望月 鏡翠
2026-02-20 23:46:53
1024文字
Public 日課
 

#2010 堕落の街 雑談

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 砂漠の只中にいると、孤独の街の雪が恋しくなる。
 あの街の人は砂漠を知らないだろうし、この街の人は雪を見たことがないのだろうな。そんなことを思う。
「下の階の雪持ってきてやりたかったですね。かき氷〜とか屋台にしたら売れそう」
 きっと蛇口にも必要なはずだ。長袖を捲って辛うじて暑さに対応しようとしているが、十分な暑気対策とは言えなさそうだ。
「この暑さなら大繁盛でしょうね、かき氷店屋台。私は寒さが苦手なので、暑い方がまだ良いですが」
 あ、そうなんだ。でもそうか。熱いの苦手だったら、上裸にでもタンクトップにでもなってるもんな。
 警察の人だから、流石に上裸にはならないか。いやでも、街の住人は男性ははだけたまま働いている人もいて、文化としては抵抗のある場所ではないと思う。
「暑いの得意なんすか。良いなぁ、どっちかというと寒い方が好きだからキツいっす。雪、東京だと滅多に見ないからテンション上がりましたよね。この街の人も実際目の前にしたらそうなのかな」
 いやでも降ってるところを見たわけじゃないから、手で掴んで運べるくらいの量を見せられたくらいじゃ、なんのことかわかんないか。
 すぐに溶けていく氷の塊を見て、冷たいんだねってびっくりさせるくらいかな。だからやっぱ砂漠で氷の良さを楽しむんだったら食べてみるのが一番いいって。
 やりたかったな、かき氷屋台。
「夏は服装での調整に限界があるので苦手な人にとっては辛いですね。着替えは街で? 東京は孤独の街のように雪が積もること、ほとんどないですもんね」
 まさにその通りだ。悲しいことに、この街ではエアコンなんてものは期待できそうにない。
 一番偉いはずの主ですら、綺麗なお姉さんに仰いでもらうくらいしか解決策を持ち得ないんだから、当たり前だけど街に涼める場所なんてない。
 塔のラウンジに戻るのが、一番涼しいかもしれない。
「着替えなくてヤバって思ったんで、前の街でひとまず色々もらってきたんですよね」
 あの時はまだ部屋もなく、その上で着替えもないの衛生的にやばすぎるという危機感があった。
 毎日同じ服を着ていないか? と周りの人間に思われるのが怖かった。服さえあればシャワーだけでも借りるとか、最悪水浴びだけでもいい。
 死ぬ気でかき集め、ついでに夜中にリュックに詰めて枕にして寝ていたのだ。
 いや、あの時は必死だったね。
 その中にたまたま半袖があったから、今助かっている。