human_hamster
2026-02-14 20:08:06
3268文字
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2008311

おやゆびひめのバレンタイン

幼女🌸の親バカ🐋夢。ほのぼの、ちょっとギャグっぽいです
※🌸が🐋のことを「パパ」と呼びます

アリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリスアリス
今日はバレンタイン。一般的に、女性から意中の男性にチョコレートを贈り、愛を伝える日である。近年では贈り方も多様になって、女性同士でチョコレートを贈りあう「友チョコ」や、普段お世話になっている男性に宛てる「義理チョコ」、とコミュニティによっていろいろな意味のチョコレートが飛び交う日だ。
ここ白ひげ海賊団においては、女性のクルーは少数である。女性の割合の大半を船長付きのナースが占めているが、男女比からして、すべての男性陣が女性からチョコレートを戴くことは難しい。
男性としては、女性からのチョコレートを獲得するのは、どのような意味であろうとも嬉しいものらしい。お返しを奮発するから、と、チョコレートをねだる男も少なくはなかった。
勿論、お返しなど度外視とし、意中の相手や、日ごろ世話になっている男性クルーにチョコレートを渡す女性クルーもいる。いるが、大抵のナースたちは強かであった。チョコ一つで、ホワイトデーの「お返し」を貰えるのであれば、配る勢いでチョコなどくれてやろうという考えの者が多数であった。
……その駆け引きめいたやりとりから、解放されているのはこの「白ひげ」……白ひげ海賊団船長のエドワード・ニューゲートであった。彼に関しては、船医のマルコより「血圧が上がるから、チョコなどの菓子の贈り物はNG」とお達しが出ている。

「私、船長にチョコレートもらって欲しかったわ」

白ひげにそう語りかけているのは船長付きナースのうちの一人である。色っぽい流し目に、白ひげはやや相好を崩す。

「グララララ、おれァ歓迎だぜ」
「オヤジ。ダメだよい」

マルコがカルテを書付しながらぴしゃりとそう言ってのける。

「それに、オヤジからお返しなんて見込めねぇぞ」
「まぁやだ、私たちがお返し目当てみたいな言い方。船長にはお世話になっているもの。そんなのいらないわ」

ナースたちが口々に賛同する。

「どの口が言ってんだよい、とにかくオヤジあてのバレンタインは受付ナシ、以上だよい」

仕事を終えたナースたちは、チョコレートを男どもに配るため、散り散りに船内へと去って行った。

「おめェはいくつ貰ったんだ、マルコ」
「ん? 数えてねぇけど、隊長格は貰う個数が多いからお返しも大変だよい……
「モテていいことじゃねぇか。おれァ甘いもんは特別好きっていうわけでもねぇがな、女から貰えるとなりゃあ話は別だ。グララララ」
「パパ~!」

甲板の向こうから元気な声が上がり、白ひげとアリスはそちらを向いた。紙袋を手に駆け寄ってくる毬玉のようなシルエットは、白ひげのかわいい愛娘、アリスである。

「パパ♪ハッピーバレンタイン!これ、チョコだよ!」

差し出された紙袋はまっピンクで、矢に貫かれたハートの絵とキューピッドが描かれていた。船の末っ子は、初めて父親に贈り物をする嬉しさに、頬を上気させている。

「おうアリス、おれにくれるのか。いい子だ」

白ひげはアリスを抱き上げると、アリスの目線が自分と合うようにマストのポールに取付けてある物見用の広い足場に座らせてやった。

「うん!サッチが手伝ってくれたの。アリス、かわいいの作ったんだよ」
「グラララララ……。そりゃ食うのが楽しみだ……

アリスは白ひげの指を伝って、白ひげの頬にかわいいキスをすると、サッチに渡せたって言ってくる!と走り去っていった。

「なぁマルコ……これは食ってもいいだろう」

白ひげが小さなピンク色の袋を指にかけたままそう呟く。アリスは、白ひげ海賊団の末娘である。志願してこの船にいるわけではないが、白ひげがひょんな縁から拾ってきた女の子で、白ひげのことをオヤジと呼ぶことをいやがり、パパと呼んで懐いていた。まだ分別のついていない歳の、かわいい娘が用意してくれたチョコレート。白ひげとて、むざむざと断るわけにはいかなかった。

「そういえばアリスには教えてなかったよい」
「まァ、あいつの用意してくれたモンだ。ちいせぇだろうよ。気を配ってくれてるおまえにゃ悪いが食うぜ」
「あぁ、一個くらい、大丈夫だよい。……アリス、おれにはくれねぇんだな……
「父親特権だ。グララララ……

しかし、白ひげが袋から取り出したそれは、チョコレートと言うにはあまりにも大きすぎた。大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに砂糖の塊だった。

「で、でけぇ……
「おれの掌ほどもありやがる……

ハート型に固められたチョコレートは、オーロラ色に反射するつやつやとした包装紙に包まれていた。白ひげの掌の上にちょうどおさまるほどの大きさだが、白ひげの掌は、アリスが寝ころべるほどに大きい。自分の身体ほどもあるチョコレートをアリスがどのように用意したのか、白ひげとマルコはしばし言葉を失った。

「どうやって袋に入ってたんだ、これ……
「おぉ見ろマルコ、『パパだいすき』だとよ……グララララ……。バレンタインってのも、悪かねぇな……

包みを剥がした白ひげは、チョコレートの上にチョコペンで描かれたメッセージに顔をほころばせた。ハート形の巨大なチョコレートの塊は、色とりどりにデコられている。アリスの気が済むまでカラフルに色付けされたチョコレートは、表面も側面もお祭り騒ぎの量のトッピングが乗っていた。

「カラースプレー、アラザン、チョコチップ……とんでもねぇカロリーだよい……オヤジ、一個丸々はよくねぇよい」
「なに言ってやがる、アリスがおれだけにくれたんだ」
「だ、駄目だよい! 酒よりもよくねぇ。娘バカもいいけどな、見ろよいこの分厚さ。海王類くらいあるよい」
「おめぇは大袈裟なんだ、いちいちな……

白ひげは大きく口を開けると、チョコを放り込んだ。逞しい顎にじゃりじゃりとトッピングが潰され、咀嚼される音が響く。

「あっ、オヤジ、一口で」
「パパー!サッチがよかったなって言ってたー!チョコ、一緒に食べ……

向こうからアリスが駆けてくる。中身のないチョコレートの包装紙と、白ひげの口元についたチョコレートを交互に見た。

「パパ、もしかしてもう食べちゃったの?! みんなで食べようと思ってたのに!」

アリスが目を丸くしてそう叫ぶと、白ひげはバツの悪そうな顔になった。

「や、アリス……これはだな……

チョコレートを独り占めしたことを詰られ、動揺しているらしい。しどろもどろになる白ひげに、アリスは肩に乗せて、と身振りでねだる。

「もー、パパ食いしん坊なんだから。アリスのチョコ、おいしかった?」
「そりゃあ、うまかったさ……グララララ……。しかしアリス、おれだけにくれたんじゃなかったのか?」

白ひげに持ち上げてもらったアリスはワンピースの腰の部分にくくりつけたエプロンで、白ひげの口元についたチョコレートを拭った。トレードマークの白い髭に付着したカラースプレーやアラザンを小さな指でつまみ、自分の口に入れる。小鳥が餌をついばむようないじらしいかわいらしさに、白ひげはふっと笑みをこぼす。

「だって、あんな大きいの、一人で食べられないと思ったんだもん」
「『パパだいすき』って書いてただろうが」
「それは、パパのことが大好きだから!」

白ひげの親指にぎゅっと抱き着くアリスを、白ひげは落とさないように両手で包んだ。

「来年はもっと大きいのを頼むぜ。もっとも、おめぇのチョコは他の男には食わせてやらねぇがな……グララララ……

サッチが焼きたてのチョコスコーンを籠に乗せてやってきた。甲板に漂う幸せな香りに呼び寄せられるように、船員たちが集まってくる。アリスはサッチに持ってきてもらったホットミルク入りのマグカップで白ひげと乾杯すると、焼きたてのスコーンをほおばった。

おわり