ゴワ吉
2026-02-22 15:47:51
1264文字
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兄ばか:掲載しなかった没話「ブランコ」

雷蔵と勘ちゃんが一緒にブランコに乗る話です。

「らいに、あれなーに?」
 休日のある日、僕と勘ちゃんは二人で公園へやってきていた。夏布団の洗濯とこたつを出す為の掃除を三郎たちがしている間の退屈しのぎだ。
「あれ?あぁ、ブランコだね」
「ぷやんこ?」
 お気に入りのお砂場道具に飽きたのか、立ち上がってブランコの方を見つめ始める。しかし八左ヱ門からブランコは禁止だと言われていた。
 自分一人ではまだ漕げないし大人が抱っこしたままでも危ない。なんて弟バカ越して過保護な理由で禁じられているのだ。
「勘ちゃん、ブランコしたい?お友達にかわって、って言いに行く?」
 羨望の眼差しで眺めている様子に耐えられず、勘ちゃんに尋ねるがふるふると首を振られてしまった。興味はあるけれど自分でも危ないと分かっている、けれど乗ってみたい。
 何だか小さい頃の僕のようだ。一見危なさそうな遊具に一人で乗って怪我しないか、様子を見ている母親に怒られないかと迷って結局諦めたのを思い出す。
(なるべく勘ちゃんには僕みたいな後悔はしたくないな。よしっ)
 もじもじと自分の服を握ったままの勘ちゃんを抱っこして立ち上がる。砂場道具を一緒に持ってブランコで遊ぶ子供たちの元へ近づいた。
「こんにちは。次、この子を乗せてあげたいんだけど順番に入れてもらっていい?」
「うん、いいよ!」
 勘ちゃんよりも一回り大きな子供たちに声をかけて一つ空くのを待つ。その間、勘ちゃんは不安そうに僕を見上げていた。
「大丈夫だよ。きっと楽しいからね」
 勘ちゃんにもブランコの楽しさを味わってほしい。八左ヱ門には黙って居ればいいよね。
 戸惑う勘ちゃんを宥めていると遊んでいた子がブランコから下りて「どうぞ!」と譲ってくれた。それに勘ちゃんを抱っこしたまま腰を落とす。
「よーし、しっかり捕まっててね」
「う、うん……!」
 片手で抱っこしたままもう片方でブランコの鎖を握る。正直、僕もブランコに乗るのって数年ぶりだけど多分大丈夫なはずだ。
 ゆっくり後ろに下がって、足を上げる。すると遠心力でブランコは前後に揺れ始めた。
「わ、わ……っ!」
「大丈夫?勘ちゃん、怖い?」
 少しだけ上半身を動かして止まらないようにブランコを漕ぐ。隣で遊んでいる子はブランコの柱よりも高い場所までのぼっている。
 けれど勘ちゃんはそれに怖がる事無く、むしろ興奮気味で隣を見ては前を見つめて小さく声を上げている。きっとあの頃の僕と同じ感動をしているのかな。
「不思議だよね。空が近づいてくる感じがして、まるで飛んでるみたいでしょ?」
「うん、うんっ!ぷやんこ、たのし!」
「ふふ、良かったぁ。よーし、もう少し高いとこまで漕いでみようか!」
 今度は勢いよく地面を蹴って上半身を動かす。さっきよりも激しく、高く揺れるブランコに胸元にいる勘ちゃんは楽しそうに声を上げる。
 だが熱中し過ぎて迎えに来た八左ヱ門に現場を見られてしまった。その場では何も言わなかった彼だが、勘ちゃんが昼寝している間にきつく叱られ、羨ましがられてしまった。