三毛田
2026-02-15 16:57:20
1076文字
Public 1000字6
 

69 23. 思い出の透明度

69日目
透明度は、共に過ごした人による

 思い出というものは、気づけば綺麗なものへと置き換えられており。
 だけど、ところどころにじみがあるものばかりで。
 時が過ぎれば過ぎるほどそれを透明だと認識することすら、難しくなっていく。
「丹恒にとって、思い出って?」
 作業が止まったタイミングを見計らい、声をかけるとゆっくりとこちらを振り返り。
 それから、俺の隣へとやってくる。
「いいのか?」
「ああ。ちょうど休憩しようと思ったところだ」
「じゃあ、これ」
 と、パムが届けてくれていたカフェオレを渡す。
「ありがとう。思い出と言ったか」
「うん」
 俺も、スラーダを一口。
「俺にとっての想いでは、列車に乗るまでは同じようなものだ。寒く暗い場所と、刃に命を狙われて心休まらぬ日々」
……
「だからこそ、お前たちと過ごす日々はかけがえのないものばかりで。大切な思い出であり、宝物だ」
「た、たんこ~!」
「危ないだろう」
 とは言いつつも、飛びついた俺を抱きとめてくれて。
「好き。大好き! 俺が一生幸せにするからな!!」
「ふふ。少しだけ期待しておこう」
「少しだけなのかよ~」
 胸にぐりぐりと顔を押し付けつつ、不満を口にするけれど。
「俺の少しと、お前の少しが一緒だといいな」
……うん」
 これ、実は滅茶苦茶期待してるってことでいいのかな?
 そうだったら、嬉しい。
 しばらく丹恒とくっついたまま過ごす。
「そろそろ作業を再開させてくれるか」
「どうしようかな~」
「今の作業が一区切りつけば、それだけ早くお前と過ごす時間が増えるんだが」
「わかりました」
 素早く離れると、優しく俺を見つめていて。
 ああ、もう。
 そういうところだよ。そういうところが、大好きなんだ。
 丹恒の邪魔をしないようにしつつ、俺もさっさとゲームのデイリーを終わらせ。
「穹もおったのか」
「いますよ~。丹恒に渡しておけばいいんだろ?」
「頼んだ」
 途中でパムがやってきて、差し入れを俺に渡してから隣のなのの部屋へ。
「丹恒、口開けて。差し入れだって」
 と声をかければ、素直に口を開けて。
「何枚かまとめて入れてくれ」
「大丈夫なのか?」
「ああ」
 なんていうので、ビスケットをまとめて口に入れる。
 なんかすごい咀嚼音がする。けど、今は聞こえないふりをしておこうっと。
「終わった」
 咀嚼音が聴こえなくなったタイミングで、そんな声が聞こえ。
「じゃあ、俺の部屋に行こう」
「そうだな。だが、まずはパムに食事を部屋まで運んでもらうよう頼み、食器を返してからだ」
「うん。そうしよ」