望月 鏡翠
2026-02-20 12:56:21
982文字
Public 日課
 

#2009 愚者の街 ログイン

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 エレベーターが上昇し、暑くも寒くもない穏やかな気候と綺麗な花に出迎えられた。
 いるだけで体力を消耗するような極端な気候の街からきたので、まさに楽園のような過ごしやすさがあった。天使という絶対的に等しい空間の管理人の庇護の元ここまで上がってきたわけだけど、ようやく安全な場所に来たという実感を得られるくらい街の人は親切だった。
 今まで何に傷つけられたわけでもないのに、なぜだか安堵した。
 珍しいものは何もない場所らしいが現代都市に生きていると、何もない場所というのはむしろ新鮮で珍しかった。スマホの充電がなくなり、電波も通じなくなってデジダルデトックスが進んでいるが、ここに来てさらに自然回帰って感じだ。
 両親の実家の方は、確かに何もないは何もないけど、民家と畑くらいはある。
 空いている土地は全部そんなかんじだ。特に何もないけど、山と畑と、誰かの家と。あと川沿いのだだっ広い草の原っぱと。コンクリートで固められた川と農業の機械優先の道路がある。
 体を横たえることができる草むらとか花畑とか牧場とか、そういう絵本にでてくるのどかな場所のテンプレートみたいな田舎の空気は新鮮だった。
 街の人はよく働いているけれど、同時にすごくのんびりしている。
 花を売ってくる人はいない。花畑に咲いている花はお願いすれば分けてもらうことができる。
 部屋に、花が欲しいと思った。それは一週間前の心だ。色々あってモヤってして、全部嫌になった。でもそれはここにきたときにほかの巡礼者の人が花束を持ってていいなぁと思ったのと、また別の気持ちだ。
 その気持ちはまだ残っているのか考えた。残ってんじゃないかな。普通に綺麗じゃんと思うよ。
 花束にしてもらって手に持ってみたら、自分で思っていたよりテンションが上がった。花ってめっちゃ高いから、束にして持つことなんてないんだよね。ラッピングとかはないし、花屋に置いてあるような豪華な花じゃないけど、なんとなくテンション上がった。
 部屋に持って帰り、二人で使うはずの部屋にずいぶんでかいもの持ち込んじゃったけど、津鞠さんに許可とるの忘れてたなって今更おもった。駄目だったら、ラウンジに飾らせてもらおう。広いから隅にちょっとおいといてもいいよね。
 そうしてもうひとつ、大事なことを思い出す。
 この部屋、花瓶とかなくね?