スサ
2026-02-07 20:06:14
1175文字
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【鬼水】ガス乾燥機のKンタくん



 水木は出張先である種運命的な出会いを果たした。それは

「Kンタくんはすごいんだ」
 久々に訪れた実家─正確には違うような気がするが、家主がそうだと言うので逆らわないことにしている─で、鬼太郎はどこの誰とも知らない男の話を聞かされるはめになり、こめかみを徐々に引きつらせ始めていた。
「なんというか、Kンタくんのおかげでな、洗濯物がふかふかに乾くし、だから梅雨も冬の寒さも関係ないんだ」
 水木は熱心だった。
 彼は義息がこの話題を喜んでくれると信じて疑っていなかったので。
「すごく頼りになる。まさか出張先で知ることになるとは
……ゆきずりの相手なんですか?」
 え?
 と水木はきょとんとしたように首を傾げた。
 鬼太郎は真剣な顔で水木を見つめる。本当に真剣だった。
……ゆきずり?というか、名前は前から知ってたかな」
っ、じゃあ、旅先でそいつがあなたに接近してきたんですか」
 接近?
 と、水木はまたしても首を傾げた。鬼太郎は苛立ちを募らせる。
「あ、でも、うちにも導入を考えていて」
「挿入?!」
「?導入だが
 ここに至り、もしかして鬼太郎には話が通じていないのでは?と水木は気づいた。
「鬼太郎、あのな
「Kンタって誰なんだ」
……?おまえ、知らないのか?洗濯物をホカホカに
「洗濯物をホカホカって!それくらい、僕だってできるっ!」
 ついに癇癪を起こして声を荒げた鬼太郎に、水木はぽかんとした顔をする。目と口を丸くして。
「ぼくはっ!認めない!そんな男!」
…………………おとこ?」
 きっと目を吊り上げ、肩で息をする鬼太郎に、水木は呆然と繰り返した。
「Kンタって、僕の知らない男っ……!」
 は、と水木は気の抜けた声を出して、それから気が抜けたような声で笑った。
「何がおかしいんだ!」
 怒りすぎて、鬼太郎の目に涙が滲む。だが水木はしばらく笑って、それから、こちらは笑いすぎて滲んだ目をこすった。
おまえ、俺のこと大好きなんだなあ」
「な………
 鬼太郎の顔が真っ赤になる。怒りでなく、恥ずかしさで。
「乾燥機のことだぞ」
…………?」
「だから。ガス乾燥機」
……………乾燥機?」
 そう、と水木は頷いた。
 鬼太郎はあ然とした後、真っ赤になった。

「なあ、機嫌直せよ」
 すっかりしましまの団子になってしまった鬼太郎の、多分背中あたりを擦りながら水木はなだめた。
「紛らわしい言い方して悪かったよ。ほら、俺、昼間家にいないだろう。で、出張先の宿に洗濯乾燥機があってさ。すごくよかったもんだから
 鬼太郎からの返事はない。
「鬼太郎〜、おまえが一番に決まってるだろう」
 羞恥心からダンゴムシになった鬼太郎が機嫌を直すまでは、もうしばらくかかるのだった。