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ゴワ吉
2026-02-23 06:30:32
1579文字
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兄バカ:掲載しなかったボツ話「初めてのお散歩」
本編よりもう少し小さい頃の勘ちゃんと八左ヱ門の話です。
これはまだ勘右衛門が歩き出した頃の話だ。
つかまり立ちから数歩、家の中で歩くようになった。その様子を見て公園デビューしてみようと俺は動いた。
「ほら、勘ちゃん。靴だぞ」
「くっく?」
「勘ちゃんの靴。これ履いて今日は公園に行ってみないか?」
「こーえん?ちゃんぽ!」
「そうそう、お散歩」
ノリ気になったのを逃さず、外用の服に着替えさせる。夕食の準備をしている母へ散歩と夕方ごろ帰ると伝えて玄関へ向かう。
「これ履いて公園まで歩いてみようか」
「わぁー!にに、らっこ!」
「歩かないのか?」
「らっこぉー!」
「
…
仕方ないなぁ」
靴を履いてご機嫌になったようだが歩く気分にはまだなってないようだ。勘右衛門を抱き上げて公園まで歩き出す。
「にに、わんわんわ!」
「ゴールデンレトリーバーな」
「にに、くゆま!」
「ト●タのハリアーだな」
「にに、てゅーぱー!」
「いつも行くスーパーだな。けど今日は行かないぞ」
近ごろの勘右衛門はよく指を指して覚えているものを声に出す。絵本の中で見たもの、俺が教えてあげたものを全部覚えて嬉しそうに話してくれる。
ベビーカーを押して散歩してた時なんかは聞いてるかどうかも分かんなかったのに。弟の成長が日々嬉しくて、俺は時々涙を流しそうになる。堪えるのも一苦労だ。
「よし、公園着いた。
…
けど人多いな、隅っこに行こうか」
平日とはいえ、保育園や小学校から帰って遊んでいる子供がたくさんだ。勘右衛門よりも少し大きな子たちから距離を取って勘右衛門を地面へ下ろす。
「よし、勘ちゃん。歩いてみるか」
「ん、よいちょ
…
!」
ぺたんと座った体勢から起き上がり、そのまま手を前に出してよたよたと歩き出した。
数センチ離れた俺の元へゆっくり、ゆっくりと近付いてくる
「いいぞ!その調子、ゆっくりな」
「ん、しょ
…
んしょ
……
、ににー!」
満面の笑顔のまま俺の元へ、あと一歩。最後まで手助けしないようジッと見守る。
だが後ろから突然、ボールが勘右衛門の頭にポンッと当たる。その瞬間、前に押されて俺の腕へ勘右衛門が倒れてきた。
「おっ、とと。大丈夫か?勘ちゃん」
「
…
ぷっくいちたねー」
「ごめんなさい、大丈夫ですかー?」
「あぁ、はい。大丈夫ですよ」
目を何度も瞬きさせながら勘右衛門は軽い衝撃に目を丸めている。大したことなさそうで良かったがタンコブが出来てないか改めて確認する。
「んー、特に腫れてはないな。痛くなかったか?勘ちゃん」
「ふぇ
…
うえぇええん」
「え、今か!」
どうやら突然過ぎて自覚が遅れたらしい。えんえん泣き出してしまった。
「え、あっ!勘ちゃん、にぃに飛行機で帰るか!」
「っ、ん
…
ににの?」
「そう!飛行機ぶーん!ほら、背中おいで」
飛行機という単語と普段とは違う抱っこに泣き止んでくれた。泣き腫らした目のまま小さな体が俺の背中にひっつく。
勘ちゃんの靴を持っておんぶして俺たちは公園を出た。予定よりも随分早いが仕方ない。
「っ、ん
……
、にに?」
「うん?どうした?」
「ちゃんぽ
…
またいこぉね」
「あぁ、行こうな。今度は滑り台してみるか?」
いやそれよりも砂場遊びが良いかもしれない。まだ歩くのも不安定な勘右衛門が高い所へ辿り着けるか不安だ。
ふと背中が重くなり、返事が返ってこなくなった。どうやら眠ってしまったようだ。
(確か母さんが昼寝の時間がどうの、て言ってたけど大丈夫か
…
?)
眠る時間をきっちり定めて身体に朝と夜を覚えさせる。そう言っていた母の言葉を思い出しながら眠ってしまった勘右衛門の寝息に耳を傾ける。
ほんの数歩だったけれど初めて外で歩き出した今日は勘右衛門にとって大冒険だったかもしれない。もっともっと色んなことを教えてやりたいと俺は心の底からそう思った。
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