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癒羽琉(ユウル)/由羽(ユウ)
2026-02-22 22:14:44
4104文字
Public
ネロ×キリエ
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FLOWER〜Bridal Esthetic〜
DMC5◇ネロキリ
結婚式まであと3ヶ月——
ブライダルエステ初日。
エステティシャンの友人にマッサージしてもらうキリエ。
ドキドキの女子トークもあり、ほんのり甘く穏やかな短編です🌸
※ネロはラストに少し登場します
サロンのドアを押し開けた瞬間、甘くてやわらかな花の香りに包まれる。
ブライダルエステ初日。
三ヶ月後におこなわれるネロとの結婚式に向けて、キリエは友人が働いているサロンへやってきた。
「キリエ、いらっしゃい!待ってたわ」
受付カウンターにはすでにキリエの友人がおり、そわそわと落ち着かない様子の彼女を、笑顔で出迎えてくれた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。私に任せて、リラックスして過ごしてね?」
友人の言葉に、キリエは肩の力が抜け、ホッと胸を撫で下ろした。
「ありがとう、今日はよろしくね。えっと、お会計は
……
」
「今日は初日だし、サービスしてあげるわ」
「え
……
そんな、ちゃんと払うわよ?」
「いいの!これは私からの、ご祝儀みたいなもんよ」
受付の書類をしまいながら、キリエの友人はさらっと言った。
「でも
……
」
気持ちは嬉しいけど、どこか申し訳なさもこみ上げ、キリエは胸の前でそっと指を重ねる。
視線を落とし戸惑ってる様子の彼女に、友人は優しく微笑んだ。
「キリエ、私の結婚式のときに、ネロとたくさんお祝いしてくれたでしょ?そのお礼もずっとしたかったの。だから、今日は特別サービス!」
そう言って、友人は明るく笑いながらカルテに視線を落とした。その手元に、見覚えのあるボールペンがあることにキリエは気づく。
それは、自分が結婚祝いに贈ったハーバリウムのボールペンだった。
(ふふっ
……
使ってくれて嬉しい
……
)
透明な筒の中で揺れる小さな花と、ペンに刻まれているお祝いのメッセージを見つめるうちに、キリエは胸の奥がじんわりと温かくなった。
「ありがとう。今日は、お言葉に甘えさせていただくね?でも、改めてちゃんとお礼させてね?」
「ううん、気にしないで。キリエが幸せになってくれたら、それでいいの。今は、素敵な花嫁になるための時間を、大事にして過ごして?」
真っ直ぐ向けられた眼差しに、キリエは静かに頷いた。
「それじゃあ、部屋に案内するわね。こちらへどうぞ」
友人に続き、キリエは店の奥へと進んでいく。
廊下を歩くたび、かすかに流れる音楽と花の香りが、彼女の緊張をそっとほどいていった。
***
案内された個室で、キリエは用意された紙ショーツに着替えたあと、ベッドにうつ伏せになった。
(あれからもう、一年
……
)
頬をタオルに埋めながら、ふと左手に視線を向ける。
ピンクゴールドの指輪が、アロマランプのやわらかな明かりに照らされ、小さく光った。
花が色とりどりに咲く季節
——
二人で出かけた日の帰りに立ち寄った教会で、バラの花束とともに送られた婚約指輪。
プロポーズの日、不器用ながらも真っ直ぐ想いを伝えてくれたネロの表情を思い出し、キリエは胸が熱くなった。
(私、本当に結婚するんだ
……
)
結婚式まで、あと三ヶ月。まだどこか現実味がない。
それでも、指輪の小さな輝きだけは確かで、二人の未来を静かに祝福してくれているようだった。
(少しでも、あなたに似合う私になれますように
……
)
目を閉じ、ウェディングドレス姿の自分と隣にいるネロを思い描く
——
そのとき、コンコンと控えめなノックの音が響いた。
「キリエ、入ってもいい?」
「うん、お願い」
扉が開き、マッサージオイルのボトルやタオルを乗せたワゴンを手に、友人が入ってくる。
「お待たせ。それじゃあ、さっそく始めていくわね」
声をかけたあと、友人はキリエの下半身にタオルをかける。続いて、髪をタオルで覆った。
「今日は、背面とデコルテの施術よ。ドレスからよく見えるところだから、念入りにマッサージしてあげるね」
キリエが頷いたあと、友人はオイルを手に取りだし、背中にそっと塗り広げていった。
「オイル
……
いい香りね」
「キリエのために、私が特別にブレンドしたアロマオイルなのよ。ローズをベースに、ラベンダー、ジャスミン、ゼラニウム
——
それから、ネロリ」
ネロリ
——
その響きに、キリエは思わず胸がくすぐられた。
「リラックス作用や、美肌に効果的な精油をブレンドしたのよ」
なめらかに滑る友人の温かい手が、キリエの背中をじんわりとほぐしていく。
その温もりと甘い香りに、キリエは全身の力がふわりとほどけていくのを感じた。
「背中が終わったら、次は脚のマッサージで、仕上げにデコルテよ」
「
……
うん」
返事をしながらも瞼が重くなり、キリエはそっと目を閉じる。
そのまま、まどろむ感覚の心地よさに身を委ねた
——
数十分後、いつの間にか両脚のマッサージまで終わり、キリエは少しずつ意識を取り戻す。
「キリエ、仰向けになって」
「ん
……
」
ゆっくり瞼を開け、まだぼんやりとしている意識の中、キリエはタオルの中でそっと体勢を変えた。
「そしたら、デコルテのマッサージをするわね。最後に、ヘッドマッサージもサービスしてあげる」
「うん
……
ありがとう」
友人の言葉に静かに返事をしたあと、キリエの目元にそっとタオルが被せられた。
ボトルをプッシュする音が小さく響いたあと、デコルテに温かなオイルが滑り始める。
「キリエ、相変わらずいい体してるよね
……
デコルテ、すごいふっくらしてる」
「え
……
そ、そうかな?」
「胸のラインも綺麗だし
……
女性らしくなったわ」
自分の体を褒められる気恥ずかしさに、キリエは思わず頬が熱くなった。
そんな彼女にお構いなく、友人はいたずらっぽく続ける。
「肌の調子もいいし
……
誰のおかげかしら?」
「え
……
?」
「
……
ネロって、どんな触り方するの?」
「!?もう
……
!何言ってるのよ
……
!」
個室の薄暗さの中、顔を真っ赤にして慌てるキリエを見て、友人はくすりと笑った。
「ごめんごめん!
……
でも、大事に触る人でしょ?絶対」
「
……
」
その言葉にキリエは何も言い返せず、小さく息を漏らした。
友人はマッサージを続けながら、そっと声を落として呟く。
「触ればわかるのよ。大事にされてる人の体って
……
」
「
……
」
言葉に詰まり、キリエはふと、ネロの手に触れられた感触を思い返す。
大きくて、力強くて、だけどあたたかくて
——
「
……
優しいわ」
ぽつりと言葉が零れたあと、昨夜の記憶が瞼の裏に映し出される。
顔が熱くなり、胸の奥で小さな鼓動が高鳴っていった。
「そういう声になるのよ、好きな人の話をすると
……
」
胸の前でぎゅっと両手を握るキリエの仕草を見て、友人は優しく微笑みながら囁いた。
***
施術後、身支度を整えたキリエは、友人が待つ受付カウンターへ向かった。
「お疲れ様。そこのテーブルにお茶用意したから、よければ飲んでね?」
「うん、ありがとう」
ソファに腰を下ろしカップを手に取ると、キリエはそっと口を付けた。
「おいしい
……
体も温まるわ」
「ローズをベースに、美容にいいハーブをブレンドしたのよ。ここのサロンの商品なんだけど、プレゼントとしてキリエにあげるね」
そう言ってキリエの友人は、クリーム色の紙袋をキリエに手渡した。
紙袋には“Happy wedding!”と書かれており、中には何種類ものハーブティーが入っていた。
「こんなに
……
ありがとう
……
」
プレゼントをそっと抱きしめる。胸と目の奥がじんわり温かくなり、キリエは思わず涙を流した。
そんな彼女に寄り添うように、友人は隣に腰を下ろす。
「喜んでもらえてよかった。
……
キリエ、幸せになってね」
キリエは指先で涙を拭ったあと、やわらかな笑みを浮かべて静かに頷いた。
「さてと
……
少し名残惜しいけど、次の予約のお客様が来るから
……
」
「そうね。そろそろ帰らないとね」
キリエはゆっくり立ち上がり、出入り口へと向かった。
「今日はありがとう。とてもリラックスできたわ」
「こちらこそ。また、次回も楽しみにしててね!」
扉の前で小さく会釈をし、友人に笑顔で手を振ったあと、キリエはサロンを後にした。
「ふぅ
……
気持ちよかったなぁ
……
」
帰り道、やわらかな日差しに照らされながら、キリエは深く息を吸い込み肩の力を抜く。
足取りは自然と軽く、胸の奥にはあたたかい余韻と、三ヶ月後の結婚式への期待が静かに満ちていた。
***
「ただいま」
リビングの扉を開けた瞬間、ソファでくつろいでいたネロが顔を上げた。
「おかえり、キリエ。どうだった?ブライダルエステ」
キリエは笑顔を浮かべながら、ネロの隣に腰を下ろした。
「少し緊張したけど、友人が施術してくれたし、とても楽しかったわ」
「そっか
……
よかったな、キリエ
……
」
低く落ち着いた声で囁いたあと、ネロは彼女の肩をそっと抱き寄せた。
「いい香りだな
……
」
キリエの胸元から、甘い花の香りがふわりと広がる。
その香りに酔いしれながら、ネロは目を細めてキリエの左手に視線を落とす。
リビングの明かりにきらりと輝く指輪を見つめ、ネロは自分の手をキリエの手にそっと重ねた。
指輪を確かめるように撫でる指先に、キリエの胸が小さく跳ねる。
二人は視線を交わすと、自然と微笑み合った。
「キリエ
……
綺麗になったな」
そう囁き、ネロはキリエの頬に手を添える。
「いつもより肌がツヤツヤしてる」
あっさりとしたその言葉に、キリエはクスクスと笑った。
「ふふっ♪ありがとう、ネロ
……
」
口元の笑みを隠せないまま、キリエはそっと目を閉じる。
瞼の裏には、結婚式当日の様子を思い描いていた。
——
少しでも、あなたに似合う私になりたい。
——
当日はあなたの隣で、最高に輝いていたい。
心の中の願いを、静かに噛みしめる。
キリエが温かな息を漏らした瞬間、ネロは唇をそっと重ねた。
(これからもずっと、あなたのそばで
……
)
結婚式当日まで
——
二人は穏やかに時を重ねていく。
輝かしい未来を思い描きながら、甘くやわらかな香りと幸福に包まれて
……
了
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