tachi_aoi_0615
2026-02-07 22:21:22
1038文字
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夕焼け


「今日の夕焼け、やけに赤いな」
 原田はぽつりと呟いた。
 夕焼けといえば橙だと思っていたが、今日のそれは少し不気味なくらいに赤かった。
「本当ですね。知っていますか? 真っ赤な夕焼けは、雨の前触れだそうです」
 原田は少し俯いて声の主を見つめる。
「そうなのか、知らなかった。流石平助、博識だな」
「カルデアには知識のもとが幾らでもありますからね」
 称賛された藤堂が照れたように微笑む。
 原田は藤堂の頭をくしゃりと撫でた後、改めて真っ赤な空を見上げた。
 何するんですか、という抗議の声は聞こえない振りをする。
「異世界って感じだな」
 原田には、世界全てが赤に染まってしまったように見えた。
 真っ赤な夕焼けは雨の前触れ――
 そんな事実が自分と重なったように思えてしまう。
 原田は、もし自分が浪士組へ潜入することがなかったらどうなっていただろう、と何度もした自問自答を思い返す。
 きっと何も変わらない。原田のいないまま、問題なく新選組は前へ進み、そして消えていったはずだ。
 ただ、藤堂の運命は少し変わる可能性もあっただろう。
 あの日、藤堂の前にいたのが自分でなければ、彼がその瞳から光を失う日がもう少し先になったのかもしれない。
「原田さん、夕焼けと同化しそうですね」
 原田の内心に気付きもしないまま、藤堂はからかうような表情をする。
「そうか?」
「丁度原田さんの髪色と空の色が似てきましたから。肌も赤く染まって、照れているみたいで可愛いですよ」
「こんなデカい男捕まえて可愛いはないだろ」
 原田の返事に藤堂が楽しそうに笑う。
 今ここで藤堂と二人並んで歩いていること自体本来ならありえないことであり、レイシフトもしているのだから異世界というのも間違いではないだろう。
「だいたい、平助だって赤く染まってるだろ」
「そうですか? 赤は嫌いじゃないのでいいですけど」
 藤堂は原田を見て目を細める。
 赤、という言葉に込められた意味に確信が持てず、原田は黙り込んでしまう。
 ――これは、自惚れていいやつか?
 それとも、赤というのは彼が死した際に身につけていた羽織のことだろうか。
「本当に綺麗ですね、眩しいくらいです」
 そう言って藤堂は頬を緩める。
 原田は綺麗なのは俺よりも……、と返そうとしてやめた。
 藤堂の言葉の意味はわからないが、恐ろしく思えた赤い世界がだんだんと美しく見えてきたのだ。
 今日はただ、それだけでいいと思ったから。