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やまだ
2026-02-22 15:01:17
1531文字
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羅小黑戦記
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2021.09.02 いい子な弟子と師匠の話
「ねぇ、いい子ってどんな子?」
ファーストフード店は今やすっかりシャオヘイのお気に入りになっている。
向かいあって座るボックス席でハンバーガーの包み紙に溜まったソースを丁寧に啜ったあと、シャオヘイはムゲンを見上げて急にそう訊いてきた。そのときムゲンがちょうどシャオヘイのトレイからナゲットをひとつ援うところだったものだから、無垢な疑問でまるくなっていた瞳が途端に胡乱になる。
ちょっと、と子どもが伸ばしてくる手より早くナゲットを口へ放りこんだ。
「あっ! もー、師匠!」
「一個くらいいいだろ」
「勝手に食べないでって言ってんの! ちょうだいって言えばあげるんだからさあ」
「うん」
「絶対わかってない
……
」
半目になってむくれるシャオヘイは、それでもムゲンが飲み終えたコーヒーカップの蓋へナゲットを何個か積み上げてくれた。あげる、と言ってそっぽを向いた子の前髪からはみ出る頬の丸みと赤さに微笑む。
「ありがとう」
「ん」
みるみる色を濃くしてトマトのようになった頬を眺めながらナゲットを齧る。
「こういうことじゃないのか?」
「
……
なに?」
「いい子、というのは」
先の質問をシャオヘイはもう忘れていたらしい。ムゲンを振り仰ぎ、少し驚いたような顔をする。
「
……
食べ物を師匠にあげたらいい子なの?」
「別に物じゃなくてもいいが。相手を思いやった行動ができるのはいいことだろう?」
ふうん、とシャオヘイは小さく鼻を鳴らして俯いた。
じっと考えこみながら口にはしっかりナゲットを押しこんでいる。
「いい子に興味が?」
「別に。そうじゃないけど」
「けど?」
シャオヘイはムゲンをちらっと見てから黙りこんでしまった。下を向いた子の頬がまた膨らんでいる。
「
……
し」
「し?」
「や
……
やっぱなんでもないっ」
ふわふわした白髪の頭がテーブルの下に消えて、次の瞬間ムゲンと壁の隙間にシャオヘイが小さな体をねじりこんできた。ムゲンにぴったりくっついて、シャオヘイはまだ拗ねたような不機嫌顔のままテーブルの角を睨んでいる。
「シャオヘイ?」
「
……
し」
「し?」
「し
……
師匠もぼくがいい子だとうれしいの
……
」
薄くまるい肩を見下ろすムゲンの口から、ふ、と吐息とも笑声ともつかないものが漏れた。腕を伸ばして子どもの緊張した体を抱えこむ。
「シャオヘイ」
「な、なに」
「よく食べること。よく遊ぶこと。よく眠ること。良いと思ったことは積極的におこない、間違っていると自分が思ったなら、それを絶対にやらないこと」
「
……
なに?」
「私はこれらを守る子どものことを、いい子だと思っているよ」
壁とムゲンの隙間でしばらくシャオヘイはぽかんとしていた。
それからまるい指を懸命に折り、ムゲンの言葉を反芻する。
「
……
それ、ぼく、できてる」
「うん」
「
……
できてるよね?」
「できてるよ」
手のひらの下にある肩を繰り返し叩く。ムゲンの手がぽんぽんと触れるたび、シャオヘイの背中を強張らせていたかたくなさが解けて柔らかくなった。
テーブルを睨んでいた子の唇が、今はむずむずとくすぐったそうに疼いている。その様子がムゲンを微笑ませてやまない。
「し
……
」
「うん」
「師匠」
「うん?」
ムゲンの腕の下、シャオヘイはへへっと笑って機嫌良く足をばたつかせている。
「ぼく、これからもずーっとそれやるよ。ね、そしたらずっと師匠うれしい?」
ふ、と笑ってシャオヘイの体に回す腕へ少し力を込めなおした。ムゲンの答えは決まっていて、この先も絶対に変わらない。
「そうだな。嬉しい」
素直な子どもはムゲンを見上げ、機嫌のいい猫のように目を細めて笑った。
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