望月 鏡翠
2026-02-16 09:55:54
997文字
Public 日課
 

#2003 不適切な買い物

#毎日最低800文字のSSを書く/祝福の塔

 魅力的な提案だった。
「花を買わない? 若くて綺麗な花よ」
 普段から花に興味があるというわけじゃない。たぶんどちらかというと、ない方だと思う。卒業式のときにもらったことがあったかな。
 もらったはいいけど別に花なんていらないし、家に帰ってお母さんに渡して、その後どうだったかな。それでおしまいだった。
 それでなんで今更、花になんて興味を持ったかっていえば、たぶん少し羨ましかったんだと思う。
 花を持っている人がいた。
 子供のときは、あっても邪魔だと思っていたけど、この年になってから見るとああいうちょっとした豊かさ?みたいなものを生活の中に置くことができるってすごくいいなって思った。
 今は、お花を置いておく部屋もある。あってもいいんじゃないか?
 津鞠さん、お花好きかな。別に綺麗な花が好きじゃなくても、迷惑じゃないと思ってくれれば、それでいい。ちょっとした彩り、みたいなやつよくね? っていう話に、乗ってくれたら嬉しいけど。
「おいくらですか?」
 聞いてはみたけど、相場なんて知らない。だから別にいくらでもかまわないと思ってた。
 生き返るとして、今ここで使ったお金が持ち越されるわけじゃない。部屋はあるし、飲まず食わずでもしにはしないというのだから、所持金がいくら減ったところで、困るわけじゃない。生き返らないとしても、それこそお金なんて持っていても仕方がないから、今ここで普段なら使わないもののために、パーっと使ってしまった方がいい。
 堕落の街の花というのは、なんだろう。薔薇とか、百合? チューリップとか。あと、何があったっけ、菊? なんかめちゃくちゃ仏花ぽくなるな。
 花束って何が入っているんだっけ。あのチリチリしたやつ。
 考えていたことと言えば、そんなことだった。入った建物に花がなかったことは、あんまり気にしていなかった。どうして個室に通されたとかも、深く考えていなかった。
 個室に誘った女性が、膝の上に乗ってシャツに手をかけてきたときに、ようやくどうしてだろうと思った。
 あれ、なんか思ってたのと違くね?
 花って言ってなかった?
 これ、何。
 大混乱。でも少し考えたら、納得できた。
 花ってそっちかよ。帰ろうかなと考えて、目の前の、ほぼ脱いでいる人を見て、どうしようか迷った。
 迷っている間に、引き返せない雰囲気になっていたので、諦めた。