ひよこ
2026-02-06 19:52:07
4709文字
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全空一のチョコレート

・サンルシでバレンタインネタを書きたいところだけ書いた
・ルシフェル復活時空&いつものゴリ押しストーリー
・闇オークションで売られるフェルが見たくて無理やり話にねじ込んだけど技量が無くてまともに扱えなかった(泣)
・カプ要素を含んでいるつもりはないですがルリア(とビィ)を大事に思う団長が一瞬出ます

 最近サンダルフォンはファスティバが運営するラードゥガに通っている。そこで酒を飲みアルコール耐性をつける特訓しているそうだ。私といつかワインを共に嗜めるように、と。最近少しだけ飲めるようになったと嬉しそうに語ってくれた。お酒に酔いやすい体質に創造してしまったのは私なので不平を言う立場にはないのだが、彼と過ごす時間が減ってしまって少し残念に思っていた。酔っているところを見られたくないからラードゥガに来ないで欲しいと言われたが、少しくらいなら覗いても許してくれるだろうか。そう思いラードゥガの入り口まで来たのだが、何やら盛り上がっているようでサンダルフォンの大きな声が聞こえた。

「ルシフェル様が作るチョコレートがぁ、全空一に決まっているだろう!!ヒック……

チョコレート?サンダルフォンは何の話をしているのだろう。彼の声に続いて元気な女性の声が聞こえた。

「いくら元天司長でなんでもできるからってぇ、全空一は流石に言い過ぎだろ〜〜!!それにチョコレート作りなら私も自信あるぞぉ!!ヒック……

この声はベアトリクスのものだろう。以前、珈琲に合うチョコレート作りを一緒にしたとサンダルフォンが紹介してくれた。

「君が作るチョコレートも中々だがぁ……ルシフェル様が作るチョコレートは特別なんだぁ!!」
「ほらほら、アナタたちお酒飲みすぎよ。お水飲んで……

ファスティバの声が徐々に聞こえなくなった。理由は私がラードゥガから離れたからだ。あの話しの流れでサンダルフォンに声を掛ける勇気が出なかった。経緯はよく分からないが彼は私が作るチョコレートを所望しているようだ。しかもただのチョコレートではなく全空一の……。私はサンダルフォンの期待に応えられるだろうか。彼の期待するチョコレートを渡す事が出来たら彼はどのような笑顔を見せてくれるだろう、とも考える。彼の期待に応えたいという想いが強くなった。全空一というにはまずは既存のチョコレートを研究する必要があるだろう。ひとまず話し掛けやすい団長に相談してみる事にした。

「チョコレート?そっか、もうすぐバレンタインですよね!」

なるほど、バレンタインか。サンダルフォンは私にバレンタインのチョコレートを希望していたのか。全空一の……

……ああ。それで団長が思う素晴らしいチョコレートとはどのようなものか教えて欲しいのだ」
「素晴らしい?そうですね、団の皆がくれるものなら何でも嬉しいです!」

食べられるものなら、と小声で補足された。

「団長らしい回答だな。それでは特に印象に残ったチョコレートはあっただろうか」

団長は目を閉じ、人差し指を頬に当てた。真剣に考えてくれているのだろう。

「うーん、動くチョコレートはやっぱり印象には残りますね、味はともかく……。後、1/6スケール団長型チョコは凄く凝ってて完成度高かったと思います」
「貴重な意見、感謝する」

全空一と称されるには味だけではなく見た目にもこだわる必要があるのだ。貴重な学びを得た。他の者にも意見を聞いた方が良いだろうか?書物を調べてみるのも良いだろう。そう考え、その場を立ち去る。サンダルフォンに納得してもらえる全空一のチョコレートを作るにはどうしたら良いかを思考する事で頭がいっぱいになってしまっており、団長の重要な言葉を聞き流していた事に私は気付かなかった。

……後、ルリアがくれたチョコレートも凄く印象に残ってます!ルリアが私の為に一生懸命作ってくれたのが分かったから……ってあれ?ルシフェルさん?」

 
 既存のチョコレートについて研究した結果、極上の味と至高の芸術品にも負けず劣らない形状を兼ね備えたモノが全空一のチョコレートと呼ぶに相応しいと私は結論付けた。評価というものは当然主観も考慮する必要がある。つまり、サンダルフォンにとっての全空一となるモノを考える事が重要だ。彼の味の好みは誰よりも把握している自負がある。材料の用意が出来さえすれば味については全空一を達成できる自信があった。問題はどのような形状にするかだ。彼の好みの形状……。彼の好きなモノ……。私、だろうか?私がこの世界に再顕現したすぐ後に彼が私の事をかつてからずっと愛していると打ち明けてくれた。彼の告白を聞いて、漸く私も遥か昔から彼を愛していた事に気付いたのだ。バレンタインにチョコレートを送る事で彼への愛を改めて伝えたいという想いが強くなる。私の形をしたチョコレートを彼は好いてくれるだろうか。期待に胸膨らんだ。

* * *

 サンダルフォンが任務で出掛けた日の昼、私は近くの街に出掛けた。目的は資金調達。アルバイトでチョコレートの材料費を稼ぐ必要があった。私個人で使える資金は団から支給されているのだが、その費用を使うとサンダルフォンにどのようなチョコレートを作ろうとしているかを気付かれてしまう可能性がある。事前の情報開示は驚きが減る要因になってしまう。驚きも全空一のチョコレートに必要な要素だと私は考えている。だから彼には秘密で事を進めたかった。

 アルバイトについての募集が並んだ看板の前に立ち、時給を確かめる。いずれも想像していたより安価であった。このままでは『1/1スケールルシフェル型チョコ(六枚羽駆動機能付き)』を作るための資金が足りなくて計画に支障が出てしまう。どうしようか、と考えていたところ、看板の近くに立っていた少年がこちらを見ている事に気付いた。

「何か私に用があるのだろうか?」
「お兄さん、あの看板見てたって事はお金に困ってるの?僕が良い仕事紹介してあげるよ!」

エルーンの少年が私を腕を強く引っ張る。明らかに裏がありそうだ。だか、私は彼の手を解く気になれなかった。彼の顔が余りに必死だったから。それに彼の容姿が少しサンダルフォンに似ていた事も少なからず影響していただろう。私は彼について行くから焦らなくて良いよと伝えた。

* * *

 エルーン似の少年について行った先は何と闇オークション会場の地下だった。そこで所謂ガラが悪いと称されるハーヴィン達に私はあっという間に手足を縄で縛られてしまった。今の私は天司長だった頃より弱体化したとは言え、一般的な空の民であれば問題なく対処できる。しかし、エルーンの少年はどうやら妹を人質に取られていたようだったので、少年達の為にも一旦大人しく捕まる事にしてみた。見張り番達の会話を盗み聞いたところ、闇オークションを牛耳る首謀者は闇オークションが終わる頃にここに到着する事が判明した。首謀者が揃った段階で首謀者達を一斉に叩くのが最も効率が良いだろう。オークションが開始するのは夕方ごろ。このままでは帰るのが遅くなってしまいそうだ。サンダルフォンに遅くなる時は連絡するように言われていたためテレパシーで連絡を取る事にした。
 
* * *

「それでは最後の商品となります!」
「64番!◯◯◯万ルピからどうぞ!」

 私の番になり、オークションの客達が次々に値を付け出した。最初の提示額からあっという間に跳ね上がる。これだけの値がつけば『1/1スケールルシフェル型チョコ(六枚羽駆動機能付き)』用の材料費の心配も無いだろう、と自分が入札金を手にする訳でもないのに考えてしまう。この額なら1/1スケールどころか大きさを十倍にしたり、羽に発光機能を付けることも出来そうだ。我ながら緊張感が無さすぎる。でも仕方がないのだ。サンダルフォンが急いで迎えに来てくれると言ってくれたから。彼が迎えに来てくれるのは魂の終着点から連れ出してくれた時以来だ。あの時の気持ちを思い出し、思わず頬が緩んでしまった。

* * *

 闇オークションは迎えに来てくれたサンダルフォン、彼より少し遅れて現れた団長達によってあっという間に壊滅となった。商品にさせられた人達やエルーンの少年と彼の妹も無事保護されたようだ。

「もう悪い人達に捕まってはダメだよ」

次は気を付けるんだよと少年達に声をかける。少年から闇オークションに連れて行った事について謝罪を受けた後、

「お兄さんも気を付けなきゃダメだよ」
「お互い気を付けようね」

と兄妹に言われてしまった。私は君達の為にわざと捕まったのだと弁明しようと思ったが横から鋭い視線を送る人物がいたので口を閉じて少年達に手を振るに留めた。彼らが見えなくなってから彼の方を振り返る。

「サンダルフォン、任務中だったのにすまない。 手間をかけさせてしまったな」
「ルシフェル様……。今日は覚悟して下さい」

と言った後、彼は無言になってしまった。彼の目はとても鋭く、視線が具現化して突き刺さるではと思ってしまうほどだった。

 
 合流した団長達と一緒にグランサイファーに帰り、自室に戻る。漸くサンダルフォンが口を開いたかと思うと怒涛の説教が始まった。長々と説教をする彼に対し、私は自分一人で問題解決ができた事をあらゆる手段を用いて説明する。その度にそういうことでは無い!と叱られてしまった。今日の事だけではない。復活してからの私や天司長だった頃の私の行動についても散々指摘を受けてしまう。俺をもっと頼って下さい、とも言ってくれたのだ。かつての私達では考えられないやり取りが出来るようになったことに場違いながらも嬉しくなってしまった。

* * *

 バレンタイン当日。私は彼に手作りチョコレートを渡した。ハート型のチョコレートを。

「ルシフェル様、チョコレートを用意してくださったのですね。ありがとうございます!」

サンダルフォンはとびきりの笑顔を見せてくれた。がっかりされないか心配だったが杞憂だったようだ。

「本当は『1/1スケールルシフェル型チョコ(六枚羽駆動機能付き)』を作ろうとしたのだか、予算が足りなくて……。君の期待に応えられなくてすまない」
……はあ?今、何と言いました?」

私はサンダルフォンに伝えた。ラードゥガでサンダルフォン達がチョコレートについて話していたのを盗み聞いてしまった事を。

「あれを聞いていたのですか!?」
「ああ。闇オークションの件があって以降、君に無断外出禁止令を出されてしまっただろう。隠れての資金稼ぎが全くできず、想定していたチョコレートが用意出来なかった。君の期待を裏切ってしまったな……

サンダルフォンの顔を見るのが忍びなくなり床に目を向けた。そんな私の手を彼が取ったため、再び目線を上げる。

「ルシフェル様!違うんです!」
「違う……とは?」
「あれは、他の誰でもない『貴方』が作ってくださるチョコレートが俺に取って何にも代え難いもの、という意味で全空一と言ったのです!あの時は酔っていたせいか勢い余って大袈裟に言ってしまいましたが……

そうだったのか。味や形状ばかりに気を取られてしまっていたが、そういうことではなかったようだ。彼は『私』が作るチョコレートを全空一と言ってくれていたのだ。

「サンダルフォン。そのチョコレートはワインに合うよう作った。君と一緒にワインを飲みたいと思っていてね。君が会得したアルコール耐性を私に見せて欲しい」
「俺の為にワインに合うチョコレートを用意してくださったのですね!是非頂きたいです!」


 
 彼がチョコレートの感想を伝えてくれた後、弾ける笑顔でこう言ってくれた。

「やはり、ルシフェル様が作ってくださったチョコレートが全空一です!」


終わり

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