三毛田
2026-02-07 20:34:14
1097文字
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61 15. 夜の底に潜る

61日目
君と二人、満月に照らされて

 真っ暗な海岸を、一人歩く。
 振り返れば、砂に足跡がつくのが見えて。
 でも、波がそれをさらって一瞬で消えて無くなる。
……
 満月の光が優しく降り注いでいて。遠くから眺めれば、美しい景色なのだろう。
 ただ、対象が俺である為そうとは言えないかもしれない。
「たん、こうっ」
 ここにいるはずのない声が聞こえ、振り返れば膝に手をつき肩で息をしている穹。
「どうした」
「お前、黙っていなくなるなっ」
「ただの散歩だ」
「ただの散歩で、羅浮に来るものかよ」
 深呼吸して、何とか呼吸を整えようとしていて。
「海に、来たかった」
「俺も誘え」
「寝ていたから、声をかけるのを躊躇われた」
「言い訳すんな」
「言い訳ではなく、事実だ」
 そう。
 穏やかな寝顔で、気持ちよさそうに眠ていたから声をかけるのを躊躇われて。
 だから置いていったのだ。それなのにどうしてかこうして文句を言われている。
「俺のこと、嫌いなのか」
「どうしてそうなる」
 思わず呆れた声が出てしまった。
 彼の思考は突拍子もない上に、色々と考えが飛躍しすぎていて。
 たまに追いつけない。
「俺も一緒にっ」
「だが」
「一緒じゃないとやだ!」
「海に潜ろうと思っていたのだが」
「何とかして」
 若干涙目になりながら、俺の腕を掴んでくる。
「長時間は無理だ」
「でも、でも」
「わかった。浅瀬にしよう」
「やった〜!」
 大きく両手を挙げ、それから俺に飛びついてきて。
「丹恒、チュー」
 仕方なく抱きとめれば、キスをしたいと顔を近づけてくる。
 拒否する理由もないので、口づければ。
「ふふふ」
 嬉しそうに笑う。
「嬉しそうだな」
「もちろん! 丹恒が好きだからな!」
「そうか。行こう」
「うん! っていうか、今更なんだっけど飲月なんだな」
「潜るからな」
 彼の手を引き、海の中へと進む。
「ちょ、丹恒っ」
 穹を抱きしめつつ、もう一度口付けてから沈んでいけば。
「!」
 驚いたように開いた口から、泡がこぼれ落ち。海面へと向かっていき。
 浅い海底に足をつけ。しばらく二人で海の中を泳ぐ。
「ぷはっ」
「どうだ?」
「ナーンも見えなかった! でも、満月だから月は綺麗だったな」
 効果が切れそうになる頃、海面まで戻り。
 砂浜を歩きながら、感想を問えば笑顔で答えてくれる。
「それはよかった」
「どこがだよ」
 俺が小さく笑うと、不満そうに唇を曲げて。
 海水でベタベタなので、水で洗い流してから列車へ戻り。
「丹恒。まずは風呂だからな」
「わかったから、引っ張るな」
 と、無理矢理風呂へと沈められた。