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ne🌟
2026-02-09 20:12:41
2153文字
Public
高諸
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8)新婚さん、いらっしゃい!
# いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く
高諸
高さんは侍として、尊ちゃんは女装して女中として潜入している話
月が陰り暗く人気のない廊下を、高坂は灯りも持たずに歩いていた。
足音は立てず、気配を殺して。
しばらく歩き、中庭に続く縁側に辿り着くと、そこから庭へ降りる。庭に降りるとまっすぐ木が植えてある塀の方へ足を進めた。
「高坂さん、こちらです」
木の影から微かな声が聞こえ、高坂は足を止めた。声のした方へ目を凝らすと、闇にまぎるような暗い色の着物を被った少女がひょっこりと顔を出した。
「早いな尊奈門、仕事は?」
少女──、もとい尊奈門は高坂の呼びかけでわかりやすく気配を緩めた。
「明日の朝当番となったので早めに暇をもらいました。そちらは?」
「私はこの後不寝番を任せられている。だからあまり時間はない」
その言葉通り、高坂は周囲の気配に最大限気を配りながら、手短に情報を伝えていく。
「
……
やはりたった数日では情報は集まりませんね。しかも高坂さんと会える時間も限られてるし
……
」
高坂たちが潜入忍務のためにこの城に来たのは数日前。
高坂は城付きの侍を志願する若造としてだが、尊奈門は女装をさせられ女中見習いとして忍び込ませていた。
その時点で尊奈門は嫌々だったのだが、情報収集が捗らない状況にもどかしさを感じているようだ。
話を聞き終えた尊奈門は、わかりやすく落胆の息を吐いた。
「それはわかっていたことだ。今更うだうだ言っても仕方ないだろう」
焦りは綻びを生む。
それをよく知る高坂は、声を強めて尊奈門を咎めた。
「そう、なんですけど
……
」
「──誰かいるのか?」
「??!」
突然聞こえた第三者の声に、二人は息を呑んだ。
声の下方を振り向けば、城の方から灯りを持った誰かが近づいてくる。
しまった。高坂は内心舌打ちをした。尊奈門を咎めるのに夢中で不寝番が来ていたことに気づかなかった。
灯りはどんどん近づいていく。
高坂は咄嗟に尊奈門を背後に隠すように立った。
自分だけならどうとでも誤魔化せる。どうか近寄ってくる男が尊奈門の存在にまで気づかないように。
そう、願いながら高坂は慌てず冷静に対処しようと努めようとした。
「お前、陣吉じゃないか。こんなところで何をしている」
灯りが自分の顔を照らし、思わず目を細めた。
陣吉、と高坂を呼んだのは侍衆を率いる男だった。
つまりこの城に仕えたいと志願した高坂の上司にあたる。
他の人間であれば口止めも視野に入れたが、誤魔化しがきかない人間に勘付かれたと、高坂は顔を顰めた。
「ん
……
?背後誰かいるのか?
……
お前は、最近入った女中か?」
「は、はいっ、」
男は目ざとく背後に隠した尊奈門にまで気づいてしまった。致し方なく高坂の影から顔を出した尊奈門の声は上擦り、緊張が孕んでいた。
高坂と尊奈門。二人の姿を交互に見やった男の眉間には、どんどん皺が寄っていく。
「お前たち、顔見知りか?」
その声には、疑いの色が孕んでいる。
それもそうだ。二人がここに来たのは数日前。城付きの侍と女中。仕事が異なる己らが知り合いだと言うには、短すぎるのだ。
この場をどうやり過ごすか。高坂が考えていると、背後で焦る尊奈門が何かを言おうと言葉を探してる気配を感じ、高坂は慌てて口を開いた。
「か、彼女は私の妻なんです!」
こういう時、尊奈門が喋れば100%ボロが出る。
だから口から出まかせで、適当な嘘を吐いた。驚いた尊奈門を黙らせることができた高坂は、その勢いのまま、たった今考えついた設定をツラツラと並べ始めた。
「
……
私と共に住む場所を追われ、奉公を志願したのです。そのことを伏せたのは、ここには他にも戦で家も家族も失ったものが流れ着いていると聞いて
……
。夫婦揃って逃れることができた私たちを、よく思わない者もいるかもしれないと」
そこで言葉をきり、男の反応を伺う。そして尊奈門へ矢羽音を飛ばした。
──男がこれ以上疑う素振りを見せるようなら忍務を中断する、と。
合図をしたら逃げるぞと伝えれば、返事の代わりに着物の裾が軽く引っ張られる。
「
……
くっ、」
曲者。
男がそう叫んだ瞬間、その隙をついて背後の塀から外へ出る。緊張の面持ちのまま、高坂はその瞬間を待った。
「
……
苦労してるんだなぁ、お前たち」
「え?」
「は?」
予想していた反応と全く違う男に、尊奈門も高坂も思わず変な声が漏れてしまった。
だが幸いにも鼻を啜り涙ぐんだ男は、二人の様子に気づいていない。
静かな庭に、男が鼻を啜る音だけが響く。その気配には少し前まで見せていた敵意などは感じなかった。
とりあえず、誤魔化せたのだろうか。矢羽音でなにも喋るなと尊奈門に釘を打ちながら、目の前の男が落ち着くまで静かに待った。
しばらくしてようやく男は袖で涙をや拭うと、真っ直ぐと高坂に向き合った。
「話はわかった。私が上に掛け合おう。なに、悪いようにはしないから少しだけ時間をくれ」
一体なにをどう自己完結したのか。
今度は高坂も尊奈門の二人が困惑する番だった。だが二人が返事を返すのを待たずに、男は早足で城の方へ戻って行った。
*****
翌日、二人部屋をあてがわれた上に、部屋に敷かれた布団は隙間なくピッタリと並べられていた。
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