昔々、村近くの洞穴にアブソルが住み着いておった。気紛れに集落までやってきては、家の前で昼寝をしたり子供らと遊んだりして、日が暮れるころにまた洞穴に戻っていった。村人たちも暴れるでもなく只々のんびりと過ごすアブソルをかわいがっておった。
ある年のことじゃ。村が大雨による洪水で壊滅状態になった。それを知った当時の領主が村に使いを向かわせた。
村に着いた使いの者は呆然とした。土砂で家々は潰れ畑は流されていた。それだけではなく周囲の木々が鋭い刃物のようなもので切り倒されていたのじゃ。
「これは洪水だけではないな、どういうことか」
と問うと村人が、
「アブソルがやったのだ!」と……。
「なるほど!つまりあの像は災害を起こしたアブソルを鎮めるための」
「んなわけねーだろ。今時そんなもん信じとるのは頭の堅いジジババだけだわ」
え~っと、どこまで話したんだったか。そうだ。
村人曰く、雨が振り始めたころアブソルが駆け込んできた。鬼気迫る顔と声にただ事ではないと感じた村人たちは慌てて川から離れた場所に逃げたそうな。それでも自然の力は凄まじい。溢れ出した川の水が土砂とともに村人達に襲いかかった。
そのときじゃ、アブソルが水に向かって駆け出したのは。木を切り倒し、水を切り裂き、村人たちの逃げる時間を稼いだのじゃ。
その話を使いから聞き感心した領主は、アブソルに多くの褒美を与え村を復興する際にアブソルの像を建てたのじゃ。
村人たちもアブソルを英雄アブソル様と讃え大切に扱った。
「つまり、そこからアブソル信仰が始まりあの洞穴で儀式が」
「さっきから何言ってるんだアンタは。いちいち遮るんじゃない」
村が救われ復興し数ヶ月が経った頃じゃ。突然アブソルが怒って洞穴から出てこなくなった。
「やっぱりアブソルを鎮めるための儀式!」
「だ〜〜っ!!さっきからうっせえな!!アンタが聞かせろっつうから話してんだよ!ちったぁ黙ってろ!!今からいいとこだからよぉ!!!!」
どうしたことかと考えた時一つのことに気がついた。
それは呼び名であった。
それというのもこの村人たち、アブソルを大層かわいがっており「アブソルちゃんかわいいね〜♡」と呼びかけていた。アブソルもそれに悪い気はせず自分の名前を「カワイイ・アブソルちゃん」と思っておった。カワイイの自覚があるアブソルだったのじゃ。
それがどうであろう。突然「アブソル様」「英雄様」と呼ばれ始め、カワイイのカの字すら言われなくなったのじゃ。
アブソルは拗ねに拗ねた。その姿に心打たれた村人たちはあらためて「かわいいアブソルちゃん」として大切にしたのじゃった。
「え?じゃああの像は?」
「ウルトラキュートアブソルちゃん村を助けてくれてありがとうの像だが?」
「アブソル信仰の謎の儀式は!?!?」
「ねーよそんなもん!!」
「でもあの洞穴にぞろぞろと住民が」
「ありゃ墓参り。寂しがり屋のアブソルちゃんのためにみんなで行って周りで遊ぶんだよ。ちなみにここ数年はポケスロンもどきがトレンド」
……というわけで謎のアブソル信仰の儀式はありませんでした。
英雄アブソルちゃんの墓参りは外部の方でもできるとのことでしたので、興味のある方は集落の方々にご迷惑をかけないように気をつけながら行ってみてください。
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全国図鑑 No.0359
アブソル
不吉なのは 見た目だけ。 田畑を 守ってくれたり 異変を 人に 告げてくれる ありがたい 存在。
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