こゆ
2026-02-22 23:56:35
1640文字
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昼の触り得ぬ距離、夜のキス

猫の日のペンシャチ2026
幼少期から大人になって、犬っぽい弟分が猫みたいにかわいい恋人に変化した話

「分かった分かった、そうじゃれるなって、ふっ、ははっ、人懐こいなァ」

ペンギンは必死に懐いてくる犬を宥めながらも、顔を緩めてくすくす笑っている。顔中ぺろぺろと舐め回されて、くすぐったいなーと言いながら立ち上がろうとはしない。

「ペンギン、もしかして犬派?」

買出し途中、店先にいた大型犬を揉みくちゃにされているペンギンの姿をウニが一歩退きながらに見守る。

「ん? どうかな、犬も猫も好きだけど」
「そんなに毛だらけで。ベポに怒られない?」
「そんなに心の狭いベポじゃないだろ。ね、キャプテン」

話を振られたローは「どうだろうな」と、なかなかにして独占欲の強い自船の航海士のことを思い浮かべた。

「そろそろ、バイバイな」

そう言って立ち上がろうとすると、犬はペンギンの太腿にちょこんと前足を乗せている。

「もう、帰るって。またなァ」
「すごいなペンギン、すっかり懐かれてる」
「昔から犬に良く好かれるんだ」

ペンギンとウニのやりとりを黙って聞いていたシャチは記憶を探って首を傾げてみる。

「昔?」

思い当たるものはなかった。

「犬派か猫派か……どっちかっていうと今は猫の方が好きかなァ」
「そ? 俺はどっちも得意じゃない」
「あー、ウニはそんな感じ」
「どんな感じだよ」

ペンギンと犬。
んんん?とシャチが咀嚼できずにいるも、ペンギンとウニの会話は続いている。
昔、といえば故郷まで遡る。北の海だ。スワロー島には野良猫が多かったが、犬はそこまで見かけない。飼い主が散歩に連れ出しているところくらいは見たかもしれないが、それをペンギンが、特別に構っていたことなどあっただろうか。

「ペンギン、犬を飼ってたことがあるのか?」

シャチの心を読んだわけではないだろうが、ウニがそんな疑問を投げかけた。

「飼ってたってわけじゃないけど……そうだなぁ、なにかにつけてとびついてくる、ふわふわの赤茶の毛並みの可愛いのがすぐ近くにいたんだ」
「ふーん、こいつみたいな大型の?」
「いや、あの頃はおれより小さかったな」

そこで無視を決め込んでいたローは、ひとつの可能性に行き当たる。

…………ストップだウニ。この話はこれ以上やめだ」

そのひとことでその話は終いとなった。
蛇が出るぞ、そう呟いた言葉は誰にも届かなかった。しかし「アイアイ」となぜかペンギンが愉しそうに立ち上がる。

しかし、シャチはやはり覚えがないなと思った。少なくともスワロー島を離れる前までの期間においては、ここにいる誰より自分がペンギンのことを知っているはずなのに。可愛がっていた犬がいたなんて、当時だったら絶対気付いていたはずだ。思い出せなくてもどかしくて足を止めてしまった。
話を切り上げてしまったペンギンが、シャチの考えに気付いているのか、振り返ってにやりと目を細める。
その目つきが気に食わなくて、ぷいっと逸らす。
先を歩いていくローとウニを追いかけようと一歩踏み出したところでペンギンに腕を掴まれた。

「ペンギン……いつ犬なんて可愛がってた?」
「いたんだよ、おれを見付けると嬉しそうにしっぽを振ってとびついてくる、どこに行くにもついてくる赤い髪の、」
「は、っ、なに、おまっ……おれの、こと!?」
「今じゃ構ってやろうとすると逃げていくし、寂しがり屋のくせに。そんで寄ってきたかと思えばすぐ爪立ててきて、」

つつつ、とシャチに顔を寄せて。
シャチにしか聞こえないように。

「さっきの話だけど。今はおれ、完全に猫派だ。……吠えられるよりは啼かれる方が好き。なあ、シャチ」

思い当たることしかなくて。シャチは真っ赤になって、「ばかじゃねーの!」と叫んだ。
なんだ、ケンカか。と、ウニは大声を出したシャチを心配し、ローはなんだか苦笑をして、そしてシャチはそんな二人の元へと「なんでもない!」と駆けていく。

















昼の触り得ぬ距離、夜のキス