チョコレートケーキの話 思い返せば疑問な話

Chocoboxのお返し作品。以前お菓子をあげた子の保護者さん? からお礼が届いたよ! な話。

Location.
ラベンダーベッド 〜とある雑貨店〜

「フレジエ・スノーウィさんにお届け物クポ……
くぽくぽ、クポクポ。
晴れ晴れとした昼下がり。それに似合わぬ、絵面は賑やかだが何だか疲れている……そんな響きで沢山のモーグリが群れている。厳密には、結構な数を派遣された配達士モーグリたちが巨大な荷物を取り囲み、運んできてくれたところだった。
小山のような高さの荷物を一瞥、添えられたカードのメッセージを読むと、几帳面な様が見て取れるような文章が綴られており、黒靴の差出人で締め括られていた。

受け取りのサインをし、さぞや疲れたであろうちいさな配達士たちを労い見送ってから。
「家のドアが大きくて良かったよ……
そんな言葉が、思わず口をついて出た。

○ ○ ○

「何の騒ぎです、か……?」
クポクポの大合唱を聞き付けたのか、エドアールがそろりとドアを開けて家から出てきて、庭に聳える荷物を見て、珍しく呆けたような表情を浮かべた。まあこれは、そうなる。
「どこの誰から」
次いで詰問である。荷物から漂うのは甘いチョコレートの香り。世間はヴァレンティオンのお祭り。まあこれも、こうなって然るべきか。
「ぼくのお嫁さんは相変わらずやきもち妬きだねえ」
かくかくしかじか。メッセージカードも確と見せたけれど、目を走らせ、目敏く見付けた兎の文字にどういうことと更に詰めてくる可愛い番をよしよし諌めながら、雇われてくれている物好きなレポリットたちに指示を出す。ここは雨の多いグリダニア。食べ物を屋外に置きっぱなしにするのは流石によろしくない。両開きのドアを開け放して、店先のテーブルへと運搬を頼んで。さて、ぼくはコーヒーを淹れてこようか。

○ ○ ○

存在感のあり過ぎる、特大ヴァレンティオン・チョコレートケーキ。
あれはトライヨラで万貨街の手伝いをしていた頃だったか。暑い中、脳は拒否し胃はもたれて悲鳴を上げているのに、何故か濃厚なガトーショコラを自作して食べ続けた時期があったなと遠い目になる。
ただ、それはそれ。これはこれ。ひとさまの作ってくれたものを食べるのは好きだし、折角の祭の期間なのだから、同じ阿保なら踊らにゃ損だと東方文化を教えてくれた知人たちを思い出す。
そんなこんなで無意識にワンホール分の量を皿に乗せてしまうのは、万貨街での習慣恐るべしと言ったところか。そこから切り分けたものをエドアールの皿にも乗せる。
普段は紅茶が多い我が家、しかしチョコレートケーキであるならば合わせるのはコーヒーが流儀であると何処かで聞いた。元から苦味の強めのそれを好むから、丁度良い。
まずひとくち、コーティングされたチョコレートが滑らかで、黒靴の彼は料理上手だと知る。メッセージカードからも窺えたが、几帳面なのだろう。あの黒髪の歳若い同族に渡した、なんてことない菓子に返礼を寄越すのだから、おそらく面倒見も良い。が、少々スケールが豪快か。
そんなことを考えながら黙々食べていると、むくれていたエドアールもケーキにフォークを立てた。元から甘いものが好きな子だから、きっと気に入るだろう。
……美味しいですね」
「うん、とても」
グランドカンパニーの任だとしても、見ず知らずの相手を助けてくれた好青年だ。菓子作りが旨いのならば、人見知りするけれど絆されやすいエドアールの友人になってくれると個人的だが安心出来る。番は友人が少ないから。

しかし、はて。そういえば、ぼくらは直接名乗り合ったのだったか。


さりとて、ごちそうさまでした。

(とても大きなケーキだったので、従業員、リテイナー一同も含め皆で頂きました)