ゆいしろ そう
2026-02-14 11:30:22
1207文字
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初めてのチョコ ベクメラ


「できた……これが私の初めての、ふふっ」

――2月14日の放課後、璃緒はある人物を探すために
ハートランド中を駆け回っていた。
今日中に渡さなければ意味がないからだ――

(どこにいるのかしら。遊馬に聞いても、知らないって言うし)
「璃緒、帰らないのか」

――凌牙は璃緒をやっと見つけることができて、ホッとしている――

「あ、凌牙」
「何かあったのか?」
「ううん……こんなことは、なくて」

――ばつが悪く、璃緒の視線の先にはベクターがいる――

「璃緒? 調子でも」
「ごっ、ごめん! 私、ちょっと用事があって」
「そうか。早く帰って来いよ」

――心配にはなったが、凌牙自身も
妹に干渉し過ぎるのはよくないと考えている。
後ろ髪を引かれる思いで璃緒を見送った――

(まるでストーカーね、私)

――ベクターは璃緒に気がついていないのか、右や左と
酔っ払いかのようにフラフラと歩いている。
かと思えば、急に足を止める。再び歩き出したのは、璃緒のいる方向で――

「メラグちゃーん、尾行は趣味悪くなぁーい?」
「やっぱりバレてたわね……ごめんなさい」
「てめぇが謝るなんて、空からチョコでも降って来るのかも。
なーんちゃって」
「チョコ!?」
「おい、さっきから変だぞ」
「ベクターぁああああああああああーー!!」
「ぎぃやあぁあああああああああああああぁっ!? って、なんだこれ」
「見てわからない? チョコよ、チョコ」
「あ、そう。もらったやつの余りか」
「いいえ、私が初めて作った」
「は?」
「味見はしてありますので、大丈夫。変なものも入れていないし」
「手作りってやつかよ、うわぁ~」
「さぁ、食べるの食べないの!?」
……今、目の前で食うわ」

――ベクターは顔を引き攣らせながら、
居心地が悪そうに包装を剥がしていく――

(ベクター、ものすごく嫌そうよね? どうして食べる気になったのかしら)
(食わねぇと刺されそうだ。チョコに罪はない)
「そんな無理しなくても」

――ひょいっと、小さいハートのチョコを口に入れた――

「うぅん……
「た、食べてくれてありがとう」
「味は……チョコだな、普通の」

――残りも全部口の中に入れ終えたベクターは
璃緒に包装一式を渡した――

「んぐんぐ、これは返す」
「え、ええ……
「誰の予行練習か知らねぇが、チョコに変な細工しなきゃ
食ってくれると思うがな」
「私はベクターに」
「にしてもさー、メラグちゃんが俺に頼る日が来るなんてぇ。
明日は桜でも咲くんじゃね?」

――ベクターは応援するかのように、肩をぽんぽんと叩いて離れていった。
残された璃緒は、全身茹で上がった海老のように赤い――

(ベクターって、良い人なのかしら)

――最悪なバレンタインを予想していた璃緒は
予想外の展開に嬉しくなり、心晴れやかに家路へと向かった――