葵月
2026-02-15 02:00:34
1274文字
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ワンライ:2026.01.04 謹賀新年、ナンパ【総統と探偵】

#王最版深夜の一本勝負 のお題をお借りしました。

キミの隣で、今年もキミと一緒に居られるようにお願いしたくて、僕の方から三が日終わったら一緒に初詣に行こうと誘った。
大晦日と元旦は忙しいだろうから、これでも配慮したつもりだったんだけど、今朝のニュース番組が配慮になっていなかったことを教えてくれた。

腕時計は13時を指している。
連日連夜遅くまで活動していたみたいだし、今日は難しいのかな。
けれど、スマホを確認してみても、新着メッセージは届いていない。僕の方は時間があるし、待てるだけ待っていようとそのままネットニュースを開いた。

5分ほど経った頃、視界の端に少し透けたグレーのタイツを身につけた青緑のピンヒールが映る。
その靴だと、石畳で階段が多いこのお寺は歩きづらそうだな、と思った。
あとどれくらい待つか分からない僕がこのまま居座るより、この人のように使いたい人が使えた方がいいだろうと立ち上がった、その時。


「お兄さん、おひとりですか?」

鈴の鳴るような愛らしい声で話しかけられた。
周りに人はいないし、きっと僕に話しかけているんだろう。少し目線を下げると、小柄な人がそこに立っていた。

首元まで隠れたセーター。
セットアップのジャケットとスカート。
襟足が長い外ハネウルフ。
白い肌によく映える赤色の大きな瞳。


……試されているんだろうか。


「うん、人を待ってたんだ」

「お兄さんを待たせる悪い人と初詣なんて、新年早々縁起が悪いよ。私と行こうよ」

「──いいよ」


彼女の歩くスピードに合わせ、強請られるまま三が日よりは少し減った屋台を回る。
お腹も膨れただろうし、もう少しで参拝の列に入る。答え合わせをするのは今しかないだろう。


……王馬くん、着替えに帰る時間もなかったの?」

「私“王馬くん”じゃないよ」

「僕が何年王馬くんのこと見続けてきたと思ってるの、そのくらいの女装ならすぐ分かるよ」

「それはそれで気持ち悪いよ、最原ちゃん」

いつもと違う姿で、いつもと同じリアクションをする。姿だけを変えても、チラリと覗く仕草がキミだって教えてくれる。

「それで。不本意とはいえ最原ちゃん好みの女の子で現れた恋人に、何か言うことないの?」

……それ、歩きづらくない?あと寒そう」

「これだから童貞は……

うわああああん、と大きな声で嘘泣きを始めた王馬くんの口を手で塞ぐ。

その見た目と変えた声でいつもの調子で嘘泣きするのはやめて欲しい。変な目で見られるだろ。
そう思って睨みつけると、手の隙間からにやにやした顔を覗かせるからわざとだったんだろう。

「お参りしたらすぐ帰るよ」

「えー、折角だからうどん食べて帰ろうよ」

……おせちも、お雑煮も、そばも、うどんも。家にあるから」

「へぇ」

先程より笑みを深めてこちらを見つめてくる。
あぁ、もう。どうせバレてるんだ。また寂しがってたこと。

「それじゃ、ふたりで年末年始やり直そっか!」


──どうか神様。今年はこの意地の悪い恋人を、少しでも驚かすことができますように。