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ふーこ
2026-02-08 00:34:11
1899文字
Public
小説
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天翔けよ白き翼
ハメルンワンドロ。お題「リュート二世」「手作り」
2.5ライくらい。リュートくんとグリフォンの話。お題をどちらも絡めたかったのですが、手作りは話題に上がった程度です。
魔獣に騎乗するときの心得として、装備をよく整えよというのは授業でも口を酸っぱくして言われることである。
装備には、魔獣に装着するためのものと乗っている人間の身体を保護するためのものがあり、スフォルツェンド魔法学校にはそのどちらもが備品として備えられている。消耗品のため入れ替えもあるが、新しいものに馴染むのは魔獣にとっても人にとっても時間を要するものである。
魔獣の装備にまつわるあれこれの苦労は一般生徒が受講する魔獣学の実習でよく見られる光景だが、学園の精鋭たるクー・クルセイダースの実習でもそれは同じだ。高度な技術を要するグリフォンの編隊飛行を行っている彼らにとっても、もちろん装備は重要なものなのだ。備品で十分に賄うこともできるが、生徒が個別にグリフォンのお気に入りを用意する場合もある。そもそもグリフォンは飛行のために他の魔獣と比べて骨が脆い傾向があり、装備が飛行の妨げになってはいけないなど、装着させるものに特別に気を遣う必要がある神獣だ。こだわろうと思えばどこまでもこだわることができる。
リュートの召喚するグリフォンはクセのない性質をしていて今までも装備の好き嫌いに困ることはなかったのだが、できるならば少しでも快適なものを使ってやりたかった。休日を使って装備を見繕ってみようと思い立ったのもそんな気持ちからだ。
しかし、「キミにぴったりのものがあるといいねっ」と小さな鳥に姿を変えたグリフォンに微笑んで朝から店を巡り始めたものの、日が十分に高くなっても手応えはないままだった。リュートは眉を下げて相棒の嘴を優しく撫でる。
魔法学校周辺の街には学園の生徒が使用するような品々が豊富にそろえられているが、グリフォンの騎乗用の道具を見つけるのは困難だった。あるいは、見つかってもとても手が届きそうな金額ではなく引き下がるしかなかった。
リュートは少しだけ気落ちした。グリフォンは相変わらず理知的で落ち着いた瞳をして、静かにリュートに寄り添っている。羽のように軽いとよく言うが、頬に触れた白い羽は本当に重さを感じさせない柔らかさをしている。くすぐったくて思わず笑うと、クルル、と小さな鳴き声が返事のように耳に届いた。
本来の巨鳥の姿をしているときは雷のように空を突き抜ける声を上げるのに。リュートはグリフォンの大きな翼が風を捕まえてぐんぐん上昇するときの高揚を、一度標的を捉えたら見逃さない大きな瞳の輝きを、一気に下降するときに感じる体が置き去りにされそうな風圧を思い出して、この相棒のことが大好きだと思った。
「ねぇ、ボクは道具作りはてんで素人だけど
……
。キミのために何か作ってみるっていうのはどうかな?」
問いかけられたグリフォンはリュートの瞳をじっと見つめた。その様子からは賛成しているのか「やめておけ」と言っているのかは分からない。視線を交わらせたまま立派な冠羽をふわりと広げて、ゆっくりと収める。リュートはしばらく考えてから困り気に笑った。
「危ないからやめておけって? そうだね
……
魔獣具作りは職人仕事だものね。魔法で道具が作れるっていうのならボクも自信があるんだけどなぁ
……
魔法なら
……
」
言いかけて、リュートははたと目を丸くした。
「そうだ、魔法
……
っ。今の装備にかけてる守護と強化の魔法をもっと改良してみよう。道具をつくることはできなくても
……
そういうことならボクは得意だから」
そうと決まればこれから学園に帰って魔法の研究だ。リュートの全身にやる気が漲った。参考にできそうな魔道書をいくつも頭に浮かべてあれは図書館の何番目の本棚にあったはずだとか、今の魔方陣を書き換えるならあの部分だとか、くるくると頭を回転させる。
グリフォンは足でしっかりとリュートの肩を捕まえたまま、同調するように大きく羽ばたいた。抜け落ちた白い羽が目の前をゆっくりと舞って、リュートはそれを捕まえて胸ポケットに差し込んだ。お守りのようで心強かった。
グリフォンの足は熱くなっていて、全身の羽毛を膨らませて意気揚々としている。こうしているとかわいい小鳥のように思われて愛でそうになるが、敬意を欠いてはいけない、とリュートはひとつ咳払いをした。戦闘訓練では文字通り命を預け合う関係なのだ。強く賢く信頼すべき存在で、そんな相棒から信頼されるよう努めなくてはいけない。
「いつも背中に乗せてくれて、ボクの翼になってくれてありがとう。これからもよろしくね」
学園へと足取りも軽く帰って行くリュートの影はグリフォンと一つに溶け合い、空にだって駆け出しそうな姿をしていた。
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