傘道
2026-02-21 10:00:00
3348文字
Public ビリイト
 

イタズラピエロの愉快なショー

WEBオンリー、ぜろうぇぶ2(2月21日10:00〜2月23日0:00)のビリイト(🔫🔦)展示作品です。
ピエロの🔦に翻弄される🔫のお話です。

ねぇ。
お兄さん、遊びましょう♪
愉快な、愉快なショーのはじまり、はじまり。
イタズラピエロの催しを。
どうか、心ゆくまでお楽しみください。



ぽとりと床にオモチャのナイフが落ちる。
黒い手袋で覆われた手がナイフを拾った。
この動作は今日で何度目だろうか?
ライトはため息を吐いた。
これも何度目だろうか?
いつもと違う格好で慣れないことをするものじゃない。
これも今日で何度頭によぎった言葉だろうか?
そう、今のライトは郊外ファッションでもラフな格好でもなかった。
黒のストライプが印象的なアシンメトリーのゆったりとした服装。
深緑色の髪にちょこんと乗った赤いシルクハット。
どこぞのサーカスで風船でも配ってそうなピエロの格好だった。
この格好をしているのには理由がある。
近いうちにバーニス主催の仮装パーティーが開催され、カリュドーンの子のメンバーは全員参加するのだ。
みんなで仮装して、ニトロフューエルを飲みまくろう。
それがパーティーの目的である。
さらにただ仮装して飲むだけでなく、パーティーでは余興として仮装にちなんだ芸をすることになっている。
今頃、ドレスを着たシーザーがダンスの練習に励んでいる頃だろう。
ピエロに仮装したライトの出し物はジャグリングであった。
ジャグリングなんて一度もしたことがない。
しかしチャンピオンとして無様な姿を見せることができないライトは動画などを見ながら自主練習に励んでいた。
練習している今から仮装している理由はある。
普段あまりヒラヒラした服を着ないから慣れる必要があるのだ。
今から慣れておかないと本番で思うように動けない。
仕事や決闘が終わったら家に帰ってピエロの格好でジャグリングの練習をする。
なんとも変わった日課が始まったのだ。
「もう少し回転を加えるか
もう一度、ブックマークしているジャグリングの動画を見ようとスマホの電源を入れた。
スマホの画面に明かりが灯る。
するとノックノックにメッセージが届いているという通知が入っていることに気づく。
メッセージは一件。
『今、郊外に来ているんだが会わないか?』
それは先輩兼恋人のビリーからだった。
会いたい。
遠距離恋愛なのだから会える機会があれば存分に活用したい。
しかし今はピエロの格好で、外出できそうにない。
この格好で出歩けば注目の的になってしまうだろう。
それは避けたい。
いつもの服装に着替えるかとシルクハットに手を伸ばそうとした。
しかしそこでふと思いつく。
家の中ならピエロになった自分を見せてもいいのでは?と。
普段とは違う姿。
恋人にいつもと違う姿を見せたい。
ピエロの仮面を被ったチャンピオンの鼓動が高鳴る。
ライトは深呼吸してからメッセージを入力した。
『俺も会いたいです。』
『拠点に来てくれません?』
通知に気づくのが遅くなったため、返事がすぐ来るか賭けに近かった。
どくりと何度心臓が鳴っただろうか。
『いいぜ。』
1分ほどで既読がつき、返事が来る。
もしかして自分に会えないかとスマホと睨めっこしていたのではないか?
そう思うほど早い返事だった。
会いたいのは自分だけではないと言われたような気がして照れ臭くなる。
しかし照れてる時間はないのだ。
ライトは洗面所に向かい、化粧道具を取り出す。
ルーシーに教わった通り、下地をきちんとして化粧を施す。
最後に赤い鼻をつければ、道化師の化粧を纏ったチャンピオンの顔。
三日月のような笑みを浮かべれば、妖艶なピエロが鏡に映る。
これで準備完了だ。
「パイセン、気に入ってくれるかなぁ
ニヤリと笑うピエロはただの寂しがり屋ではなく、ターゲットを待つ捕食者でもあった。



ビリーは浮かれていた。
まさか郊外に来て、すぐに仕事が終わるとは思わなかった。
そして訪れた自由な時間。
これは恋人との時間に全部使うしかない。
『今、郊外に来ているんだが会わないか?』
だからスキップでもしたくなるほどご機嫌な様子で恋人に逢瀬の約束を送るのだって変ではないのだ。
返事が来ないか。
そわそわしながら何度もスマホと睨めっこしてしまう。
『俺も会いたいです。』
睨めっこを続けて数十分、返事が来た。
それだけで論理コアがどくりと鼓動する。
『拠点に来てくれません?』
鼓動がうるさいくらい鳴り響く。
チートピアで食事できるだけでも嬉しかったのに、家へのお誘いである。
もちろんライトの拠点なんて恋人になる前から何度も行ってる。
それでも慣れない、期待してしまう。
甘いひとときを恋人と過ごせることを。
『いいぜ。』
そんな期待を隠すためにサラッと返事を返すよう努めた。
クッキーと紅茶でも買ってお茶をしよう。
一緒にスターライトナイト観れたらいいな。
それから甘い夜を過ごそう。
ずっと我慢していたスキップを機械人はする。
手土産を購入してスターライトナイトのテーマソングを口遊みながら、ライトの拠点へ向かった。
インターフォンを鳴らすと、『どうぞ、入ってください。』とライトの声がした。
誘われているような声を聴いてビリーはわざとらしい咳払いする。
そして合鍵を使い玄関の扉を開けた。
「邪魔するぜ。」
玄関の鍵を閉めているとリビングの明かりに気づく。
恋人はそこに居る。
駆け出したい気持ちを抑えて、いつも通りの歩幅になるように調整しリビングに向かった。
「なぁ、クッキーとお茶買って
言葉は途中で途切れた。
リビングに居たのがピエロだからだ。
黄色のアイライトがパチパチと点滅する。
ピエロの仮装をしたライトだと認識するのにかなりの時間を要した。
……………なんでピエロ?」
機械人がなんとか絞り出した声を聞いてピエロは微笑む。
「なんででしょうね。」
クスクス笑うライトはイタズラっ子のようだ。
本当に自分の後輩だろうか?
こんな妖艶なピエロに変身できるのか?
論理コアが激しく鼓動しているビリーにピエロが近づく。
そして集音器モジュールにフゥッと息を吹きかける。
「ん!?!?」
慌てるビリーは後ずさる。
そんな機械人を追いかけて、フェイスガードに黒い手袋に覆われたピエロの手が添えられる。
「可愛いっすね♡」
ピエロが生意気な笑顔を見せる。
そしてリップ音を口で発しながらキスをする。
機械人の熱が急上昇してもピエロのイタズラはまだ終わらない。
赤い舌を見せつけるように出してから集音器モジュールをぺろりと舐めた。
「〜〜〜〜!?!?」
動揺したビリーは声帯モジュールがうまく声を出力されないほど驚き、後ずさる。
動揺するのも無理はない。
ライトがこんな積極的だったことない。
手を繋ぐのもやっとな初々しい関係を続けていていたビリーにとって刺激が強かった。
「可愛いですね、お兄さん♪」
揶揄うように広い袖で口元を隠して笑うピエロ。
「これはお兄さんと俺だけの秘密ですよ。」
ライトはシーっと指を唇に当て、ウィンクする。
揶揄われた。
その事実を認識した瞬間、ピキリとビリーの中で何かが切れる音がした。
イタズラされた機械人がわなわなと怒りで震える。
「こんのクソガキ〜!!」
ビリーがライトを押し倒す。
突然押し倒されて、ピエロは現実を認識するためまばたきをした。
しかしすぐに挑発するような笑みを浮かべる。
翡翠色の瞳に期待の色が重ねられる。
ビリーは悪い笑みをフェイスガードに貼り付けた。
そのままイタズラピエロの脇腹に手を伸ばす。
「悪いピエロにお仕置きしてやるよ!」
お仕置きとして、ビリーはこちょこちょとピエロの脇腹をくすぐった。
「ちょっと、ハハハ、くすぐったいっすよ!」
ライトは身を捩ってくすぐりから逃れようとする。
それを見て、逃さないとビリーはピエロをぎゅうっと抱きしめて拘束した。
二人は床を転げ回り、笑い声が室内に響いた。



結局、ライトがギブアップと言うまでお仕置きは継続された。
もっともイタズラされた恋人がそれで満足するはずもなく。
その後もイタズラピエロにはさらなるお仕置きが待っていた。
ピエロにとってもお兄さんにとっても愉快なショーであった。