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望月 鏡翠
2026-02-20 01:18:19
1009文字
Public
日課
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#2007 堕落の街 祝福
#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔
この街の祝福というのは、〝強さ〟らしい。パワーの話じゃなくて、もう少し概念的な話。
あんまりピンと来なかったけど、たぶん凄いことなんだと思う。いや、本当にすごいことだと思うよ。病気で若くして死んじゃった子とかは、これで幸せになれるわけじゃん。
たぶん、この巡礼をした人間の中の誰かは絶対に必要としている祝福だ。病気で体が弱くて運悪く命を落としてしまっただとか、誰かに虐げられて生きていたくてもそれができなかった人間は絶対に持っていた方がいい。
たぶん、巡礼者のなかにもたくさんいるだろう。ぴったりのものがあってよかったねと思うが、具体的な誰かの顔が思い浮かんだわけじゃない。この塔のどこかにはいるだろう誰かに向けて、よかったねーと思っただけだ。
この街に来てから、みんなが死んだ理由について、誰についても詳しくは聞いていない。聞かないようにしていた。聞いたら問いを投げた方も答えないといけなくなりそうだったから。
いずれにしろ強さというのは、なんの不幸もないのに、自分から死ぬような人間には縁がない祝福だ。
今以上のものなんて望んでいない。いや見えるものが変わったら、その時はそのときでコロっと意見を変えて楽しんでいそうだから、不足がない人生だったからこそ、何をもらってもハッピーになれるのかもしれない。
ピカピカに磨き上げられた感性を手に入れて、世界の全てが鮮やかに見えて幸せになっているとか。そうでなければ、鋭敏な味覚でフードレビュアーになれるかも。
どれでも楽しそう。だからこそ、何を望んだらいいのかわからないというのが、生前からずっと続く困っている部分なのだ。
人の気持ちがより汲み取れるようになるに至っては、ちょっと嫌かもしれないとすら思った。それって結構面倒くさいよ。自分のことで精一杯な人間にとっては、特にね。
そして、それなら主さんも大変なのかもしれない、と考えた。
そんなに全ての感覚が鋭いのなら、俺たちに臭いって言ってたのも、本当に臭いが耐えられなかっただけだったのかも。
陽の光に耐えられなくて、夜に出歩くような人だから。
外国から来た観光客の人とかで、確かに香水キツすぎて耐えられない人いるよ。当人たちは、それに慣れてるから全然気にしてないの。ああいうのと同じかな。
お邪魔しました。お風呂貸してくれてありがとう。
エレベーターはゆっくりと上昇していった。
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