匣舟
2026-02-14 09:14:00
1419文字
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華麗なるノックアウト

バレンタイン企画の許嫁金乱♀︎です。


 今日はバレンタインデーということもあって、金吾の通う高校では先生の目を忍んで好きな人へチョコを渡したり、友達と交換したりなど様々な方法でチョコを渡している。バレンタインだからか行き交う人々の顔は心做しか誰もが緩んでいるように見えるが、かくいう金吾も顔の緩みを抑えきれていない一人だった。
 今日は乱太郎今世では蘭と許嫁になってはじめて迎えるバレンタインということもあり、そして学校が終わってからいつもの駅で待ち合わせをして放課後デートをするということもあって、金吾は朝からずっと浮かれていた。
 早く蘭に会いたい。その気持ちだけが金吾の脳内を巣食っていて、午前中の授業は辛うじて聞き取れていたが、午後の授業など内容が左から右に抜けていってしまっていた。
 授業も、ホームルームも終わると金吾はそそくさと帰る準備をして級友たちに挨拶をして教室を出た。これも早く蘭に会うためだといつもは走らない廊下も早歩きで行って、最速で昇降口へと駆ける。
 靴を履いて外を出るとなんだか周りが騒がしくて辺りを見渡す金吾。すると、金吾の瞳にはよく知っているというか、自分の愛おしい彼女が自分の学校の校門の前で待っていた。
「ら、蘭!?」
 金吾は彼女が自分の高校の前にいたことに驚き、全速力で蘭に駆け寄りながら声をかけた。周囲の生徒たちが驚いた様子で金吾の姿を見て振り返るが、今の金吾にはそんなことは気にならず、蘭がなぜここにいることの方が気になっている。
 彼に名前を呼ばれた蘭は金吾を見て、いたずらが成功したような悪い顔をして微笑む。
「さぷらぁーいず!ふふ、金吾びっくりした?」
「あ、当たり前だよ!びっくりしすぎて夢かと思ったくらいだよ!」
「ふふっ、そっかぁ。」
 早く学校が終わったからね、金吾の学校に迎えに行けるチャンスを逃したくなかったんだぁ〜。と嬉しそうに笑う蘭を、金吾は思わず抱きしめたくなったが、今、自分たちがいるのは自分の学校の前だと我に返りその衝動を堪えた。
ずるい、ずるいよ蘭。こんなところでかわいいことしないで。」
 ここで抱きしめたくなっちゃうじゃないか。と手の甲にキスをしながら射抜くような瞳で蘭にに告げると、彼女は少し頬を赤く染めながら金吾の手を引いても、もう!早く私の家に行くよっ!と歩き出す。
 そう、今日金吾の顔が緩みきっていた理由は、初おうちデートで、しかも蘭の家でそのまま手作りのものをその場で作ってくれて出来たてのままものを食べさせてくれる予定だからだった。
「蘭は僕に何を作ってくれるの?」
……ふふ、それはね、秘密!」
 私が何を作るのか、楽しみにしてて待っててね?と言いながらニヤニヤと悪戯っぽく笑う蘭に対して、なんだか今日の蘭はいじわるだね。と言うと、そうかな?でも言わない方がワクワクするじゃない?と笑った。確かにそうかもしれないな。と思い直す。
「でもまあ、蘭の作ったものならなんでも美味しいだろうけど、期待して待ってるね。」
「うんっ、とびっきりの愛情込めて作るね。」
 そう言われた金吾は今から蘭と過ごすバレンタインを想像して、思わずふふっと笑みがこぼれてしまった。きっと、楽しくて幸せな時間を過ごすのだろうと想像して。それを隠すようにマフラーに顔を埋めながら、彼女の手をさらに握りしめて、蘭の家へと足を運ぶのだった。

ワード:射抜くような・チャンス・ずるい