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2026-02-09 23:21:42
3095文字
Public 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ
 

午後の戯れ/ 助手2号のお兄ちゃんのイトアキ

兄の部屋でバーチャルセックス特集の雑誌を見つけてしまったチャンピオンであったが…

アキラの部屋にやってきたライトは、部屋の主が仕事を終えて戻ってくるまでの間、ソファに寝転がって居眠りをしていた。
夜通し仕事で走り回り明け方とともに六分街へやってきたわけであるが、出迎えたアキラは「リンが午後から店番してくれるらしいから、お昼まで寝ているといい」とライトに告げて、仕事に行ってしまった。
相手をしてくれるだけでも僥倖といったところだろうか。
他人の部屋で寝るのは難しい。
環境が違うのが一番の要因ではある。
アキラの部屋はとにかく物が多かった。
それを言ったところ、これでも我慢していると返されて、ルーシーの部屋の棚を思い浮かべながら、都会育ちだとこうなるのかと考えたものだ。
アーティストや映画のポスター、乗っているかどうかもあやしいクロスバイク、おもちゃの数々、ぴかぴかのスニーカー。部屋のすみには雑誌や本が積み重なっていて、アキラの興味がたくさんのことに向けられていることを部屋の収拾物が表していた。
うとうとしかけたところに階段を上ってくる足音がした。
アキラだろうか、しかしどうにも眠くて起き上がるのが億劫だった。
寝返りを打って、彼がやってくるのを待つ。
が、ドアが開く音がしたのは隣の部屋で、おそらくリンだった。
ため息をついてうつらうつらと船を漕いで、しかしいつアキラが来ても起きられるようになんとか目を開けようとした。そこへ、急に視界に入ってきたのだ。部屋のすみに積み重なった雑誌の表紙が。

「特集!はじめてのバーチャルセックス♡」

ライトの眠気は吹っ飛んだ。
そりゃあ、アキラも成人男性であるから、エロ本のひとつやふたつ部屋に置いているだろう。そもそも、ポルノビデオなどのコンテンツでセックスに関する知識を学んでいる青年なのである。
が、内容が穏やかではない。
ふつうのセックス特集ならまだしも、バーチャルセックスなのである。
ライトはむくりと起き上がり、雑誌を手に取った。
子ども向けのアニメのような絵柄だったが、ほぼ半裸で出るところは出ているキャラクターがダブルピースをしてこちらにアピールしている。ぱらぱらとめくると、どうもゲームの特集や広告ばかりなので、ゲームの情報雑誌らしい。そこへどうして突然バーチャルセックスなんだと首をかしげていると、ドアが開き、振り返るとアキラがいて、彼はライトに笑いかけたかと思ったら表情をかたくして、一呼吸置いて「わー!!!!!」と叫んだ。
「ライトさん、それ……
「すまん。興味があって勝手に中を見た」
このような場面は他でもあったな……とライトは思い出す。自分の部屋なのだから仕方がないことだが、アキラはうかつにも、人に見られたら困るようなものを置きっぱなしにしているのだ。
「どこ!? どこを見た!?」
アキラはライトから雑誌を奪い取ると、頭を抱えてソファに座り込んだ。
その隣に座って、ライトは「何も」と答える。
「嘘だ」
「そりゃ、見たが、どこを見たらいいのかさっぱりだ。文字が多いし、絵がたくさん載ってる」
「雑誌ってそういうものだろう」
「俺が読むのは新聞かパイパーのお下がりの懸賞雑誌だからな」
……ライトさんて、本当に、こういう文化に触れてこなかったんだね……
「どういう意味だ?」
「わからないならわからないでいいよ。ライトさんはピュアなままでいてほしい」
「バカにされている気分だな」
「住む世界が違うということを実感してるだけだよ」
アキラはライトが何もわかっていないことを知って、ホッと胸をなで下ろしたようだった。
そして、ページを開いて解説を始めた。
「バーチャルセックスというのは、ヘッドマウントディスプレイもしくはコフィンもしくはコンタクト型のようなウェアラブルデバイスで仮想空間に意識を没入させて、そこでセックスを疑似体験することだよ」
見開きの誌面には表紙のキャラクターがゴーグルをつけている姿が掲載されていた。身体のところどころにモザイクがかかっている。規制されているらしいが、ライトは実のところ、二次元のキャラクターに性的興奮を覚えたことがないので、これがエロティックなのかどうか、わからなかった。
「仮想空間は残念ながら、味覚嗅覚触覚への訴求が発達していなくて、疑似体験の場合、たいていは補助が必要になる。触覚の場合だと、このコントローラーが振動したり熱を発したりすることで肉体に刺激を与える。アクションゲームならこれで事足りるけど、セックスの場合はそうはいかないので、アプリと連動したディルドとかオナホールを使うんだよ」
アキラの指さす先を見ると、ヘッドマウントディスプレイが6万ディニー、アプリが基本無料の課金によるダウンロードコンテンツ有り、アプリ連動のディルドが3万ディニー、オナホールが2万ディニーとあった。その他、ニップルなんとかとか、コックなんとかなどがグッズ料金表に記されていた。
思わずアキラをまじまじと見てしまう。こんなに詳しいのだから試したことがあるのでは、と疑ってしまうのも致し方のないことであった。
アキラは疑われていることを知り、胸の前で手を振って否定した。
「やったことはないよ。まだ」
「ほう」
「買ってもないし!」
「興味はあったんだよな」
「そりゃ、まあ」
「あるのか、デバイス」
「だから、買ってないって!」
アキラは困ったように眉を下げた。
「どんなものかなって知りたかったけど、そこまで興味は引かれなかった」
「へえ」
「ライトさんは疑ってるみたいだけど、いつもの僕なら即断実行でここにあると思わない?」
「それもそうだな」
ライトは頷いた。
「したって、どうせ、リアルには及ばないってわかるだけだし……これからも、これには手を出さないと思うよ。わざわざここまでしてしなくたって、いいんだから……
「ふうん」
「ライトさんが興味があるなら、買ってあげてもいいけれど」
口をとがらせてアキラは言う。言葉で追求しない代わりにライトににやにやと見られているのがいたたまれないらしく、そっぽを向いてしまった。
ライトは腕を伸ばし、アキラの腰を腕に抱えると、自分の身体の上に乗せた。
「なんだい」
「バーチャルじゃない方がいい」
「うん」
「するか?」
「しない」
「誘い方を失敗したな」
「そうじゃない」
アキラはライトの腕を解き、立ち上がって雑誌を元の場所に戻した。
「ライトさんが寝て起きたら……そのときあなたがその気だったら、する」
「今だってどうってことない」
「リンが午後から店番に立ってくれるってことは、朝まで僕は遊んでていいってことなんだ。今は怠けて惰眠を貪ろうよ」
「あんたを抱き枕にして?」
「特別サービスで、許そう」
そうして、ライトはアキラに導かれ、彼のベッドで並んで寝た。
もちろん、起きてからその気だったのでアキラに強請ると、それにも応えてくれた。
激務をこなしたことへのご褒美のような時間にライトは素直に喜んだ。
そのため、ライトは気づいていなかった。
アキラが本当に隠したかったこと、それは雑誌の特集ではない。袋とじになっていたエロエロのピンナップで、成人向けゲームに登場するキャラのあられもない姿がばーんと掲載されていたのだ。アキラとしてはそのキャラクターを好きなこと自体が人に知られたくないことで、それは彼の性癖や好みを如実に示しているからで、絶対に絶対にライトにだけは知られたくないと思っていた。
この秘密が隠し通せるなら、アキラは別にセックスを交換条件にしたって構わなかったのである。