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2026-02-21 22:19:25
1592文字
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刑事はなぜ走り出したのか、或いは勇気について
51話〜52話の箕浦刑事についての雑文。ちょっと、いてもたってもいられなくて書き散らしたので何言ってるかわからないけど箕浦刑事への愛だけはたくさん詰まっています。
箕浦という男は凡庸だ。
だが凡庸ゆえに特別たりえた。
乱歩がテレビの前に現れた時、なぜあんなにも箕浦は焦ったのか。なぜ走りだせたのか。なぜ彼は他の同僚と同じく探偵社が悪であり、乱歩が犯罪者だと考え続けることができなかったのか。
頁の限界に根拠を求めても良いかもしれないがそれだけでは説明がつかない。
少なくとも箕浦の中に、乱歩を信じるに足る根拠が根付いていなければ、あるいは、それをなしうる強い信念がなければ、あの時箕浦が走り出すことはなかった。
箕浦に深く根付いていたものとは、これまで乱歩がなしてきた正義であり、箕浦が目撃してきた圧倒的な能力だ。その膨大さはそれだけで充分すぎるほどの根拠たりうる。
だが、数はまだ、ただの数でしかない。恐らく箕浦はその能力によってなされた正義に相当な回数打ちのめされ、あの軽妙で辛辣な言葉の数々によって傷ついてきた。傷つきながら、一方で乱歩の才能を強く認めざるを得なかった。そうでなければ、己の敗北が無意味になるからだ。
無力で凡庸な市警のいち刑事である箕浦は、常に、圧倒的に、完全なる異能力者に打ち負かされてきた。そしてそれゆえ、乱歩の才能を強く信じ、恐らく、誰よりも必要とした。自身の届かない場所にある真実を引き摺り出す、正義の人として、箕浦は強く乱歩を信頼していたし、そうするしかなかった。
同時に、その表裏のない真っ直ぐな才能の披露に憧れたのかもしれない。それはもしかしたら眩しく、神々しいものにさえ映ったのではないか。
あの日、走り出した箕浦は、乱歩の無実を信じた。自身の見せられた、乱歩の言葉を信じた。それは物語の必然性によって縛られるものではない、彼自身の自由な意志によってそうした。それは必然ではなかったのだ。だが、乱歩はそれに賭け、そして勝った。
箕浦は必然ではなかった。だから、助けることができた。
確かに、これは探偵社設立の際、福沢が乱歩を救うことが必然でしかなかったのに比べればあまりに儚く弱い因果だ。
だが、だからこそ、私は彼の行動に、走り出した姿に胸を打たれる。彼は信じた。彼の信じる乱歩を信じた。それがたとえ必然でなくてもいいと彼は思っていた。間に合わなくても、もし間違いであっても。彼は真に自由な自身の意志として、乱歩を助けることに決めたのだ。
もしかしたら箕浦は、走り出した瞬間はまだ、乱歩の無謬性を盲信していたのかもしれない。間違うはずがない、それゆえ、とその正義の側にあることを信じたのかもしれない。
だが、囚われていた車中から救い出した時、ぽつねんと座る姿に何を見たのか。もしかしたらと思いはしなかったか。もしかしたら、この青年は本当は、絶対無謬の神などではなく、ただの、一人の、人の子だったのではないかと、疑念を抱きはしなかったか。
そうだとすればその時初めて、箕浦は自身が必然的な物語ではなくあくまで、偶然の中に放り込まれていて、自らが駆け付けなければもしかしたら、乱歩は投獄・処刑されていた可能性に気づいたかもしれない。
何度でも言うが、箕浦刑事は凡庸な男だ。
そして誰より熱く、誰より人情深い。
私はその男に賭けた乱歩もまた、飄々とした風体に似合わずひどく人情深いと思う。物語の必然ではなく、人の心の不安定な働きの、その揺らぎの偶然性に賭けた勝負は見事に勝ち、結局箕浦はまた負けたのだ。
だが、なんと清々しい負けだろう。
箕浦が乱歩に手を差し出す時、助けてやったという恩を着せることでしか彼が自らを保てないのだとしても。
二人の間に絆を見出したくなるのはそういう極限で生み出される信頼を見てとることができるからなのだ。
箕浦は凡庸な男だ。
そして乱歩を救い出した、勇気ある男だ。私はそんな彼をかっこいいと思うし、その男を信じて待った乱歩もたいへんかっこいいと思う。
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