ひよこ
2026-02-21 08:18:02
6142文字
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『共に』

・仮題 : またバッドエンドネタ思いついてあー😭ってなったから無理矢理ハピエンにした
・サンルシ固定の人が書いた
・必要最低限しか書いてないので常に急展開
・トリゼロ後のイベントストーリー時空だけど捏造満載
・「サンダルフォン」視点

 喫茶室を閉めて自室に向かう道中、後方から声を掛けられた。ビィだ。

「なぁなぁ、星晶獣も老けるのか?」
「はぁ?突然何を言い出すんだ。星晶獣は不変な存在だ。老けるなんて事ある訳ないだろう」
「だってよぅ、お前の髪。見てみろよ」

ビィが俺の背後に回ったかと思うと……。プチッという音が聞こえた。許可なくヒトの髪を抜かないで欲しい。ビィが抜いた俺の髪を見せる。

「ほら!これ、白髪だろ?」
「これは……!」

ビィの言う通り、俺の髪色が根本に向かうほど薄い色になっていた。白色とは言い切れないが、少なくとも茶色ではない。これは一体……

「お前、天司長の任務や喫茶室での作業とかで忙しそうだもんな!少し休憩した方が良いんじゃねぇか?」

空の民は苦労すると老け込む、と言った話を聞いたことがある。ビィはそれを危惧したのだろうか。気遣いは嬉しいが、星晶獣には的外れな指摘である。……と言いたい所だが、俺の髪に変化が起きていることは事実。これは一体どういう事なのだろう。俺はルシフェル様により造られた存在なのだから、製造ミスなどということが発生するはずもない。その後もビィと軽く言葉のやり取りを交わしたが事象の結論には辿り着かなかった。その為この事について考えるのは一旦保留とする事にし、再び自室に向かった。この時はこの現象が俺の将来を左右する重大なものだとは一切思っていなかったのだ。

 
 俺の白髪らしきものが発見されて半年ほど経過した頃、俺には新たな習慣ができていた。髪の染色。染色しないと俺の髪に変化が起きている事に団の者達に気付かれてしまうからだ。いつかは彼らにもこの現象について伝える必要があるが今ではない。彼らにはなるべく余計な心配はかけたくなかった。

 今日も染色を行う為に鏡の前に座る。未だに見慣れない。鏡に写っているのはいつも通りの俺の顔なのだが、髪色だけが異なっている。とても薄い。その様相はまるで……ルシフェル様のよう。天司長の力を行使する度にその変化が現れているのだ。俺が纏う気配にも僅かに変化が起きており、気配に敏感な者達には俺の身に起きている事がバレてしまった。四大天司にはこれ以上天司長の力を行使したら俺が「俺」ではなくなる可能性があると忠告を受けた。ルリアが涙を溢しながら心配してくれた。彼らの心遣いはとても有難い。だが、空の安寧を守る為に天司長の力を振ることは俺の願いでもあるため辞めるという選択肢があるはずなかった。この調子だと俺が「俺」でいられる日はあまり多くないかもしれない。仮にそうなろうとも、俺は問題がなかった。俺が叶えたかった願い。それを今後は貴方と『共に』叶える事ができるのですから。そうですよね?ルシフェル様……


* * *


 重い瞼を開け、徐々に意識がはっきりしてくる。私は眠りについていたのだろうか。ベッドに横になっていた。身体を起こし周りを見渡す。どうやらここは艇の中のようだ。ミカエルと特異点、蒼の少女と赤き竜が揃って私の方を見ていた。

「お身体の調子は如何でしょうか?ルシフェル様……
「ああ……

問題ないよ、とミカエルに答えようとしたのだが、声の違和感に気付き中断する。この声は……

「サンダルフォン?」

私が発したはずの声が、彼の声として聞こえた。そういえばサンダルフォンの微かな気配を近くに感じるのだが、彼の姿が見当たらない。すると微笑みを浮かべた蒼の少女が手鏡を渡してきた。

「ルシフェルさん、これ……見てください」
彼女の瞳は少し潤んでいるように見える。鏡を見るとそこに写っていたのは、目を見開いている私の安寧の姿だった。髪と瞳の色だけは彼本来のものと違っていたが……。暫く鏡を見つめていると、特異点から声を掛けられた。以前と異なり笑顔が少しぎこちない様に見えた。

「サンダルフォンから手紙を預かってるんです。ルシフェルさんに読んで欲しいって言ってました」

茶色の上質な封筒が手渡された。

「私達、外で準備する事があるので退室しますね。ルシフェルさんも用意が整ったら来てください」
……承知した」

準備とは何か少し気になったが、何よりも早くサンダルフォンからの手紙を見たかった。先程から嫌な予感がして落ち着かないのだ。四名が部屋から退室した事を確認すると、すぐに封筒に手を付ける。封蝋はされていなかった。急いで中の紙を広げ、手紙に目を通す。筆跡に懐かしさを覚える。手紙の前半と後半で書いたタイミングが異なっていたようだ。後半の文章は文字の形状が歪で筆圧も薄くなっている。

 前略

ルシフェル様。お帰りなさい。お身体に異常はないでしょうか?何かあったら四大天司に連絡してくださいね。本題に入ります。貴方の今のお身体についてです。もうお気付きかもしれませんが、貴方のお身体は元々俺のものでした。俺の役割が真の機能を果たすことで、貴方が復活なさったのです。俺のせいで結果的に貴方が損なわれてしまった事をずっと悔やんでいました。でも、これからは貴方と『共に』空を見守る事が出来る。とても誇らしいと思っています。だから、どうか悲しまないください。貴方はとてもお優しい方なので難しい事だとは思いますが……

 今日は貴方の復活という記念すべき日となりますね。そのような日を皆で祝いたくて、即席になりますが団長……特異点達の力を借りて、歓迎パーティーを開催させて頂く事にしました。楽しんで頂けると嬉しいです。それではルシフェル様。どうかいつまでもお元気で。

 早々

 手紙を読み終えた私は、蒼の少女から受け取った手鏡を再度見つめる。とても悲しそうな表情をする「彼」が見えた。私は彼にこの空の世界の広さを、素晴らしさを知って欲しかった。だが、もう彼は……。いや、感傷に浸っている場合ではない。彼が私の為に歓迎パーティーの準備をしてくれたのだ。四大天司や特異点達も待っている事だろう。そう思い、ベッドから降りて立ち上がる。身体の不調は一切感じないのだが、足取りがとても重かった。
 
 部屋の外に出て間も無くミカエルが迎えに来てくれた。彼女に連れられて艇内の即席のパーティ会場へ向かう。会場へ足を踏み入れた瞬間、複数のクラッカーが鳴り皆からお帰りなさいと笑顔で出迎えられた。その後、サンダルフォンがレシピを考案した料理を食した。とても美味しかった。食事の最中、四大天司や特異点達が変わる替わる声を掛けてくれる。恐らく、サンダルフォンが私に配慮してくれたのだろう。彼の気持ちに彼らが寄り添ってくれた事もとても嬉しい。……嬉しいはずなのにどうしても喪失感が拭えなかった。仕方ない事だとも思う。最も感謝を伝えたいヒトにはもう声が届かない。彼は今も私と『共に』空を見守ってくれているのだから……


 あれからもうすぐ一年。サンダルフォンは私が復活してから月毎に読めるように手紙を十二通残してくれていた。今日は新たな月初めの日。彼からの最後の手紙を読むことにした。何が書かれているのだろう、気持ちが高揚する。先月までは彼が私に残してくれた手紙の数が減る事に焦燥感があったが、今はもう違う。心構え一つでこんなにも物事に対しての見方が変化するのだ。私はここに来てまた一つ学びを得た。

 私の気持ちに変化が現れたきっかけは夢だ。睡眠をとるようになり、ある時を境に稀に夢を見るようになった。その夢にサンダルフォンが現れるのだ。夢の舞台はいつもあの中庭。そこで彼と珈琲を飲みながら話をする。彼は私の身に起きた出来事について楽しそうだと笑ってくれた。心配してくれた時も、稀に叱られてしまっま時もある。そうやって、夢での逢瀬を重ねていく内にある事に気付いた。私が見ている夢は世間一般的なものとは異なるのではないか、と。理由は単純で、私が充分に理解できなかったサンダルフォンの思いについて夢の中の彼が語ってくれるからだ。思い切って彼に聞いてみた。君は私が作り出した夢の産物ではなく、本物のサンダルフォンなのだろうか、と。そうしたら、彼はその通りだと答えてくれた。貴方と『共に』に空を見守ると手紙に書いたでしょうと、どこか誇らしげな様子だった。

 夢で得た情報から私は彼の精神はまだ私の中に残っており、眠りについた状態なのではないかと推察した。そこで四大天司や団の有識者に協力を仰ぎ、彼を再び目覚めさせる方法の検討を始めたのである。彼を目覚めさせる方法は容易ではなさそうだが、いつか必ず彼を目覚めさせる。そうして今度こそ彼と『共に』空を見守るのだ。


* * *


 重い瞼を開け、徐々に意識がはっきりしてくる。俺は眠りについていたのだろうか。ベッドに横になっていた。身体を起こし周りを見渡す。この景色は見覚えがある。かつて俺が天司の繭の中で過ごしていた景色にそっくりであった。暫く呆然としているとこちらに近づいてくるヒトが見えた。姿形がかつてのままで懐かしさを感じる。この御方は間違いなく……

「ルシフェル様!?」
「ああ、そうだよ。サンダルフォン。久しいな」

これは夢か?夢のようには感じないが……。それに俺は役割を果たしてルシフェル様に身を捧げたはずの身。どうして今、再び意識を保っているのだろう。疑問を伝えるとルシフェル様はやはり夢での逢瀬の記憶は残っていなったかと呟かれた。

「夢?これは夢なのですか?」
「いや、これは夢ではないよ。それより珈琲を入れたのだが、一緒に飲んでくれないか」
「勿論、頂きます!」

ルシフェル様とまた珈琲が飲める日が来るなんて……。こんなに幸せな事があって良いのだろうか。そうは思いつつも折角の機会なのでルシフェル様のお姿と珈琲をしっかりと堪能する事にした。


 珈琲を飲み一息ついたところで、この場所について質問する。

「ここは天司の繭の中なのでしょうか?」
「ああ。その通りだ」
「ここで俺の身体を再構築していたということでしょうか?」

厄災を起こした後、ルシフェル様のコアに取り込まれた時と同様な事が行われたのだろうか。その問いにルシフェル様は少し違うと答えられた。

「君を再び目覚めさせる為には、私の精神が君の身体から離れる必要があった。そこで私の為の身体を新たに用意し、それを「私」のコアに取り込んだ。そして、ここで私と君の精神の分離を試みたのだ」

精神の分離……。俺の身体がルシフェル様の依代となった際に、俺の精神は消滅するものかと考えていたのだがどうやら違かったようだ。ルシフェル様の説明が続く。

「精神の分離自体は早々に完了したのだが、君が中々目覚めなかった……。君の精神が消え掛かっていた事が理由だろう。処置が間に合って本当に良かった」

ルシフェル様は天司の繭に入るまでの間、不定期に俺と夢で会話していた事を教えてくださった。夢の中の俺の意識が段々と希薄になっていった事も。俺は一切覚えていなかったが……

「俺の為に手間をかけさせてしまったようで申し訳ございません。ですが、こうして貴方と再び珈琲が飲めるようになった事がとても嬉しいです」
「うん、私もだよ」

普段と違って口角が上がりっぱなしだからだろうか、少しだけ頬が痛い。二人で珈琲を飲むのは魂の終着点でルシフェル様とお会いした時以来だったから。そう言えば、あれからどれ程時間が経過したのだろう。

「ルシフェル様が復活された日から何年くらい経過したのでしょうか?」
「偶然だが今日で丁度十年だな。君が私の記念日を祝うために、今日という日に起きてくれたのかもしれないな」
「ははっ。そうかもしれません」

しかし、十年か……。天司にとっては微々たる時間に過ぎないが空の民にとっては違う。団長達は今は何をしているのだろうか……。と、考えていたのだが筒抜けだったようで、ルシフェル様が自発的に答えを述べてくださった。

「安心して欲しい。団長達はかつてと変わらず騎空艇に乗って元気に旅をしているとのことだ」

四大天司と定期的に連絡を取っているから空の状況はある程度把握しているよ、と補足を受けた。

「そうなのですね、良かった」

そうして暫く談笑を続けていると、かつて聞いた事があるようなセリフが聞こえてきた。

ーーお〜い!目を覚ませ、サンダルフォン!ルシフェル!ーー
ーー起きてくださ〜い!サンダルフォンさん!ルシフェルさん!ーー

この声は……

「サンダルフォンが目を覚ました事をミカエルに伝えていてね。すると、ありがたい事に団長達が迎えに来てくれることになったのだ。その迎えだろう」
「そうだったのですね!直ぐに彼らに会える事になるとは思っていなかったです」

彼らにはまた世話になってしまった、と二人で笑った、

「それでは行こう。サンダルフォン」
「はい!」


 繭の外に出ると、そこはカナンの地だった。嬉しそうにこちらに歩み寄るルリア、そしてビィの姿が見えた。暫く彼らと話をした後、先にグランサイファーに戻って復活記念のパーティーの準備を手伝うと走り出して行った。良かった、相変わらず元気そうだ。状況が落ち着いた為、にこやかに微笑まれるルシフェル様のお姿を見やる。事前に予告されていたがルシフェル様のお姿は以前と少しだけ異なっていた。

「私の新しい髪と瞳の色も似合っているだろう?」

御髪を触りながら少しだけ頬を赤く染めてこちらを見るルシフェル様。とても可愛らしい。そのお姿は以前のものと殆ど変わりがなかった。ただ、髪と瞳は元々の俺の身体と同じの色をしていた。俺の髪と目の色が変わってしまった事を惜しんだルシフェル様が、御自身のお身体を新しく用意する際に髪と目を俺由来の色にしたとのことらしい。とても愛されているな……、俺。

「ええ、とても。俺の髪と瞳の色は似合っていますか?」
「ああ、今の色もとても素敵だよ」
「ありがとうございます!」

俺の髪に変化が起き始めた当初は酷く戸惑ったのと茶色に染色していた事が多かったため、正直この髪色には未だ見慣れていない。しかもルシフェル様が再顕現されてから目の色も変わってしまったとか。だが、ルシフェル様が気に入ってくださっているのだ。そう思うと今の自分の姿にもすぐに馴染めそうだった。

 ちなみにルシフェル様の新しい御身体を用意する事は一筋縄ではいかなかったようで、多くの人の協力を得たのだよ、と繭の中でお話頂いた。関係者一人一人に感謝を述べたいと考えているのだが、今日はひとまず置いておこう。今日は十年前にルシフェル様が、そして今日俺が復活した記念すべき日なのだから。この喜びをただひたすら享受していたい。

「そろそろグランサイファーに戻ろう。皆が歓迎の準備をしてくれているよ」

ルシフェル様も笑みがこぼれていた。


 カナンの神殿を出るとグランサイファーが出迎えてくれた。その後ろには広大な空が広がっている。どこまでも続く青い空。

 今度こそ『共に』ーー



終わり