フリンズさんの月霊ちゃんと留守番する話

※パイモンちゃんアカウントのキャラ月霊絵のパロディです。

「フリンズ……は、何を連れているの?」
「ふふっ、こちらですか?」

 ナシャタウン内を散歩していたところ、遠目でフリンズを見かけた。後ろから声をかけると、振り返ったフリンズの肩には――何やら可愛らしい子が乗っている。

「こちらは、コロンビーナさんのお遊びの一貫で、僕の姿を模した月霊が生まれまして」
……生まれまして?」
「えぇ。皆さんそれぞれ、自身の姿をした月霊を連れ歩く日――とのことです」

 彼はクスクスと笑いながら「コロンビーナさんには、いつも驚かされますね」とか言っている。私も、旅人さんとパイモンちゃんの三人で居る時に偶然お話ししたことがあるけれど、たしかに変わった子だった。あと、イタズラ好きな子だよね。

「皆さんってことは、他にもこんな月霊ちゃんが居るってこと?」
「えぇそうです。僕の他には、ヤフォダさんやネフェルさん。ファルカさんの姿をした月霊も居ましたね」
「そんなに? どの月霊ちゃんもめっちゃ気になる……後で会いに行ってみようかなぁ」

 そんな話をしていると、フリンズの肩に乗っていたフリンズ月霊ちゃんは、ふわふわと浮き上がり私の肩に乗ってきた。
「か……可愛い! ふわふわしてる! でもちょっとくすぐったい」
「ふふっ、他の月霊よりも質量が多いというか――毛量が多いですよね」
「そう見えるよね。そんな所もフリンズっぽい」
 可愛らしいサイズの同型のランプまで持ってるし、彼の特徴をよく掴んでいる。コロンビーナちゃんは目を閉じているのに、他人を観察するのが上手なようだ。
 
 私の肩に乗ったまま、ふわふわと動くフリンズ月霊ちゃん。動くたびに髪の毛が肌をくすぐってくるので、どうしても笑ってしまう。触ってみたい、撫でてみたい……けれど、そうして良いのか分からないので、ひとまず我慢する。
……乗ってても良いけど、大人しくしてくださいっ」
「おやおや、……全然僕の方に戻ってこなくなりましたね」
 はて、と首を傾げるフリンズ。飼い主(で合ってるのか?)で分からないなら、私が分かる訳ないので、もうこのままでも良いやと思い始めた。

……まぁ良いでしょう。丁度良いタイミングでした」
「丁度良いタイミング、とは?」
「少しの間、この月霊を預かって貰えますか?」
……ぇえ?」
「この後、ライトキーパー事務所の方に少し用事がありまして。用事が終わり次第すぐに戻る予定です。その間だけお願い出来れば、と」

 うーん……?首を傾げながら今日の自分の予定を考えたが、あとで月霊ちゃんを連れているらしい友達らに会うために秘聞の館へ行く事以外には、特に思いつかなかったし、首を傾げた時にフサっと当たった月霊ちゃんの感触が気持ち良くて驚いた。これ、ふわふわしてて……とても好き。

……いいよ。ここで待ってればいいの?」
「ありがとうございます。では、この月霊をよろしくお願いしますね」
「はーい、いってらっしゃーい」

 そう言ってフリンズに手を振ると、月霊ちゃんも一緒に手を振ってくれた。なにこれめちゃ可愛いね。


 ***


……暇だね、月霊ちゃん。君の主人はいつ戻ってくるのかなぁ」

 フリンズ月霊ちゃんに話しかけても、返事は返ってこない。しかし、私の周りをふわふわと浮きながら、また肩に乗ったり、私の頬をツンツンつついて来たりする。行動がいちいち可愛いなぁ。
 近くにベンチを見つけたので、少し移動してフリンズの帰りを待つ――が、全然帰ってこない。
 手持ち無沙汰になってきたので、肩乗りしたままのフリンズ月霊ちゃんを膝の上にひょい、と思い切って移動させてみる。抵抗することもなく膝に乗ってくれるので、顔をこちらに向けてもらって、向かい合わせの状態で見つめる。月霊ちゃんは目が開いてないけどね。

 改めてよくよく眺めていると、手に持っている小さなランプも、彼が持っているランプとほぼ一緒で精巧な作りをしている。触り心地も似ている……?指で擦ってみると、キュキュっと音が鳴って面白い。
 ランプばかり触っていたら、月霊ちゃんが短い手を私に伸ばしてきていた。その手を取って、握ってみるとフニフニしている。触り心地抜群すぎる。
 調子に乗ってきたので、少しだけ頭を撫でてあげると、目がニッコリと笑ってくれる。更に頭を撫でて、ほっぺたをツンツンして月霊ちゃんを構い倒していたら――


「貴女、は……なに、を⁈」

 珍しく肩で息をして、いや息はしてないかもしれないが、とにかく急いで走って来ましたという感じで、いつのまにかフリンズが隣に立っていた。……顔真っ赤じゃん、珍しい。
「やっと戻ってきましたか。フリンズ月霊ちゃんと待ちくたびれましたよ。ね? 月霊ちゃん」
 月霊ちゃんとはもう仲良しなので、両脇に手を差し入れて持ち上げて、ぎゅっと抱きしめる。キュ〜と小さく鳴く月霊ちゃん可愛すぎる。

「それ……やめてくれませんか?」
「え、なにを?」
「その……月霊を抱きしめるの、を……
……なんで?」
「何でもです」

 そうは言われても、私はもう月霊ちゃんを愛でるのが楽しくて仕方ないのですが。フリンズと会話しながらも月霊ちゃんの頭を撫でていると、目の前のフリンズが、小さくクッと声を漏らす。……ん?
「もう、勘弁してください……
――つまり?」
「僕もいま、頭を撫でられている……ので、くすぐったいです」
 ――――はぃ?

 
「まさか、そんなことになってるとはねぇ。――ひとまず、このベンチに座ってくれる?」
「この場を離れたあとも、貴女の声が微かに聞こえる感覚があり、気になっていましたが、ライトキーパー事務所内で頭撫でられた感覚が分かってからは、もう……
「急いで走って来たって訳ですか」
「はい。……ところで、貴女は何してるんですか?」
「今度はフリンズの頭を直接撫でてます」
「はぁ……まぁ、これなら良いです」

 ……これなら良いんだ? なんだかよく分からないが、月霊ちゃんもニコニコしていて楽しそう。
 月霊ちゃんも本体も、どちらも相変わらず可愛いね。



『つまり貴方の、可愛らしい分身だったってことね?』