ゼータ
2020-08-24 02:09:13
1857文字
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【斉照】勝負の火花

斉木と照橋さんで花火やる話。嘘だろってくらい毎度毎度ワンパターンなのにこれも3時間くらいかかっててつらい。
CP描写の程度は原作未満だと思われます。
/麻生作品ワンドロ用に書いたけど投稿するのやめた。

「ねえねえ、競争しましょうよ斉木くん」
目に挑発の光を宿して、照橋さんが僕に持ち掛ける。
あーー、めんどいことになった。

普段ならこの時間はクーラーを効かせた部屋で本でも読んでいるのだが、今日はそうも行かなかった。
夕飯後にうっかりして居眠りなどしていたところに、照橋さんがいきなり訪ねて来たのだ。何でも打上花火を一緒に見たいとかで、応対した母さんが二つ返事で許可してしまった。起きてさえいればなどと思っても時すでに遅し、こういう時の母さんに逆らえる訳もなく、抗議からして諦めざるを得なかった。全く、完璧美少女の突撃なんかにおふる僕じゃないというのに。
そして都合がいいのか悪いのか、打ち上げまではまだ早く、またおあつらえ向きなことには先日父さんが家庭用花火セットを買って来ていた。

夜の噴水公園に繰り出して、手持ち、ドラゴン、ロケットと一通りこなして一息つく……までは幸い何事もなく過ぎてくれた。だが、大体気が抜けたタイミングで目につき、しかもある程度お決まりの流れになる曲者のことを忘れていたのだ。
線香花火である。

長くなったがそういうことだ。線香花火の儚さは芸術の題材とされる他、勝負のネタにもなりがちで、かくして照橋さんは続ける。
「火が長持ちした方の勝ち。それで、負けた方が勝った方の言うことを一つ聞く。どう?」
……相手が彼女なせいで重みが凄い。昔は空助とよくこうなったものだが、ここに来て猶とは。或いは、僕が他の男と違って思い通りにならない奴だからそんな提案を……
まあただ、空助と比べれば楽勝のはず。所詮は一般人なので妙な小細工などないし、美少女の名にかけて妨害も考えられないし、そもそも内緒で温度を操ればよいだけだ。自分が負けるリスクを考えていない彼女だが、神を信用し過ぎである。
彼女とその神様に内心片頬で笑い、僕は小さく頷いた。

並んで座り、同時に火を着ける。2本の花火の末端が各々焦げて丸まり、次第に少し歪な玉の形を成す。
(スタートダッシュ行けたわね、このままよろしく神!)
よろしくじゃないだろ。花火の調整風情に使っていいもんなのか神って。
しかしその頼みが通じてでもいるのか、双方落ちる気配もなく火花を吹き始めた。勝負だろうと花火が綺麗なことに変わりはなく、火薬が描く不規則な橙の線をぼんやりと目で追ってしまう。
いや、早いとこ終わりにしよう。僕は気を集中し、彼女の火の玉を消――

「ブシャーーーーーーー」

突然の音に思わず二人して顔を向けると、噴水が大きめに水柱を吹き上げていた。豪勢なのはいいが邪魔してくれるな。って、ん?
「あ、斉木くん……
顔を戻すと、僕の方の火が消えていて、照橋さんの火の玉が丁度天寿を全うしていくところだった。

慌てて見れば、僕の方の火の玉はいつの間にか落ちて地面で真っ黒になっている。
消えそうになったらパイロキネシスで、落ちてもすぐならサイコキネシスでくっつけて、とか思っていたのが……。第三者のそんな妨害あるかよと思っても、正直相手がこれなので分からないでもない。
何より、もう負けには違いなかった。

「やった!私の勝ち!(流石ね神、褒めて遣わすわ♡)」
子供のように弾んで喜びつつも内側はド傲慢な彼女である。やってくれたな神とやら、頑なにNOTおっふを貫いて来たのが台無しだ。約束とは言えこんなことで破られようとは。
「お願いだけど、これでよろしく……
覚悟を決めたくも決められずにいたが、彼女の命令は言葉になる既のところで変化した。
なるほど、そう来るか。
……明日か直近で私と海!」

(おっふ!は無理やり言わせたって意味がない、自然に引き出させてこそよ!)
(……修学旅行のあれは夢だからノーカンで、ね)
何でも言うことを聞かせられる状況でよく気付いたと思うが、何にせよ僕としては首の皮が繋がったというものだ。勿論気は乗らないが、今この場でおふるよりずっと何とかなるのだから。
「じゃあ、予定分かったらまた教えてね♡」
表情を輝かせる彼女に頷き、少し待つよう断って一度公園を出た。

(私と海って時点でおふらないのもどうなのよ……)などという我に返った照橋さんの心の声を聞きつつ、家の200メートル圏内に入り、母宛にテレパシーを試みる。
[母さん、明日――「ドーーン……パラパラパラ」

空に輝く大輪と腹に響く轟音とでハッとする。
うん、目的忘れてたわ。

連絡は後にして、待つ彼女の元へ引き返した。

(終)