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ぽふむん
2026-02-07 22:00:00
1637文字
Public
ワンドロ
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冥途の道行き
#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負
「旅の途中」「道連れ」
道連れにできた者、出来なかった者の対比という意味で獪岳がいます。
冒頭の歌は大正時代の流行歌だそうです。
こういった作業の時、昔の人ってよく歌ったなと
🎶おれは河原の枯れすすき
同じお前も枯れすすき
どうせ二人はこの世では
花の咲かない枯れすすき🎶
朗々と船頭が歌を歌いながら冥い河を渡っていく。
三途の川の渡し守だ。
正確にいえば違う。
三途の川は生前に犯した罪の重さによって渡り方が違う。
歩いて渡るものもいる。
その中でも、浅瀬を渡ることが許されるもの。
深いところを行かねばならぬものもいる 。
川幅が太いところを進む者。細いところを渡ることができる者もいる。
この一行のような者もいる。
海のように向こう岸が見えないが、凪いで穏やかな河を優雅に舟で渡っている。
ひとつ違うのは、この船頭は三途の川専属の渡し守ではないこと。
この船の真ん中に、女とともに座している男の生前の行いによっておこぼれを貰えたに過ぎないことと言える。
「あん
……
貴方様は鬼だった。しかも上弦の弐。なのに生前の善行もヘチマもあるんですね」
船頭、かつて獪岳と呼ばれた少年は少し怯えながら問う。
それに対して、船の中央にいる男
かつて上弦の弐 童磨と呼ばれた男は高らかに笑って応えた。
「そりゃ鬼は無惨様の温情で“生きているように振舞っていた”に過ぎないからだよ。
本来は死人。“鬼籍に入っていた”者たちばかりだからということだろう」
その応えに獪岳は『 ふぅむ 』とうなった。
人ではなく別の生き物になった。
死人ではなく屍人。
「あはは、君は環境が恵まれなかっただけ。なかなか賢い子だね」
童磨は、また高らかに笑った。
「俺の周囲にこんな賢い子達がいたならね
……
今更ながら悔やまれるよ」
童磨はなんだか妙に楽しそうだ。
冥い河の水面に、船上の三人の生前の行いが次々と映し出されている。
「へぇー、君しのぶちゃんと同じ歳なんだぁ。同期だったんだね」
隣に侍る少女の頭を優しく撫でながら、童磨は水面に映し出される光景を見つめた。
「なんでだよ
……
選抜は『 生き抜け 』であって『 鬼を斬れ 』とは言ってないからまだいい。鬼殺隊でありながら鬼の首が斬れない
……
刀鍛冶の爺に贔屓してもらって、特殊な刀を打ってもらって
……
あんたが柱で俺は
乙
きのと
止まり
……
なんでだよ」
映し出される光景を見ながら、獪岳は絞り出すように悔し気に悶えた。
今まで押し黙っていた少女 しのぶが口元に笑みを浮かべ応えた。
「それは多分
……
目標だけを見ていたからです」
目標 ?
しのぶの答えに獪岳はキョトンとした。
「貴方はただ生きたかっただけ。桑島さんのことも『 尊敬 』はしても『 目標 』ではなかったでしょう ?」
うぐっ
……
と、獪岳は息を詰めた。
「私は、姉が殺され四年
……
この男を如何に殺すか。それだけを考え生きてきました。他の鬼なんてどうでもよかった」
そう言うと、少女は綺麗な嫋やかな笑顔を浮かべた。
「脇目も振らず、この男を殺すために一年以上毒をこの体に蓄えました。他の誰かになんと言われようが知ったことではありませんでした」
あぁ、そうか
獪岳は得心した。
(俺は、せめて最期はあの『 カス 』を道連れにしてやろうと思ったくせに、知らねぇ男になんか言われたくらいで脇目を振った。言い返すことに意識をやった)
呆然と立ちすくんでいた獪岳だったが、妙な息遣いで我に返った。
かつての上弦の弐が頬を紅潮させ、感動に打ち震えていた。
死んでいるからいい様なもの。
今にも過呼吸を起こすのでは ?と思うような息遣いだ 。
「し
……
しのぶちゃぁん♡
……
はぁ
……
はぁ
……
しのぶちゃぁん
……
好きぃ♡そんな
……
よね
……
四年も俺の事を思って
……
俺の為
……
好きぃ♡」
そして、しのぶに抱きついた。
「こらぁ
……
離れなさ〜い」
しのぶが抵抗するが、体格の差で叶わない。
道連れにできたか出来なかったか。
その差が何かを見せつけられた。
獪岳の心は、何故かすっきりしていた。
(早く向こう岸に行こう)
船を漕ぐ手に力を込めた。
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