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葵月
2026-02-15 01:59:32
1104文字
Public
ワンライ:2026.01.04 謹賀新年、ナンパ
#王最版深夜の一本勝負 のお題をお借りしました。
「疲れてるだろうから、ここで待ってて」という恋人の優しさに頷いたのが間違いだったと気付いたのは、ヘナヘナっと萎れたアンテナを見つけた時だった。
黒髪ロングに白の上品なコートを着た子。
マフラーに顔を埋めた茶髪ボブの眼鏡っ子。
女の子たちが見つめる先には──
自販機で買ったお茶を手に、しどろもどろしている最原ちゃん。
あの最原ちゃんが上手くかわせるわけもなく、女の子たちは一歩、また一歩と確実に仕留めにかかっている。必死な3人はオレが近づいていることにも気付きやしない。
「お兄さんが待たせている人のところに、私たちもついて行きますから〜。一緒に謝ってそのあと4人で初詣行きましょうよ、ねっ?」
「前から2人で行こうって約束してたから、ごめんね
……
」
「えー!?むしろ2対2になってちょうどいいじゃないですかぁ」
何がちょうどいいだよ、バーカ。
最原ちゃんも最原ちゃんで、こういう連中は丁寧に相手するだけ無駄だってのに。
「この子たちと行かないならさ。お兄さん、オレと一緒に初詣行ってくんない?」
「
……
王馬くん」
外気に触れてとっくに冷たくなったお茶を最原ちゃんから取り上げると、女の子たちに押し付ける。
この寒い中、こんなの飲むなんて
……
。オレのか弱いお腹は耐えきれないよ
……
。
──まぁ、害虫駆除には“ちょうどいい”だろうけどね!
そのまま最原ちゃんの右手の手袋を外すと、指の付け根で輝くものが見える。
引き寄せられるように。まるでそれが当たり前だとでもいうように。自分の右手でその手を取ると、あえて一拍置いてから、今年一番の笑顔で微笑んだ。
「
……
そういうことだから、ほか当たってね?」
◇◆◇◆◇
「王馬くん、いつから見てたの」
「ついさっき」
「嘘だよね?」
「ホントだよ!自販機の長蛇の列からやっと抜け出せて一息ついた瞬間、大人しそうな子に話しかけられて。困り事かなって思って真剣に話を聞いてたら、途中でナンパされてることに気付いて。ここからどうやってあしらえばいいのかわかんなくて、困り顔で立ち尽くしてた最原ちゃんなんて見てないよ!」
「
……
それ全部見てたって言うんだよ。助けてくれて、ありがとう」
「最原ちゃん、お詫び絵馬買って」
「いいけど、何書くの?」
「害虫駆除」
「それ、神様にお願いしてもいいのかな
……
」
「だいじょーぶ!今年はオレの年だからね!」
絵馬掛け所に行く時、遠目に先程の女の子たちが慌てて走り去って行く姿が見え、心の奥底でほくそ笑んだ。
──絵馬のお願い事は、害虫駆除じゃなくても良さそうだ。
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