りっつぁ
2026-02-20 23:46:40
3174文字
Public ホーデュ
 

光のホに闇デュくんを口説いてほしかった話

タイトルそのまんまのホーデュです。光にホークアイに闇デュランくんを真っ正面から口説いてほしかったんですけど設定がまるで生かされていないです。短いです。
旅の途中っぽい、どこかの街っぽい。三人旅のようなそれ以上に人員がいるような。ふわっふわです。
なんか変な感じになった二人は間もなくくっついてしまうんだと思います。
光のホちゃんはより陽キャになり闇デュくんはよりスンッとしてるイメージでした。
右デュ闇にしがち問題。

 ただでも目立つくせに、大抵若い女を引っ掛けようとしているからなお分かりやすい。デュランは広い通りを端に向かってずんずん歩いた。機嫌よく喋り倒す細身の男の背で、一本に結われた長い髪が揺れている。むんずと掴んで思いきり引っ張った。
「い゛っ!? 痛てててててなんだよ何!? 誰!?」
「集合だとよ」
「いたっ、痛いってデュラン、離せよ人の尻尾引っ張ったらダメって小さい頃教わんなかった!?」
「人に尻尾はねぇよ」
 こんな馬鹿馬鹿しいやり取りで、ホークアイに捕まっていた娘達がクスクス笑いだした。何とかが転がってもおかしい年頃っていうのはこのくらいだろうか。というかなんでいつも複数人を相手にするんだろう、この男は。とりあえず長居は無用だ。尻尾、もとい髪の毛を手綱のように握り、ホークアイを引きずっていく。
「痛ってぇ! ごめん急に、またね!」
 こんなときにも愛想を振り撒くのを忘れない。目だけ振り返って見た娘達も手を振り返していたが、あれは十中八九ドン引きしている顔だ。もうギブギブ、と腕を叩かれたから、しょうがなく髪の毛を離してやった。
「あー、痛かった……ハゲたらどうしてくれんのさ」
「いいんじゃねぇか、涼しそうで」
……道連れにしてやる。カミソリでキレーに剃ってつるっつるにしてやるからな」
「んなことにやる気出してんじゃねーよ」
「この長さの髪をこれだけの状態に保ってるのってどのくらい手がかかるか、キミだって見てるんだからわかるだろ? 女の子ウケだって全然変わってくるんだぞ。もうちょっと気を遣ってほしいもんだね、これから出会う美女達をがっかりさせたくない」
 ホークアイは気取った仕草で顔にかかる髪を掻き上げる。こういうのが様になってしまう男ではあるのだ、言っていることはちゃらんぽらんだが。
 曜日によって市が立つような通りは、昼時の今人の行き来も多い。前から歩いてきた男と肩がぶつかりそうになり、一歩横にずれる。その分隣にいるホークアイとの距離が近くなった。何の気なしに横目で見ると、すぐに気づかれた。ホークアイはほんの少しだけ首を傾け、デュランの反応を待つ。なんだかむず痒いような心地になり、視線を前に戻した。
「言いたいことあんなら口で言え」
「えー、何それこっちのセリフじゃない?」
「なんだってこんなのが好かれんのか、オレには全然わかんねぇな」
「野暮天のお手本みたいなキミには難しいかもね」
「いつもわざわざ連れ立ってる奴らに声かけてるしよ。一人ずつでいいだろうか地道にやれ」
「いっぺんで女の子達に取り囲んでもらえるからお得とかそういう話じゃないんだなぁ、それもちょっとはあるけど」
「何言ってやがる、多対一は不利だろ。囲まれたら終いだぞ」
「なんでガチの一戦交える想定なのよ……一対一だと向こうも構えちゃうからね、友達が一緒だと警戒されなくていいんだよ。旅の身空で初対面からじっくり深い仲になってくような暇もないし、このくらい気軽にやってた方がかえって誠実ってもんさ」
「ほーん……
「興味無くなっちゃったんだねぇ……
 キミから話を振ったくせに、なんて恨み言すら右から左で、デュランは出店を眺めた。さすがに剣の類は見当たらないが、なかなかの活気で庶民の日常生活に必要なものは大体揃いそうだった。今度は横からぶつかられて、また一歩分ホークアイとの間が縮まった。腕が触れそうになり、体の向きを微妙に変えて当たらないよう調節する。
……デュランはさぁ、一対一が好みなんだ?」
「あ?」
「こっち、ついてきて」
「おい」
「いいからいいから。キミにもわかるように教えてあげるよ」
 肘のすぐ下辺りを掴んで引っ張られていく。人の流れをかき分けながら通りを横切り、狭い路地に入る。石壁や塀が連なり、街を作り上げる途中で意図せず空いてしまった隙間のような道だった。少し進むと、通りのざわめきがずいぶん遠くなる。
「まずは目当ての子をこういう人気のないとこまで連れてこないと話になんないよな。まぁ情熱とスケベ心と気合いでどうにかしてもらうとしてだ」
「いやどうにもなんねぇだろ」
「そうそう、ここまでのとこを知りたいって奴も結構いるんだけど、今はとりあえず二人っきりになりましたってとこからスタートね。前段階は面倒見ませーん」
「需要に合わねぇ。使えねーな」
……どんな顔してそういう意地悪なこと言うのか、よく見てやんなきゃな」
 掴まれっぱなしの腕が離されたと思ったら、今度はとん、と肩を押された。ただの促しのようなそれにまんまと従ってしまい、後ずさる。デュランが応じると見越していたように、ホークアイが口角を上げた。肩を抱き込むように腕が回ってきて、やんわりと押される。一二歩後ろにたたらを踏むと、もう石塀に背中が当たった。頭の横にホークアイの手のひらがある。一方向だけ残して逃げ場が無くなったような感じだ。
……なんのつもりだよ」
「理由はなんでもいいんだよ、ちょっとよろけたでも目にゴミが入ったでも。キミみたいな跳ねっ返りにはこういうのがいいかと思って。大事なのはここから」
 ホークアイは壁に腕をつき、ぐっと顔を寄せてきた。
「おい、近ぇよ」
「このくらいまで来ないと説得力が出てこないんだよなぁ。で、とにかく目を逸らさないこと」
……この距離はキッツイな」
「そう思わせたら負けだよ、頑張って」
「睨めっこじゃねーんだからよ……
 渋々見つめ合うが、これは尋常じゃない距離感だ。誰かに見られたら一発で誤解を受ける。もはや視界の大半を占めるコイツの顔面はこの近さでも呆れるほど整っていて、褐色の肌もやたら滑らかそうだ。琥珀色の瞳が容赦なく視線で刺し貫いてくるから、動けない。足はもちろん、目でさえ。長い指がするりと手首を滑り降り、体の横に無防備にぶら下げていた手を取られる。
……おい」
「こっちはオプションね。あんまり気が進まなそうだったら適当なとこで離しちゃってもいいかなぁ」
「全く気は進んでねぇぞ」
「やられる方も一回体験しときなって。こんな感じで手とか繋いじゃってもいいし」
「やめろ」
 指と指が絡む。指の間の柔らかい皮膚が擦れる感触に、ぞわりと腕が粟立つ。
「いけそうだったら、もうちょっと、ギリギリまで顔近づけて、……こうして見ると、目の色綺麗だね」
 よく見せて。普段よく通る声は低く押し殺されて、くすぐるように鼓膜を揺らす。互いの鼻先が触れ合いそうな、もう少しで吐息がかかるような近さ。髪と同じ色のまつ毛がゆっくり瞬いて、もう一度覗いた瞳に自分の間抜け面が映っているような気がした。ダメだ、もう無理。目を伏せると、ホークアイの手が頬に触れた。
「はいざんねーん」
「だっ」
 べちん、とえげつない音を立てて、額を指で弾かれた。ホークアイはすっとデュランの側を離れ、通りに向かって立つ。
「痛ってぇじゃねーかよ」
「痛いようにやったんだよ。この流れで黙っちゃうのはまずいだろ、こんなもんで済んでよかったと思えよ」
 言い捨てて、何事も起こらなかったように歩き出す。デュランも石塀から背中を剥がしてついていった。握られていた手が少し汗ばんでいる。
……こんなもんじゃなかったらどうなるってんだよ」
「キミね、……いやもうやめよう、変な感じになるから」
 しっしっと追い払うように手を振られて、腹も立ったが飲み込んだ。これ以上掘り返さない方がいいのは確かだ、旅に余計なものを持ち込みたくなければ。
……でも、キミはずっと一緒にいるわけだから別にいいのか?」
「なんもよくねぇ、忘れろ」
 振り返ろうとする横っ面を引っ叩いて前を向かせる。今顔を見られるのは、どうしても嫌だった。