雨鶴
2026-02-22 00:22:27
1395文字
Public 小話
 

猫の日

実験失敗例の話。

ある日の事である。

「伊作、居るかうわっ!」
仙蔵が『は組』の障子戸を開けた瞬間、一匹の猫が勢い良く飛び出して行った。
「仙蔵!捕まえて!」
「えっ」
慌てた伊作の声がしたので振り向くも、猫はすでに視界から消えていた。
「あ~!どうしよう
戸口で肩を落とした同室へ仙蔵は「一体どうしたのか」と声を掛けた。
「実はねかくかくしかじか」

「な、なんだってー!?『長次に猫耳と尻尾を生やす超ご都合的な薬を飲ませたら、本物の猫になっちゃった』だって!?」
「そぉなんだよ~。説明有難う仙蔵ォあ~あ。せっかく可愛い姿が見れると思ったんだけどなぁ」
いかにもガッカリとした声音で伊作は部屋へ戻っていく。仙蔵もその後に続いた。
すると、部屋の中に散らかった装束がある。
伊作、この忍装束は」
「それ、長次のだよ」
「長次の?」
仙蔵は装束の上衣を手にすると、ゴトリと縄鏢が落ちてきた。確かに長次の物のようだ。
「お茶に入れて出したんだけど、ちょっと薬の分量間違えちゃったんだ」
伊作も長次の装束を手に取って畳み始めた。
「急に長次が咳き込んだと思ったら」

──『猫になっていた』と云う。


でもね。装束はここにあるし、何処かで元に戻ったら全裸になっちゃうから早く探さないといけないんだ。取り敢えず僕は『ろ組』の前で待機しようかな」
「じゃあ私は図書室にでも行ってみるか」
「「ふふふ」」
柔和な笑みの悪魔がそれぞれの場所へ向かった頃、長次はと云うと。



いつもの如く、留三郎が用具の点検と修理をしていた時だった。
「食満せんぱ~い。これ、何処に置きます?」
「ああ、しんべヱ。それはん?」
「えっ!猫!?」
「ひゃあぁ!」
「お、お!?」
留三郎が捕まえようと手を出すも猫の動きは素早く、しんべヱや守一郎、平太の足下を猫は直角ドリフトで曲がりながら、猛スピードで用具倉庫へ突っ込んでいった。
ドンガラガッシャーン!!
「あ~
「なにかが倒れたましたね」
猫が激突したのか、棚か箱が落ちた音が中から聞こえてきた。せっかく整頓し直したばかりだと云うのに。
留三郎は渋面になって、こめかみを押さえる。
「け、食満先輩~どうしましょう
平太が転がってきたであろうアヒルさんボートの頭を持ちながら、留三郎へおずおずと尋ねてきた。
「そうだなこのままにしとく訳にはいかな……はあ!!?」
「え!?」
留三郎が猫を探しに入るか、と考えていた矢先──保管していた卒業生の装束姿で倉庫から現れた長次に、その場に居た全員が驚きに腰を抜かしそうになった。
……な、中在家先輩!?」
「「えぇぇ~、怖い怖い!」」
一年生コンビは抱き合って震える始末。
「長次!お前何処から?いや、猫は」
いきなり現れた長次に困惑しつつ留三郎は声を掛けると。
取り敢えず何も聞くな。あとで片付けを手伝いにくる」
そう言って長次は立ち去っていく。

のちに【用具委員会の不思議話】のヒトツとして後輩たちへ語り継がれる事となる。


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用具倉庫に先輩の装束が保管されているネタはアニメから。
長次が用具倉庫にあるのを知っていたのは、委員長交代の際で見つけていたからです。
素肌で着ているので、股立の所から上衣で足りない分、肌がチラチラ見えてて欲しい