三毛田
2026-02-08 21:51:47
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62 16. 暮れゆく空の匂い

62日目
四季によって違う

 春は比較的柔らかく、夏は湿気と暑さでよくわからない。秋はほんのり甘さを含んでいて、冬は冷たい。
「丹恒。手を繋いで帰るぞ」
「別に迷子にはならないが」
「心が迷子になりそうだから、繋いで」
 そう言い換えれば、俺が差し出した手をそっと握ってくれて。
「今の時期は、まあまあいい感じだよな」
「何の話だ」
「空の匂い」
「そうか。そうかもしれないな」
「うん」
 俺の言葉を否定せず、優しく微笑む。
 夕暮れの綺麗なオレンジの光が照らす、帰り道。
 こうして、好きな人と手を繋いで歩く。それだけで嬉しいし、心が躍る。
「あ。食材買ってきてくれってさ。明日の弁当のおかず、食べたいものをリクエストしていいって」
「それなら、蓮根とひき肉の焼いたものがいいな」
「タレはやっぱ醤油系?」
「ああ。ほんのりあんかけ風味だと更にいい」
 どちらかというと、和風なおかずが好きな丹恒は自分で食べたいものを口にして表情をほころばせ。
 そんな彼を見ていると、こちらも嬉しくなってくる。
「それじゃあ、蓮根とひき肉だ。俺は、鶏肉と野菜の黒ず和えとか食べたいかも」
「それもいいな」
「ちょっと手間がかかるけど、手伝えるところは手伝えばいいもんな」
「ああ」
 手を前後に勢い良く振りながら、スーパーへと向かう。
 パムに食べたいものをリクエストし、材料を改めて教えてもらいかごに入れていく。
「焼き芋!」
「買おう」
 野菜売り場の一角に、焼き芋の機械があったので声を上げれば丹恒はためらいなく焼き芋をかごに入れ。
 買い物を終え、店外に出てから二人で焼き芋を頬張る。
「甘い! ほっこりする」
「ああ。この甘さは、悪くない」
「な! お茶があると、指先まであったまるんだけどな」
「コンビニに入るか?」
「ううん。このまま帰ろう」
 早く帰って、丹恒とくっつくほうが俺としては、温まる。だから、早く帰りたい。それが本音。
 丹恒もそれに気づいてくれたのか、少しだけ歩くスピードが上がり。
 家に着く前に、焼き芋は食べ終えた。
「ついてる?」
「大丈夫だ」
 俺と丹恒の分しか買わなかったので、きちんと食べカスがついていないかを互いに確認。
 それでから、室内へ。
「ただいま~!」
「ただいま。パム、これが買ってきた食材だ」
「おかえり。うむ。揃っているな」
「着替えたら、手伝いに来るから待っていてくれ」
「ゆっくりでよいぞ」
 と言ってくれるが、料理をした人間の特典の味見をしたいのですぐに戻って来る。
 丹恒も、きっと多分同じ気持ちだろう。