happasent
2026-02-08 01:22:55
2763文字
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連れエピ+止少く 空町


七月、茹だる様な暑さが少しだけ鳴りを潜めた夜中に貴方は中学校の校門の前に居た。
中学3年最後の七夕、貴方はこの学校の七不思議を解明に来たのだ。

「七夕の夜に屋上に上がると、天の川から織姫と彦星が降りてくる」

小学生がギリギリ信じるか信じないかレベルの、怪談にもならない程度の話だった。
しかし貴方は好奇心から、夜の学校に潜入することにしたのだ。

しかし鉄の扉が貴方を阻んでいる。
貴方の身長と身体能力ではこの扉を乗り越える事は難しい。
しかし下から潜り込むほどの隙間もない
貴方がウォールクライミングに挑むアスリートのように思案しているといきなり話しかけられた。

「お前、何やってるんだ?」

その声の主は自転車から片足をおろしながら貴方を見ている。
近所の高校の制服を着ている彼は気だるそうに、めんどくさそうに貴方に話しかけている。
気になった、と言うより後味が悪くならない様に話しかけている。と言った雰囲気だ

「学校に忘れ物か?もう開いてないみたいだし、今日は大人しく帰ったほうがいいぞ。」

そう言えば彼はこんな風に言っていた。それに対して貴方はどんな風に返したのだったか。




空町とミナミは、学校の教室にておよそ高校生には似つかわしくはないカメラを持って写真を見せ合っていた。

「見て見て、これ!この間草津行ったんだ!」
「お前ほんとフットワーク軽いよなうわ、よく撮れてんな。天気も良いな。良かったじゃんか」

ミナミは楽しそうに笑い、空町はカメラのメディアを遡っていく。

「式くんはなんかないの?最近写真撮ってる?」
「あー、写真は撮ってるけど、お前みたいに風景じゃないんだ。ほら」

そう言ってミナミに見せたのは空町を含めた男女数人が集まって、旧校舎や屋上で遊んだり何かを調べたりしている様子だった

「あー、オカルト部の!」
「歴史部な!歴史部!
最近は放課後もそうだけど、休みの日も連れ出されてるんだよ」
「なるほどねぇでもさ、よく撮れてるよ。式くんらしいじゃん!」
「実は人を撮る方が得意なのかもな、俺は」

その言葉を聞くとミナミはわざとらしく立ち上がって窓枠に腰掛けた。
空町に手招きをして、空町が近づくと肩を組んで笑って見せた

「じゃあ、私達の友情も撮ろうよ!」
「おっ、いいな。それじゃ、はいチーズ!」

瞬間、フラッシュライトが瞬いた。

貴方は一瞬目を閉じると、絵画は先ほどまでの夕焼けの教室ではなく、ミナミと空町が笑い合っているツーショット写真に変わっていた。





そこは一面花畑だった。
青の花が絨毯のように咲き乱れ、そよ風が花を揺らして、花弁を飛ばす

「一度来たいとは思ってたんだよね!ここ」
「そんなこと言って、俺が誘わなかったら来なかったろ」

そこには楽しそうにはしゃぎ、シャッターを切る、ミナミとカメラを持ちそれを追いかける空町がいた。

「つーか、どうしても会いたい、なんて珍しいな。なんか悩み事か?」
「いや、そういうわけじゃないんだ」
「はぁ

ミナミは顔を曇らせるが、わざとらしく笑顔を作り、カメラを空町を向けてシャッターを切る

「ふふっ、間抜け面だ。私も人を撮る才能あるかもね!」
「お前なぁ……人が真面目に心配してやってるのに


「式くん、これ渡しておくね」
はぁ?」

ミナミは自分のカメラをケースにしまい、空町に渡す。
女性にとって大切であり、商売道具でもあるカメラを押し付けられたことで困惑を浮かべる。

「ちょっとね、ちょっとだけ、預かってて欲しいの」
……まぁ、預かるだけだからな」

そう言って空町はケースを肩に下げて、自身のカメラを持ち直す
こちらを寂しそうな笑顔で見つめるミナミを、空町はレンズ越しで見ていた。

不安をかき消すために、シャッターを切った








「ミナミさんはもういません。」

神社の境内、巫女服を纏った女性が空町達に向けてそう告げた。
ぐらりと、まるで地震でも来たかのように足元が揺れる
風景がぐにゃりと曲がる
それほどまでに彼には受け入れがたく、理解出来ない内容だった。

誰かを責めることではない。責めたところで解決しないし、気が晴れるわけでもないのだから

周りが真っ暗になり、空町一人だけが取り残される。
誰かの声も、ノイズになって届かない。

「頑張って、生きなくちゃ」

その声は震えていた。けれど、どの声よりもずっと鮮明だった。
認めるみたいで、嫌だったけど。
それでも、言わなきゃいけないと思ったから
だから、彼も答えた

「お前が生きててよかった」



貴方と彼は成り行きで二人で屋上まで向かうことになる。
昼間とは違う学校は大層静かで不気味である
貴方は事前に決めたルートに沿って屋上まで向かう。そんな貴方を彼は呆れている様だった。

そうして屋上まで上がり、扉を開けようとしたが鍵がそれを阻んでいた。
想像は出来ていたことだが、昼間に屋上の鍵を盗み出すことだけは流石に難しかった。

「そりゃ、屋上の鍵は閉めるわな」

そう言いながら彼は貴方にどけるように軽く押し除けた
彼が何度がノブを回したのち、妙な音がした。
するとゆっくりドアが開いていった。

「俺も中学はここだからな。それなりに馬鹿もやったしこう言うことも知ってるわけだ」

そう言いながら貴方たちは屋上に足を踏み入れた
辺りの街灯はすっかり目に届く事はなく、満天の星空が空を覆っている。
月だけは雲に隠れてしまっているが、それでも十分な光景だった。
そこには勿論織姫と彦星の姿などなく、噂は所詮噂でしかないことを貴方は実感した。


「ちょっと待ってろ」
彼はそう言いながら三脚を立て始め、デジカメをその上に置くと壁に寄りかかる
貴方はその言葉を聞き、同じように待っていると月明かりが見え始めたのだ。

そうして屋上にはまるで天の川に登る為の階段が現れたように
空から光が差し込んでいた。

「これが七不思議の正体だ。うちの屋上は少しだけタイルが混じっててな
月明かりが、この屋上のタイルに反射する。
それが天の川に繋がってるように見えるから織姫と彦星が降りてくるなんて噂になったんだよ」

貴方が彼の話を聞いていると、彼は写真を何枚か撮った後にそれをしまい始めた。
そのころには天の川への道は、すっかりなくなってしまっていた。

「ま、噂の正体なんてこんなもんだ。満足したか?」


貴方の答えを聞いて彼は呆れた様に笑った。
そうしてその後にこう付け加えた

「まぁでも、お前みたいな馬鹿やる奴がいると退屈しなくていいな。楽しかったよ」

そう言っていたのを、思い出した。