roku
2026-02-13 11:00:31
1523文字
Public 松エジ
 

バレンタイン【松エジ】

・今年のバレンタインは大人軸
・2人ともいっぱい貰ってそうだなって思ったらこうなった

「相変わらず山盛りだな」
帰ってきた沢北の手元の袋に視線を下ろし皮肉混じりに吐いた。沢北は「松本さんも変わんないじゃん」と、すでにテーブルの上に置かれてある同じく山盛りの袋の隣に置いた。そして中身をちらっと覗いて「もっと他に金使えばいいのに」と漏らした。
「それはそうだよな」
「気持ちに応えられないって言ってんのに押し付けてくんのなんて、ある意味ハラスメントっすよ」
沢北は案外律儀なところがあり、一旦は断っているようだ。
「ははっ。でもちゃっかり持って帰って来てるじゃねぇか」
「それはまぁ押し問答も面倒なんで」
沢北曰く、断っても受け取ってくれるだけでいいと引かない相手の分を持って帰ってきたらしい。
「松本さんは違うんすか?」
「ん?オレは貰えるもんは貰えばいいと思ってるぞ」
「うわ〜最低」
松本はどちらかといえば甘党であることを沢北は知っているが、さすがにその発言はいただけないと思ってしまう。
「殆どがイベント好きの女性社員が配ってる義理なんだから最低でも何でもねぇよ」
むしろそこに〝お返し〟を望んでいる女性社員たちの方がよっぽど最低だろと言われれば、どっちもどっちなのかという気さえしてきた。そんな沢北は様々にラッピングされた箱をひとつひとつ丁寧に取り出し始めた。
「何やってんだ?」
「何個あるか数えてるっす。あ!負けた方が勝った方の言うこと聞くとかどうです?」
「はぁ?何の勝負だよ
いいことを思いついた!と目をキラキラさせる沢北の姿に呆れ混じりの苦い笑いがこぼれた。だがそこは負けず嫌いの松本。その性格は大人になった今でも変わらない。
「します?しません?」と首を傾げて笑う沢北に、「するに決まってんだろ」と自らが持ち帰った袋の中身を取り出した。〝義理〟というには些か高級すぎやしないかと感じる箱がひとつふたつと並べられていく。
「松本さんのそれ、ほとんど本命だと思うんすけど
「なんだ。妬いてんのか?」
松本はスッと目を細め微笑を浮かべた。
は、はぁ!?違うし!」
「オレが好きなのは沢北なんだからここにあるチョコレートが全部本命でも関係ねぇよ」
……そうですけどさっきと言ってること違くない?」
ほとんど義理だとか言ってたくせに とぶすくれた表情を向ける。
「細かいこと気にすんなよ。ほら、お前何個あんだよ?」
「21個」
答えた沢北は松本の分も数え、同じ個数であることに気づく。
「ちょっと〜!引き分けとか一番ないんすけど!」
「ははっ!勝ったらオレに何してほしかったんだ?」
「それは……勝ってないから言いません!」
少し悩んでから、口をきゅっと結んだ。
「そうか。でもこの勝負、沢北の勝ちだからなぁ」
含みのある言い方に沢北は首を傾げた。
「これ、オレから沢北に」
そう言って松本が通勤に使っている鞄の中から取り出した箱は、今しがたテーブルに並べていたものと同じ類のものだった。
……え?」
受け取った包み紙には沢北を象徴する数字である〝No.9〟
「まつ、もとさん?」
「いらねぇならオレが食うぞ」
「いる!いりますよ!!」
「それはよかった」
「これでお前が1個多いな」と表情を綻ばせる。
……松本さんて、ずるいっすよね……
「あ?」
「ずっとカッコいいじゃん
ぶすっと膨らませたその頬は赤く色を変えていた。
「そういうお前はずっと可愛いけどな」
言うや否や沢北を抱き寄せ、その赤く染まった頬に口づけた。
「で?お前はオレに何をしてほしいんだ?」
「         」
ぎゅうっと抱きついた沢北が望んだのは何だったのか。
それを知るのは恋人である松本ただひとり。