バンドパロ(と言うにはなんか変)。音楽何も分からない奴が書きました。マックスさんが音楽に対して滅茶苦茶なことを言っています。ふわっと読んでください。よろしくお願いします。
煌びやかで騒がしい舞台の上に立って、観客を絶頂に引き上げる音楽の引率者。はたから見れば、カートもそんなふうに思われているのかもしれない。
「あなたがこのバンドのボーカルパンクロッカー?俺は音楽からっきしでさー。」
「いやバンドっつっても俺だけサイボーグで後アンドロイドだし。演奏聞いてる奴らが俺含め全員機械だと思ってるのか知んねーけど。」
「まあそのアンドロイドのプログラム組んだの俺だしね。」
「は?」
「あ、カスタネットならできるかも。」
カートは今の人生をこう評す、路上ライブしてた頃の方がマシ。アレだってマシンが音楽流してるだけだと思ってる人間もいたが、自分で何度もサイボーグなんでと主張する機会が自分の都合で作れた。
それが今、事務所とかいう監獄に囚われてしまったせいで、カートには自己主張の自由すらない。機械演奏の中で歌うなんて本当にごめんだった。自分がその中の一部である、など。
それに、生粋のロッカーでもなんでもなければ、パンクとメタルの違いも分からなかった。路上でギターを担いでいたカートは、シンガーソングライターだった。今は手ぶらでマイクと向き合っている。悲しいかな組織の歯車となってしまったので。
「てかお前が楽曲提供者なんじゃねえのか。」
「そうだよ。」
カートが会っているのは、マックスという楽曲提供者であるはずだった。事務所に来ていると聞いたので、自分がパンクなんて歌わされている分、面を拝んでやりたかった。
きょとりと答えているように見えるモニターフェイス。余分な物の削がれた成功で美しい人形にも見えるそれは、よっぽどアンドロイドのようだった。
だがそのお喋りが余分過ぎた。こいつは人間だ。
「言ったでしょ。俺はコンピュータでプログラム組んでるだけだから。楽器とか演奏は分かんないし出来ないよ。」
「なんでパンクロック?」
「それは俺も知らない。そう指示されて、俺なりに調べて、周波数とかタイミングとか、こんな感じかな、って作ってるだけだから。」
マックス、こいつ滅茶苦茶だ。自分が知らないもんを、プログラム組むなら自分でも出来るとかぬかしてやがる。
「お前はねーの、好きな音楽。」
「ないねー。……あー、俺あんまりそういうのに触れる機会なかったから。あ、ミナミちゃん?」
「それは女の子かわいーって感情なだけだろ。」
「……そうかも?」
首を傾げる自称プログラマーは、本当に音楽を知らずにカートの楽曲提供者であるらしい。
「あ、でも。子守唄とか歌って貰いたいな。」
フルフェイスが子供みたいな顔で言った。
「それって俺にってこと?」
「えー、ロックじゃない方がいいんじゃない?」
「知らん。」
「ま、俺に歌ってくれとかいうんなら、誰でも良いよ。」
その子守唄だって、分からないなりに自分で作ってしまえるのだろうに。自分の寂しささえ知らないような子供に見えた。この男に、自分の歌だけを乞われてみたいと思った。
「あなたこそ、ビジネスパンクロッカーだったんだね。」
「あー。うん、そー。」
にやにやと笑っているような音声だ。
「あなたの声なら、バラードとかジャズとか聞いてみたいな。」
カートはぱっと顔を上げた。リクエスト紛いなことは、路上依頼だ。
「分かんのかよ、バラードにジャズなんて。」
「どうだろ。」
やっぱり滅茶苦茶だな、マックス。
けれどカートもその手の歌は畑違いだった。自分がロックを歌えているのも、いつも大声で怒鳴っていた父を真似ているようなものだ。がなるように歌詞を叫ぶ。それとは真逆の印象だ。
子守唄が聴きたいなんて言った男のことだ、強いて言う好みなら、そういう歌なのだろう。皮肉だった。カートもマックスも、別にロックンロールに生きたいわけじゃないのに。
「お前酒飲めるの?」
「はあ?バカにしないでよねー?」
「じゃあ夜にジャズバー行こ。お勉強。」
「え?」
「転職先も探さねーとな。」
因みにマックスは、本当に楽器が扱えなかった。細くて繊細な指が弦を押さえるのはさまになっていたが、それだけだった。なんならカスタネットに触ってことすらなかったから。
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