こゆ
2026-02-19 20:49:29
1424文字
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愛常

ハッピー♡ペンシャチ
ちょっと未来。
ベッドの上で会話してるだけのラブペシャです!!


身体半分を起こしたペンギンへ、シャチは屈託なく、悪戯気な笑顔を向けた。
その顔に、思わず口から漏れた言葉。


「好きだよ、シャチ」
「ん……ふふ、ははっ」

息を整えた後交わされる睦言に、シャチは耐えられなくて笑いをこぼした。足元に丸まった布団を手繰り寄せながら、ムっとしてペンギンが問いかける。

……笑うなよ」
「ふ、いやァ、そうだな……ペンギン、初恋ってしたことある?」

ペンギンは眉根を寄せながら、ごつん、とシャチと額をくっつけた。

「もちろん」

十代の頃みたいな夜を過ごしたとしても、ふたりとも立派な大人で。最近は目尻に笑い皺がなかなか消えないとか、白髪が生えてきたとか、そんなことを気にするお年頃にもなった。
なんで今更。
初恋なんてかわいいものじゃないけど、定義として“初めての恋愛感情”であれば通過した。その件で盛大なケンカをしたこともある。そのことを思い出すと、目の前のにやけ顔も可愛くない。

「シャチだよ」
「でも、さ。初恋は、初恋って初めての恋だろ?」
「ん。だからシャチだって」
「恋って、好きってことだろ」
「?そう、かな」
「ペンギンは、おれのことずっと愛していただろ。ずっと。だから、初恋じゃなくね?」

ふふん、って顔。
さっきまであんなに可愛らしく喘いでいたというのに。謎かけのような、まどろっこしいやりとりに少しだけムッとして、ペンギンは小手先だけの仕返しを思いついた。

「じゃあシャチの初恋もおれじゃないってことになるな」
「そりゃあ初めての好きはペンギンに決まってるだろ」

でも、半分。
そう言われた。

「おれの初恋は半分」

シャチがもったいぶったようにゆっくり言葉にした。でも。その好きは半分だけ、だから。

ますますペンギンはわけがわからなくて。

「おれの他の、好きなやつがいたのか?」

つけていた額を離して、シャチの顔をまじまじと見下ろす。過ぎた過去の話だというのに、年甲斐もなく嫉妬を覚えた。ニヤニヤと変わらずに笑みを浮かべる恋人はいたずらが成功した子どものようだ。

「んなわけねーだろ」
「じゃあ、なんだよ。なんで半分」
「好きが半分」

好きが半分。
ああ、なるほど。
降参、と諦めてペンギンはそのままため息を吐いた。

「シャチ……残りの、半分を教えて?」

正直に負けを認めて、導かれた答え合わせを始めたペンギン。
シャチはそれを愛おしそうに見つめる。

「決まってるだろ? 愛だよ。好きは半分。だから初恋も半分だけ。おれも。いつも、ずっと、愛してるんだぜペンギン」
「そしたら、おれの初恋も半分になるじゃないか」
「その分、愛してくれるんだろ」
……もちろん、それはずっと前からな」


おれたちは、初恋を知らない。


「なあ。惚れた弱みだから、先に言うけれど」
……はっ。いや、なに、待って、ダメ!おれが」
「愛してるよ」
「くそっ、間に合わなかった。卑怯だぞペンギン、おまえ、ほんと最悪だ!」
「ふふっ、ははっ、言ったもん勝ちなんだよ」
「うう〜……ぜってーおれの方が先なのに!」


なんどと繰り返した、勝敗のつかない争い。
今日は勝てたな、と。今度はペンギンがふふんって口の端を上げた。

おれたちは、初恋を知らない。
そして。


おれたちは、どちらが先に恋をしたのか、いつから愛しているのかも知らない。









愛常あいじょう