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ゼータ
2020-05-11 19:11:08
2016文字
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SS
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【斉照GW2020】ポニーテールのその奥の
単品で渋に投げるほどの長さはないのでここに上げる
たまにちょいイメチェンするけど特に気付かれない奴の為のSS。(うそです)
待ち合わせ場所の彼女は背を向けて立っていた。
流石だな、僕が来る方角を推理してきちんと的中させるとは。それだけ力を入れていると言うことだとしても。
気配を察知して、彼女がふわりと振り向いた。
纏った白のワンピースが微笑むようにはためき、コバルトブルーの髪の束が輝いて揺れる。振り向くタイミングから力加減に至るまで、憎い程に完璧に決めてみせるのだった。
「斉木くん!」
……
僕はおふらない。
今日の照橋さんは、シュシュで髪をポニーテールに結っている。
何故突然?というのは、会う少し前から分かっていた。
(『男はうなじに弱い』って説、試す価値くらいあるわよね?)
だそうだ。
そんな心の声が聞こえれば嫌でも察しが付いてしまう。千里眼でわざわざ見はしなかったが、案の定だった。僕が来る方向に背を向ける格好で待っていたのも、髪型とうなじを強く印象に残させる為だろう。
だが僕には効かない。『男はうなじに弱い』というのは「通常隠されている部分が見える」要素を含むが故であり、よって普段から髪の下どころか皮膚の下まで見えている僕にとっては今更も今更だからだ。
それに、直で見たことも実のところある。修学旅行やロンドンパンクのくだりでな。にしても、彼女自身はそれを忘れているのだろうか。
彼女の為に言っておくと、髪型の効果そのものは間違いなくある。何せさっきから、
(おっふ!) (あのポニテの子すっげ~可愛いな) (
……
!?) (白磁の肌ってやつだ
……
)
などという僕以外の男達の評価がいつもに勝る量と勢いで流れ込んでいr(おっふ
……
隣のアイツ裏山過ぎ)
……
雑音が入った。
と言うより、何も僕だって認めない訳ではない。少なくとも努力はk(何だあの子、蜃気楼か何かか?)
……
買うと言おうとしたんだが
……
ちょっとこれはうるさ過ぎる。しかも不味いことに、僕へのやっかみも比例して増えている。よろしくない事態への発展も時間の問題だな。
やれやれ、髪型の効果が及ぶ対象は僕だけじゃない(僕には効いてないので語弊があるが)なんて簡単なことにも気付かなかったのか?僕をおふらせることに必死過ぎるだろ、完璧美少女が聞いて呆れるぞ。
いっそ髪留めを切ってしまえ。僕は感付かれないよう、並んで歩く照橋さんの背後で手をゆっくり持ち上げていった。
(斉木、何も言ってもくれなかった
……
)
手が止まる。
違う、言わないだけなんだ、気付いている、思うことはある。なんて、図らずも心で言い訳をしてしまう。
だが、僕が内心で何をいくら思おうと彼女からすれば同じことだ
……
彼女はさっき落ち合ってから今に至るまで、楽しげに振る舞い、明るく喋り、普通の人間であれば露程も疑いようのない笑顔を浮かべていた。その感情自体は嘘でないにしろ、そこに不満の混ざる寂しさをも抱え続けていたなど、言わなければ誰が気付くだろう?
僕は彼女の女優精神と、恐ろしく気丈なことに、改めて感じ入った。そう、流れ込む膨大なテレパシーがみな周波数を合わせる途中のラジオの如く不明瞭になってしまうくらいに
……
。
「えっ
……
斉木くん?」
行き場を失っていた片手がいつの間にか、照橋さんの柔らかな髪の束を包み込むように触れていた。
何やってるんだ僕はっ!!?
我に返った僕は、内心照橋さん以上に滝の汗をかきつつ、いかにも事もなげな風を装って徐に手を離した
……
が、後の祭りだった。
(ちょ、ちょっと斉木
……
何よ、何も言わない癖にそんな!)
(アイツまじかよ、公然ナデナデって) (彼女自慢とか自重しろっつの
……
!!) (正気かよ
……
?)
照橋さんは既に茹で蛸だし、周りの人間の思考はぎらつく矛のような妬みに変わっている。
上がってはいけない好感度が上がり、下がってはいけない好感度が下がってしまった今、僕が取るべき選択肢は一つ。
三十六計逃げるに如かず、だ。僕は歩を速め、競歩ばりのスピードでスタスタスタスタとその場を離れる。
「さ、斉木くん!」
照橋さんが後ろから慌てて追って来る。僕が悪いだけに申し訳ないが、頑張ってついて来てもらおう。まさかテレポートを使う訳にもいかないからな。やれやれ、初っ端からこんな凄まじいやらかしとは
……
まだまだ今日は長いってのに、一日災難だらけになる予感しかしない。
『人間って馬鹿なことをするものよ、恋をするとね』
という言葉を、逃げ出す中でふと思い出した。出どころは
……
何だったっけ。
確かに名言だが、僕個人としては疑問を呈したい。だってそうだろ?恋に無縁の超能力者も、時として馬鹿なことをするのだから。さっきみたいに。
名言の正しさを裏付け得る、ある一つの可能性については、思考から徹底的に追いやると決めた。
(終)
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【名言の元ネタ:『ヘラクレス』ディズニー,1997】
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