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mishiadd
2026-02-18 01:21:34
2489文字
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いおりくん と かざぐるま
【本編軸】タスケテ…タスケテ…【宮本兄妹/宮本師弟】
いおりくんは ししょうと いもうとの さんにんかぞくです。
◆
いおりくんは かじが とくいです。
いもうとも かじが とくいです。
いおりくんは おにいちゃんなので いもうとに かじを おしえます。
おせんたくと おりょうりと おそうじを おしえます。
いもうとは いっしょうけんめい おぼえます。
いおりくんは いもうとは ちいさいのに がんばりやさんだと おもいます。
いおりくんが いもうとに えらいえらい というと いもうとも いおりくんに えらいえらい といいます。
ふたりとも ちいさくて ふたりとも えらいです。
◆
いおりくんは おりょうりが とくいです。
いおりくんは いもうとが まだ ちいさくて いおりくんと いっしょに おりょうりが できないころから ひとりで おりょうりを しています。
いおりくんは おみおつけが いちばん とくいです。
きちんと おだしをとって おとうふをきって あぶらあげもきって ねぎも いれます。
おみそも いおりくんが ちいさな おててで しこみます。
ししょうは だまって いおりくんの おりょうりを たべます。
いもうとは おいしいおいしい といって たべます。
いもうとは いおりくんの おりょうりが にっぽんいちなので いおりくんに おりょうりを ならいます。
ししょうは ごはんを たべるとき だまって たべます。
ししょうは ごはんではないときも だまって います。
ししょうは おいしいおいしい といいません。
でも ししょうは いちども いおりくんの おりょうりを のこしたことが ありません。
◆
ししょうは あんまり いおりくんと おはなし しません。
いおりくんも あんまり おはなしを しません。
ししょうは いおりくんよりも いもうとと もうすこし おはなしを します。
いおりくんは もしかしたら ししょうは おれのことが あんまり すきではないかしら とおもいます。
でも ぶしの おとこのこは あんまり おしゃべりでは いけない とも きいたので
そういうものかしら とも おもいます。
ししょうは いおりくんの けん の ししょう です。
ししょうは きびしく いおりくんに けんを おしえます。
いおりくんは けんが いちばん たいせつで いちばん すきなので けんを おしえてくれる ししょうが すきです。
だから ししょうが もし いおりくんを あんまり すきでなくても へいきです。
いおりくんは ししょうが すき だからです。
◆
いおりくんと ししょうと いもうとで おまつりに いきました。
でんでんだいこ や おめん や かざぐるま など たくさん おもちゃが うって いました。
いもうとが あめざいくが ほしいと いったので ししょうは かって あげました。
いおりくんは かざぐるまが すこし きになりました。
いもうとは あたしは あめざいくを かって もらったので にいちゃんは かざぐるまを かって もらったら といいました。
ししょうは だめだ といいました。
いもうとは どうして といいました。
ししょうは いおりは だめだ といいました。
いもうとは ないて あめざいくを はんぶんに わって いおりくんに あげました。
いおりくんは いもうとを あやしながら どうして おれは だめかしら とおもいました。
やっぱり ししょうは おれのことは あんまり すきでは ないかしら とおもいました。
いおりくんは ししょうに どうして とききました。
すると ししょうは いおりは むすこ ではなく でし だから だめだ といいました。
いおりくんは すっかり なっとくして いいました。
それなら しかたがないですね といいました。
ししょうの いうとおり いおりくんは ししょうの むすこ ではなく でし だからです。
◆
ししょうは ずっと きびしいです。
いおりくんと あんまり おはなしを しません。
いおりくんも ししょうと あんまり おはなしを しません。
いおりくんは いもうとと たくさん おはなしを します。
いおりくんと いもうとが つくった おりょうりを たべているときも いおりくんと いもうとが はなします。
ししょうは だまって たべます。
でも ししょうも いおりくんと いもうとの はなしを きいています。
それが ごはんの じかん です。
◆
いおりくんと ししょうと いもうとで また おまつりに いきました。
すると ししょうが いおりくんに かざぐるまを かって くれました。
いおりくんは「師匠、私ももう元服も近いですから、風車という齢でもありません」と言いました。
「買わせなさい」と師匠は言いました。
「今まで買ってやれなかったのだから、買わせなさい」
伊織くんは驚いてしまいました。生活必需品や剣術用品以外の何かを師匠が伊織くんに買ってくれたことは今まで一度もありませんでした。
もう風車という歳でもありません。嬉しさよりも困惑が勝り、「師匠
……
?」と伺うように尋ねました。
気付けば、師匠はすっかり老爺の年齢に差し掛かっていました。この頃は身体も満足に動かないようで、伊織くんが手を貸すこともしばしばでした。
買ってもらった風車を持て余すように手にしたまま、伊織くんは師匠を見つめていました。
師匠が伊織くんを真っすぐに見たのは、剣術の稽古以外では初めてでした。
「伊織」
皴々の手で、師匠が伊織くんの頭をぽんぽんと撫でました。
「随分意地を張って抗ってみたが、所詮武蔵の心も寄る年波には勝てぬ。
――
嗚呼」
風が吹いて、伊織くんの手の中の風車がくるくると回りました。
「もう斬れぬ。
……
もう斬れぬ」
いおりくん と かざぐるま・了
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