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ゼータ
2026-02-16 21:02:12
1791文字
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【走召巡】バラ色はなに色
巡←直風味、心理テストよりは後で恐らく二次会巡査長よりも後、無人島に行くよりは前くらいのイメージ
走召巡ワンドロ・ワンライの存在を知りつつも見てるだけ……のつもりだったけど急に書きたくなったので書かせていただくことにした
来客がないことを確かめる。外に出て軽く辺りを見渡して、助けを必要としていそうな人がいないことを確かめる。
イメージトレーニングをして、深呼吸をして、意を決する。
「先輩! っ、これ」
「うお、何だよ」
私の上擦った声に肩をビクリとさせて、こちらを振り向く。彼が許可なく私の心を読んだりしていないことの、大いなる証拠だった。
「
……
え? それって」
綺麗に包装され、銀色のサテンリボンを掛けられた、小さな浅い円柱形の箱。
「そ、その
……
なんかあげよっかなって
……
たはは」
イメトレなんか役に立たないものだ。頭の中では言えたはずの無難な台詞は全く出なくて、説明が足りない上にどこか失礼な言い方になってしまった。今、自分の頬を触ったら火傷するだろう、と思う。
「お、おう、ありがと」
彼は戸惑いを露わにしつつも、私の手から箱を受け取った。
「これ今開けていいんだよな?」
「はい、だいじょぶです」
彼の指がリボンの端を摘まんでゆっくり引っ張り、蝶結びを解く。箱を底面から見て、ラッピングの隙間に親指を差し込んで、開いていく。破ってしまってもよさそうなところを、意外にも彼はとても丁寧に開いていった。
「おっ、すげー、めちゃくちゃ綺麗じゃん」
蓋を外して中を見て、彼が感嘆の声を上げた。
収まっていたのは、箱のサイズいっぱいの青いバラのチョコレート。花びらの一枚一枚が白と水色のチョコでできていて、まだら模様の花びらのチョコで一輪のバラの花の形を作っている。お洒落でインパクトもあるし、なによりモチーフと色で、見た瞬間にこれがいいと思ったのだ。
「いいでしょ、それ」
「ああ、すっげー洒落てる。ゴリラにしちゃいいもん見っけたじゃねえの」
「一言余計ですから!」
反射的に〆そうになるが、踏みとどまった。
「早速頂くぜ、ちょうど甘いもん食いたかったんだ」
先輩は一番外側のチョコをつまみ上げ、口に放り込む。薄い花びらは噛み砕く必要もないようで、そのままゆっくりと頬を緩めて味わっていた。
「おいしいですか?」
「美味いぜ、たまにはこういうのもいいな」
「えへへ」
別に私が作ったわけでもないけれど、選択が間違っていなかったらしいことにも、彼が喜んでくれたことにも、すごく安心して、緩んだ笑みが漏れた。
「ま、今はここまでにしとくわ。残りはまた後で」
言いながら先輩が箱の蓋を閉めた、直後。
箱が淡い光を纏って宙に浮き、机の上に広げられていた包装紙がひとりでに舞い上がって箱を上から包み込んでいく。そして、くったりと曲線を描いていたリボンが命を持ったように空中を泳ぎ出し、皴一つなく包まれた箱の周囲を回ると蝶の形を作って結ばった。それはもう見慣れたはずの念動力で、その応用に過ぎないと分かっていたけれど、それでもその光景は美しく私の目を奪った。
逆再生のように包み直されたプレゼントの箱が、彼の手に着地する。
彼は箱を手にこちらを見て言った。
「あ、一本木も食っとく? もう包み直しちまったけど」
「え? あ、じゃあ
……
頂きます」
彼が手づから箱を渡してくれる。受け取って、先の彼と同じようにリボンを解き、紙を開く。蓋を開けて、中身を少し眺める。
「青いバラの花言葉は『奇跡』、知ってました?」
「あー
……
まぁ、どっかで聞いたな」
「私、ここに配属されて、初めて超能力ってものを見たんです。中でも一番印象に残ってるの、
道場
うち
を助けてもらった時のあの風景で
……
。あれから私の中では、先輩は超能力者で、超能力は奇跡で、奇跡は先輩だから、このチョコを見た時にこれしかないって思ったんです。だから
……
先輩がどう思ってようと、これは私の気持ちとしてあげたかったんです」
彼が驚いたような顔をして私を見て、何かを言おうとした。そう気付いたけれど、あえて私は私の言いたいことと言うべきこととを伝えることにした。
「先輩、いつもありがとうございます。ハッピーバレンタイン、です!」
「
……
ははっ、サンキュ、一本木」
私もバラの花びらを一枚取って口に運んだ。それはまろやかに甘くて、とびきり幸せな味がした。
(俺からすりゃあ、お前が
西交番
ここ
に来たことの方がずっと奇跡だけどな)
一本木が同類でないのをいいことに、俺は頭の中でひとりごちた。
(終)
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