アルハイゼンが夕食を買ってくれる話

※2025スメールイベントの会話より。カーヴェが少し居ます。

「おや? あそこにいる派手な二人組は……

 ズバイルシアターで演出の準備手伝いを終えて、そろそろ帰ろうと言うところで、見慣れた二人組――アルハイゼンとカーヴェさんを見つける。屋台のお店の前で、何やら揉めている?様子に見えた。まぁ……よくある光景といえば、そうなのだが。
 少し気になったので、物陰から観察してみることにした。

「これをテイクアウトでもらえるかな」
「はいよ!テイクアウトだね」

 なんだ、カーヴェさんと二人でご飯買ってるだけか。揉めている訳では無さそうだし、私の分も買ってもらおうかな……とか考えていたら――
「いやいや、一人前を二つで!」
 カーヴェさんの言葉で、物陰から一歩足を踏み出すのを躊躇する。……そうだった、彼はそう言うスタンスだった。危ない危ない。ここで私が前に出ようものなら、慌てさせてしまうだろう。……大人しく一旦帰ってから出直すとしようかな。
 
「いや、三つだ。三つに変更してくれ、店主」
……はいよ!」
 ――おや? 流れ変わりましたね。アルハイゼンが三人分に変更しているし、三つ目のソースを問われて少なめを選択していた。これはもしかしなくても、私の分では……

「お、おいアルハイゼン⁈」
 カーヴェさんが焦ってアルハイゼンに声を掛けているが、彼はカーヴェさんの方を見ていなかった。と言うか――
「いや、完全にアルハイゼンは……私を見てるよね」
 私が隠れていたのはバレバレだったようだ。全く気付いてないカーヴェさんを無視して、こちらを見ている。物陰から少しだけ顔を出すと、アルハイゼンとバチっと目が合ってしまう。控えめに手を振ると、彼は口角をほんの少し上げて微笑んだ。一瞬だったし、気づくのは私ぐらいでしょうけれど。

 帰る家は一緒なのに、少し遅れて帰ることにしたらしいカーヴェさんを置いて、店主から商品を受け取ったアルハイゼンは私の方へ迷わず歩いてくる。

「何故君はそんな所に隠れているんだ?」
「いや……なんとなく」
「大方、カーヴェに気を使っての事だろうが、彼に気を使う必要など全くない」
「えぇ……いや、そうは言ってもねぇ」

 言い訳を考えている私を無視して、アルハイゼンは私に手を差し出す。珍しい、手を繋いで帰ってくれるって事? 差し出された手を握り返した所で、彼は珍しく目を丸くして驚いていた。え、なに……

「君の手荷物を預かろうかと思ったのだが」
「え、そうなの? やだ恥ずかしい」

 ふっ、と目を細めて笑う彼の手を離そうとしたのだが、何故か離れない。というか離せない。

……ん?」
「うん。このままでも問題はない」
「いや問題あるんでしょ……って、ちょっと⁈」

 そのまま歩き出す彼に引っぱられ転けそうになったので、私は文句を言いながら足を動かすことにした。


「言っておくが君は、俺と一緒に帰ることにメリットもある」
「何なに、聞きましょうか」
「君は今日、家の鍵を持っていないはずだ」
「え⁈ ――ほんとだ、全然気付いてなかった」
「だろうな」
「お……お迎えありがとうございます。家に着いたら、美味しいコーヒーを入れさせて頂きます……
「ふむ、ではよろしく頼むとしよう」



『彼は、何でもお見通しすぎないか?』