望月 鏡翠
2026-02-16 10:27:45
857文字
Public 日課
 

#2004 不適切な買い物2

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 彼女の名誉のために、言っておく。
 断る瞬間はたぶん、たくさんあった。この街ではたぶん、これが男性に対するもてなしなのだ。
 出されたご飯を食べるとか、あとは手渡された花を受け取るみたいなこと。
 もてなしをきちんと受け取るのもある意味では礼儀だろうし、今更断ったら失礼かな。この人も仕事でやってるだけなのに大変だよな。
 そんな余計なことを考えてしまったら、なんか色々難しくなってしまった。そうやって考え事をしていて、何も言わずに黙ってしまった時間があったのが、悪かったのだと思う。
 結局そういう流れになっちゃったことを、なんとなくで流した。
 一度進んだことを止めるには、結構強い意思表示が必要になる。
 そのパワーがない。そこまで頑張れない。
 そうやって適当に流すと、同意したことになる。まあ、それも当たり前だと思う。子供ならともかく、こっちは大人だし。自分の責任でやれって普通は思うだろ。それも当たり前だと思う。
 植物の、花が欲しかっただけですなんて、今更言ってどうなる。
 もっと早く言えって言われるんじゃないのか。気づくのが遅かったよな。
 たぶん、最初からここはこういう空気の店だったから、察して然るべき。
 ここが歌舞伎町だったら、わかっていたと思う。あるいは御徒町のあたりなら、声をかけられた時点で、うわってなってた。
 でもここは水が綺麗な砂漠の街で、人は生活しているけどどこか他人事だった。そういうものだけ見ていたから、目の前の生臭い現実に気が付かなかった。
 まあ、セックスも嫌いじゃないし。嫌いなタイプでもなかった。こちらは一つも損をしていない。そうだよな。
 いいんじゃない?
 なんだかんだ楽しんだと思うよ。
 落ち着いてから、考えればいい。あとで、余裕ができてから。
 面倒くさいこと苦手だし。あとで。
 そうやって流したことを、考えなおしたことなんて一度もないけど、そうやって生きてきた。
 たぶん、これからも。生き返ったところで変わらない。
 全部、嫌になるよな。