機械が苦手なフリンズさんとご飯に行く話

※ほよふぇあ2025 KVイラストの🕯️さんから着想したパロディです。

「こちらのお店にしましょうか」
……おしゃれな店すぎる」

 ご飯を食べながら話をしようと私から提案したところ、「おすすめのお店があります」とフリンズが言うので連れて来てもらったのだが、これは聞いてない。全然ご飯屋さんじゃなくて、お酒飲むお店じゃん。
 お腹も減ってたし、一応ご飯も食べられるらしいので、大人しく付いていく。しかし案内された席はカウンターだし、全然ご飯食べていい雰囲気じゃないんだけど……
「ここのお店は、料理も美味しいと聞きますよ」
「まるで食べたことないように言いますね」
……実際、僕はあまり食べないので」
 眉を少し下げて困ったように言うフリンズさん。本当に食べないんだろうなぁ……という雰囲気があるので、なぜか納得してしまった。

「お待たせしました」
 そう言って赤い髪の格好良いバーテンダーさんに出して貰ったのは、「ニンジンとお肉のハニーソテー」という、看板メニューと謳われていた料理だった。実際に食べてみると本当に美味しい!これを食べないとは、フリンズさんは損をしているはず。そう思って隣に座る彼へ目線を向けると、めっちゃ見られてて思わずビクッとしてしまった。
……なんですか? 食べたいのなら、少しあげても良いですけど
「ふふっ、見ていただけですよ。お気になさらず」
「いや、めっちゃ気になりますよ」
 彼は手にしていたお酒のグラスをテーブルにコトリと置き、両肘をテーブルに付きながら指を組む。
「でも僕は、人が何かを食べてる姿を見るのが好きなんですよ」
 組んだ指に自身の頭を乗せて、コテンと首を傾げて、こちらを見ながら微笑むフリンズさん。実際に楽しそうなんだけどさぁ――いや、やっぱり私の方が恥ずかしいからやめてくれないか?

 ご飯も食べてお腹は満足したけれど、せっかくならオススメのお酒でも飲んでみるか、と思いつく。メニューを見てみたが、種類がありすぎてよくわからない……
「フリンズさん的にオススメはどれですか?」
 小さなメニュー表を彼に見せながら、「この辺りが良さそうなんですけど」と指をさす。
「そうですねぇ……、ちなみにお酒は得意なんですか?」
「いいえ全然。お店の雰囲気に飲まれてるので、一杯ぐらい飲んでみようかと」
 彼は目を丸くして少し驚き、すぐに目を細めながらクスクスと笑って、「アップルサイダーのアルコール入りは、如何ですか?」としっかりオススメを教えてくれた。せっかくなので、それにしようと思い、頷いてから店員さんに声をかける。
「すみませ――

 ――その瞬間、ドカンッと店外から破裂音とも爆発音とも取れるような轟音が聞こえた。続いて地震のように店全体が揺れる。

 な、何ごと⁈ とビックリして固まっていると、サッとフリンズさんが体に覆い被さって守ってくれた。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、まぁ。……ありがとうございます」
 なんだなんだ、今のめちゃ格好良いな⁈ とか、そんな事言ってる場合じゃなくて!
 ――ピピっ
 手元の端末の画面が光る。これは、緊急連絡の合図! すぐに回線を開けると、予想通りボスの夢見月さんからの指令だった。

『オフの時にごめんね! フリンズさんも多分居るよね?』
「えぇ、彼女の隣に」
『良かった! クライアントから緊急の依頼が来てて、キミたちが一番現場に近いと思うの。向かってもらえる?』
「な、えっ、どどんな内容ですか⁈」
 嫌な予感しかしないんだけど……、ね。
『今回もフリンズさんの得意分野ね。ある企業の実験装置ロボットが暴走してるらしいの。何としても止めてくれですって。単純に破壊で問題ないよ』
「承知しました。仰せのままに」
 ちょ、まっ、私まだ何も返事してない! あぁーでもやるしかないか!
「ボス、急ぎで場所の詳細とできるだけデータ送ってください」
『分かったわ、二人ともよろしくね』
 そう言って一旦通信が切れた。一応は秘匿通信だし、なるべく小声にはしたけど……周りの客も混乱しているようで、聞かれては居ないようだ。
 
――では、急ぎましょうか」
 私はカウンターの上に気持ち多めのモラをダンッと置き、「お会計お願いします、足りなければ後日でっ」と言うと、赤い髪のバーテンダーさんから「あぁ分かった」と慣れた様子の返事があった。……もしかして同業者かな? こんな手合いに慣れてらっしゃる?
 ――それはともかく、この店にはまた来ないといけないね。だってご飯美味しいし、ドリンク飲んでないし!
 あっ――
「ってか、フリンズさんお酒飲んでましたよね。平気なんですか?」
「ふっ、飲んでませんよ」
「いや飲んでたよねー⁈」
 そんな満面の笑みで否定されても、私は見てたからね⁈


 ***


「ひゃあー‼︎」
「耳元で騒がないでください。舌噛みますよ」
「うぐっ」
 先程のお店を出た瞬間、またもやフリンズさんは私を横抱きにかかえて走り出した。そりゃ頭脳派で体力少ない私ですけど、それだけ緊急って事も理解しているけれど、毎回この移動方法になるのは困るっ!
「目標までの距離は?」
「えっと……出ました。このまま真っ直ぐ進むと、もう見える距離です!」
 手元の端末でボスから送られた情報と照らし合わせると、この先に目標がいるはずだ。涼しい顔したまま走り続けるフリンズさんに移動を任せて、私は情報戦を開始した。
「あぁ、これは厄介そうですねヤバそう」
「何か分かりましたか?」
「この目標は馬鹿でかいし、物理攻撃に対して耐性あるみたいです!」
「ふむ、なるほど……お、見えましたね」
 彼の言葉を聞いて顔を上げると、人間の頭身の三倍はありそうな巨大ロボット(なんとなく遺跡を守ってそうなロボット)が暴れていた。あぁ……周りの建物破壊しながら暴走してる……。「これは、被害額すごそう」と他人事のように呟くと、フリンズさんはクスッと小さく笑った。

 巨大ロボットから十分な距離を取りつつ、全体が見える位置に私を下ろしてもらう。
「物理耐性ですか。ちなみに、対魔耐性は?」
「同程度ですが、対魔の方が高いです」
「わかりました。では物理でなんとかします」
 え……なんとかするって、何をどうやって⁈ フリンズさんの顔の前に手を掲げて制止する。
「ちょ、ちょっと待って⁈」
「なんですか、急がないとボスに怒られますよ」
「それはそう――じゃなくて、何か対策あるんですか!」
「ありません。とりあえず殴ってきます」
「あぁもう! そんな事だと思った!」
 この人、本当に見た目と違って脳筋過ぎるでしょ。いつもの現場とは違って、一人じゃないことを思い出してもらわないと。
「それだと、私を連れてきた意味ないじゃん!」
「ふむ、では貴女にお任せしたら上手くいく――と?」
「当たり前です! 舐めないでくださいよね」
 私はニヤリと不敵に笑いながら、手元の端末を操作する。
「あのロボに私がハッキングを掛けます。内部回路に潜入して防御耐性とバリア機能の低下を――
「もっと分かりやすくお願いします」
「えーっと、殴って壊せるようにします‼︎」
 そう答えると、あははっ!とフリンズさんは大声で笑う。その声に、逆に私が驚いて目を丸くする。
「良いですねぇ、分かりやすい作戦。そういうの好きです。――必要な時間は?」
「七分……いや五分‼︎」
「はい。それではお任せしましたよ?」
 フリンズさんはいつの間にか、自身の頭身よりも大きな槍を手にしていた。彼が巨大ロボットへ駆け出したのを見てから、私は地面に座って手元の端末を使い、ネットワーク経由でロボの解析およびハッキングを開始した。

 事前にボスから貰っていた情報を元に、ロボの内部回路へハッキングをかけ、暴走している原因特定と防衛機能およびバリア機能の回路へ潜入……続いて潜入先データに対して管理者権限をダミー認識させて設定変更……よし!
「フリンズさん、お願いしまーす!」
 私が実行コマンドを入力した次の瞬間、フリンズさんは「ふんっ」と手にしていた槍を巨大ロボットの一点に目掛けて投擲した。巨大ロボットが被弾した箇所からコアにヒビが入り、機能停止した。
ぇえ……一撃で?」
「いやぁ、骨が折れましたね」
 そう言いながら彼は、黒の手袋をしている手をパンパンと払いつつ私の元へ戻ってきた。いや、貴方は……汗の一つもかいてないんですが。
「しかし、物魔耐性が高い目標にはいつも時間がかかるので、これほど短時間で停止させられたのは初めてかもしれません」
「そりゃ単純に毎回殴ってたら、そうでしょうね……
 満足気に頷く彼を見て、「やっぱり脳筋が過ぎるのでは……」と小さくぼやいた。

「やはり、僕たちはコンビを結成した方が良いと思います」
 口元に付けていた大きなマスクを取り外し、彼はそんな言葉を口にする。
「というか、――ペアが良さそうですね」
「コンビとペアって違うんだ?」
「えぇ、もちろん違いますよ」
 地面に座ったままの私に対して、笑顔のフリンズさんが手を差し伸べる。差し出された手を取ると、クンっと引っ張り上げられ、体を抱き寄せられる。何事かと目を丸くして驚いている私には構わず、手の甲にキスをひとつ落とす。
「是非、僕の私生活にもお付き合いください、ね?」
 フリンズさんはそう言って、片目を瞑って目配せしてくる。至近距離で行われた一連の流れに、私の心臓が跳ねて頬が熱くなっていくのを自覚しながら、「……はぁ?」と返すのが精一杯だった。
 

「前回も思いましたけど、なんで機械系の制圧が得意なんですか?」
「僕は昔から、機械の壊れやすそうなところが見えるんですよね」
……魔眼か何かをお持ちで?」



『改めまして、どうぞよろしくお願いしますね?』