フリンズさんに保護されつつ買い物に行く話

※トリップ夢です。ご注意ください。
※ヤフォダちゃんが少し居ます。

 私は今、異世界転移という奇妙な状況であり、夜明かしの墓と呼ばれる場所にいるらしい。いや……墓って、住居になるの……
 ――いやなってるわ。ここは紛れもなく墓地ですね。なんだか沢山いらっしゃいますし。

 夜明かしの墓という場所から移動して、今日はナシャタウンという街に到着した。
「何かとご入用かと思いまして、まずは街で日用品などを揃えましょうか」
 そう言ってフリンズさんがここまで連れてきてくれたのだが、道中は……まぁ色々あった。なんかモンスターとかいたしさ、見たこともない動植物は興味深かったし、地形も山あり谷ありすぎて怖かった。今の所は、一人でここには来れない思うので、必要なものを今日中に集めなければ。
 元々着ていたパンツスーツは、フォンテーヌ?とか言う国の服に似ているらしく、この町でも後ろ指刺されるようなことはない様子で助かった。しかし浮いているのはその通りなので、あとで洋服も手に入れたいところだ。

「それでは、いくつかお店を周りましょうか。さぁ、お手をどうぞ」
 そう言うとフリンズさんは、私に手を差し伸べてくれる。……エスコートしてくれるってこと?
「えっと……不要ですよ?」
「そう言わずに」
 ニコ、と笑うだけで手は引っ込めるつもりは無いらしい。仕方ないので、大人しく私の手を乗せると、彼は私の手を引きながら街の中を進んでいく。
 
 フリンズさんが選んでくれた必要そうなもの、私が必要だと判断して買ってもらったものなど、色々と準備できたと思う。荷物は彼が全部持ってくれている。少しは持つと進言してもこちらには渡してくれないので、少しの申し訳なさと感謝の気持ちが半々だ。
「あとは、そうですね……。おや? ちょうど良いところに」
 そう言った彼の目線の先を追うと、一人の女性が歩いていた。
「少しここでお待ちくださいね。すぐ戻ります」
 そう言ってフリンズさんは、見かけた知り合いらしき女性の方へと歩いていく。すると、それまであまり気にならなかった周りの『声』が聞こえ始めた。
 道ゆく女子達がフリンズさんを遠目から見て、友人達と一緒にひそひそと小声ながらも嬉しそうに話しているのだ。その光景を見て思うことは、「あぁやっぱりそうなんだ」である。
 やっぱり、この世界でも格好良い基準高めの人よね⁈

「お待たせしました」
そう言って彼は、声をかけにいった女性と戻ってきた。
「こちらはヤフォダさんです。残りの買い物に、彼女も付き合ってもらうことになりました」
「初めましてだな、よろしく! ショッピングは趣味みたいなもんだし、フリンズの連れとなれば断る理由も無い。というか報酬貰うから気にしないでくれ」
「よ、よろしくお願いします!」
 いきなりのメンバー追加には驚いたが、正直な所とても助かる。フリンズさんに聞けない、買いたい物もいくつか……ある、からね。
 ヤフォダさんは明るく物怖じしない女の子で、こんな怪しい私でも気にせず接してくれて嬉しかった。フリンズさんは微笑みを浮かべながら後ろを着いてくる形で、支払い時だけ前に出て来てくれた。

「これなんか良いんじゃないか?」
 洋服屋さんで、ヤフォダさんが洋服を選んでくれると言ってくれたので、お任せしてみた。彼女自身は活発少女全開って感じの服装だが、私には肌の出ない服を選んでくれて安心した。少し話しただけで良い子だと分かる。
「よくお似合いですよ」
 後方にいたフリンズさんが声をかけてくる。「ヤフォダさん、こちらも如何でしょうか」「いいじゃん、フリンズはこういうの好きなんだ?」「そう言うわけでは……」と、あれよあれよと数着選ばれて会計されていた。私の意見は……どこに?

――と、ひとまずこのぐらいだろ。あんたも大変だなぁ……災害で家が無くなったんだって? 何かあれば、あたいも姐さんも、力になるからな!」
 強めに背中をバンバンと叩かれて、走り去っていくヤフォダさん。フリンズさんは、彼女に一体どんな説明をしたんだ? 姐さんとは? まだ後方にいるフリンズさんを振り返っても、去っていく彼女に手を振りつつ和やかに微笑むだけで何も言わない。うん……辻褄を合わせなければならないので、後で詳しく聞いておかないと。
 
「そろそろ疲れたでしょう。甘いものは如何ですか?」
 近寄って来た彼に差し出されたのは、……飴細工? ランプの形をしていて、とても可愛い。正直とても疲れてたので、嬉しい気遣いだ。素直に受け取ってから、気になったことを聞いてみる。
「ありがとうございます。どこかで買って来たんですか?」
「半分正解で、半分不正解です」
 ……どう言うこと? と怪訝そうな顔をすると、彼はクスクス笑う。そして、通りの向こうを指差すので目線を向けると、何かの小さなお店が見えた。
「あちらに飴細工のお店がありまして、僕は飴細工を作るのが得意なのです」
……つまり?」
「僕の手作り、ですよ」
 これを、彼が、自分で⁈ 凄い、そんなこと出来るんだ。せっかくなので一口食べてみると、疲れた体に甘さが染み渡る。少しずつ飴を食べ進めていると、またフリンズさんの笑い声が聞こえた。なにをそんなに笑っているんだ?と目線だけ彼に向ければ、口元を大きな手で覆い隠していたが、隠していても彼の口角が上がっているのが見える。実に楽しそうだが、そんなに面白おかしい所あったかな。
「人間の言葉に、『目は口ほどに物を言う』という言葉があるそうですが、貴女はそれを体現しているような存在ですね。言葉数は少ないですが、とても分かりやすい」
……そんなことないと思うけど」
「いいえ、今日一日見ていたので分かります」
 そう言って彼は、手で顔を隠すのをやめて、私の方に向き直る。

「僕は、貴女に興味が湧いて来ました。どうぞ、よろしくお願いします、ね?」
 
 彼は満足気に笑みを浮かべたまま、私の頭に手を乗せて撫でている。わたしには分かる。これは、愛玩動物の扱い方でしょ……
 それに気づいた私は、ヤフォダさんとの買い物途中、彼女に隙を見て小声で言われた言葉を思い出す。
「フリンズは変わったやつだけど、大丈夫か?」
 ――ダメかもしれないし、もう手遅れな気がして来た。


「さぁ、帰りますよ。食べながらで構いませんので、歩いてくださいね」
「はーい。――そういえば、この街っていろんな人? 人種? がいるんですね」
「このナドクライは自治地域であり、『冒険者の楽園』と言われているのです」
「なるほど。いろんな国の人や人種がいるのは、そのお陰なんですかね」
「そうかもしれません。まぁ、僕は人ではありませんが」
――――は⁈」


 
『肝心なことは教えてくれない彼を、どうしてくれようか』