nmrktz
2026-02-12 15:50:53
1248文字
Public
 

それがあなたの選んだ未来

シャリエグ
別れた後から壊れる🟧を見ているだけしかできない🟩。
なんでも許せる方のみで。

⚠️ハピエンじゃない
⚠️🟧とモブ(女)との匂わせあり



 別れを切り出したのは、シャリアのほうだった。エグザベを想ってのこと。

 理由はいくつもあった。
 エグザベにとってはどれも正しくて、どれも卑怯だと思えるものだった。
 
 ――子どもがいない未来を、幸せと呼んでいいのか。
 その問いがシャリアの中で、この決断の決定打となった。
「君の将来の話だ」
 そう言った時、エグザベは一瞬、理解できない顔をした。
……僕の?」
「君は、まだ戻れる」
 自分と付き合う前は異性愛者だったことを暗に示す。言葉にした瞬間、自分の声が、ひどく他人行儀に聞こえた。
「間違いだったと思ってほしい。私と付き合ったことは――
「それ以上言わないでください」
 エグザベは、静かだった。怒鳴りもしなかった。
ただ、目だけが、はっきりとシャリアを射抜く。その目の決壊しそうなダムの水面が揺れた瞬間。
「僕の気持ちまで、否定しないでください」
 それだけ言って、彼は背を向けた。

 追いかける資格は、自分にはないと思った。

 一人になってから、シャリアは声を殺して泣いた。
 肺が痛くなるほど。
 喉が裂けるほど。
 それでも、泣く資格すら、自分にはないと思っていた――自分で手放したのだから。

 
 それからのエグザベは、目に見えて変わった。シャリアが紹介した女性と付き合い、短期間で別れ、その後も絶えず、次々と噂が立つ。

 笑顔は絶やさず、以前よりもずっと、社交的。
 交友関係は広く浅く、奔放――所謂遊び人になった。

 同僚たちは言う。
「少尉、最近ちょっと飛ばしすぎじゃないか?」
「雰囲気変わった?」
「ほどほどにしなよ」

 片頬を赤くして登場した朝には、その視線が、なぜかシャリアに向く。
「中佐も、上官として注意してやってくださいよ」
 皆、知らないのだ。何も。
 その場の空気を壊さないために、シャリアは、上官の顔を作った。
……異性関係は節度を持つように。任務に支障が出ない程度にね」
 エグザベは、ふわりと微笑んだ。
「はい、気をつけます」
 完璧な返事だった。

 廊下ですれ違った時、エグザベは足を止めた。

 ほんの一瞬。誰にも聞こえない距離で。
「だって」
 低く、歪んだ声。
「これが、アンタの望んだ僕だろ」
 振り返ったその顔は、悪意を纏ったように笑っていた。挑発するような視線がシャリアを刺す。
 だが、その奥にあったのは、責めでも怒りでもなく――確認だった。
「ほら、これでいいんでしょう?」と私に答えを求める目。
 シャリアの喉が、ひくりと鳴る。何も言えない。否定も、肯定もできない。
 ――違う、と言いたかった。
 ――そんな未来を、望んだわけじゃない。
 けれど、それを言う資格は、もうどこにもなかった。

 廊下に残されたのは、すれ違った背中と、「ああ、どうしよう」と、胸の奥で留めていたものが崩れ落ちる音。
 彼を止められない。

 愛していると伝えることも、もうできないのだ。
 


fin.