。

……ラウル様」

「ん?」

「先程の“違う”とは」

ラウルは少しだけ間を置く。

そして、月明かりを見上げた。

「君に必要なのは理由じゃない。君に触れるなら、ちゃんと俺の気持ちで触れたいって話」

布団の中で、沈黙。

雷の音が遠ざかる。

冷たい空気はまだ部屋に残っているのに、どこかだけ、ほんの少し温度が変わった。

スフィーは布団からそっと顔を出す。

……非合理的ですね」

「そうかもね」

ラウルは笑う。

外ではまだ、かすかな雷鳴が転がっていた。

だがもう、部屋の中に冷たい静寂はなかった