ぽふむん
2026-02-14 22:10:00
1034文字
Public ワンドロ
 

甘い毒

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

「溶ける」「隠し味」
この話こそ鬼と人で……とも思うのですが、鬼は蜂蜜どころかパンケーキも食べられないので氷柱if

しのぶちゃん、映画の効果でスズメバチのイメージもつきましたよね。
スズメバチは復讐の鬼と化したしのぶちゃんであり、捕食者である鬼としての童磨

蜜蜂は蝶屋敷の看護兵であるしのぶちゃんであり、極楽教で(方法はともあれ)信者を救済していた童磨であり

つまり童しの童です


少し焦げたが、ふっくらふんわりと焼きあがったパンケーキからホカホカとあたたかい湯気が立ち上る。
そこにバターを乗せるとじゅわぁっ……蕩けていく。
さらに蜂蜜をとろぉり。

飴色の液体が染み渡っていく。

紅茶も良いが、珈琲にしよう。

焦げさえなければ、実によくできたと思う。
実にハイカラだ。

目の前に蜂蜜の入った瓶さえなければ。
このパンケーキにかけた蜂蜜だ。
パンケーキを焼くから欲しければ来なさいと言ったら、氷柱がしのぶのために持ってきてくれた手土産だ。
バターと蜂蜜は、この国ではまだ高級で珍しい食品ばかり。
だから、非常にありがたい。
その労力は認める……

(なんでスズメバチを漬け込んだ蜂蜜を)
ハブを漬け込んだ酒
ムカデを漬け込んだ酒というものがある。
全て薬効成分が強いと聞く。

おそらくこの蜂蜜もそうなのだろう。
「スズメバチの女王を捉え、蜂蜜につける。溺れたところで毒針を抜く」

ご丁寧に氷柱は、この蜂蜜の製法を説明してくれた。
「一刺しで人を殺すほどの毒性がある。そのくせ蜂蜜と溶け合うことで、徐々にその毒は消え隠し味となる。そして、その蜂蜜はとんでもない健康効果を発揮する」
疲労回復、血行促進、体力増強……という効果があるそうだ。

「しのぶちゃんにはうってつけだと思ってね」
そういって笑う氷柱に『 余計なお世話 』と返した。

そんな事は気にしていないのか、氷柱は続けた。
「この蜂蜜の製造元。みつ蜂は人は襲わないし毒針もない。
なのに、せっせと集めた蜂蜜を人間様にこうして奪われるわ、スズメバチには襲われ喰らわれる。みつ蜂って哀れだよねぇ」
「何が言いたいのです?」
西洋の真似事で業深い飲食物を……と批難でもしたいのだろうか。
こんな嫌味を言われるのであれば、わざわざレシピを仕入れ、来る時間に合わせて焼いてやるのではなかった。
そう思った。
氷柱はパクリとパンケーキを一口頬張った。
「でもみつ蜂って凄いよね。
その蜂蜜は、こうしてスズメバチの毒を無力化するだけでなく別の栄養を作り出す。まるで俺たちみたい」

どこが?
と、問返そうとして気づいた。
しのぶを見つめる氷柱の瞳が溶けている。

しのぶはテーブル中央のスズメバチの女王蜂漬け蜂蜜の瓶を見た。



スズメバチがみつばちを襲い喰らう。

そこに居ただけ。無害だったはずの蜜蜂がスズメバチを溶かし無毒化する。

……本当ですね」
しのぶは苦笑した。