幸希(ユキ)
2026-02-05 22:53:01
778文字
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逃がさない、逃がせない

最近短いのばっか。
でもこういうのは長々語るものでもないかな。

わしの嫁御。可愛いお人。照れて逃げるフリをするなぞよくある事。
逃がさん。逃がせん。どういてあがに可愛い人を離せよう。

「むっちゃん。」

ぎゅうっとしがみついてくる主が可愛くて可愛くて堪らん。置いていかれることを怖がる主。手離される事に不安を覚えては、縋るように「逃がさないで」と口にする。
ほんまは不安になぞさせとうない。ただわしを想うて、わしの事だけ考えればえい。わしの言葉を愚直に信じちょればえい。けんど、意地の悪い部分が時々顔を出す。

(そうして不安に思って、わしに縋ればえい。)

可愛いおまさん。哀れなおまさん。こがな悪い男に捕まった。もう逃がす事なぞ出来ん。
愛してしもうた。欲しがってしもうた。おまさんが欲しゅうて堪らん。囲って、閉じ込めて、わししか見えん世界で溺れればえい。

(結局、出来はせんのじゃが。)

愛しちゅう。大事なんじゃ。おまさんが望むがやったら、どれだけでも叶えてやりたい。無垢に笑うおまさんの顔をずっと見ちょりたい。
わしとおる事が幸せじゃと、そう思うて欲しい。

(どれだけでもとは言うたけんど、『手離してくれ』だけは聞き届けられんがの。)

それ以外ならどれだけでも聞き届けよう。そうする事で、おまさんがわしのねきにおってくれるがやったら。

「主。」
「なぁに。」
「愛しちゅうよ。どうにもならんほど、おまさんを愛しちゅう。」
「私も、むっちゃんを愛してる。」


身を寄せてくる主を強く強く抱き締める。逃がさない。逃がせない。おまさんと生きていく。そう決めた。【人として死にたい】と言うおまさんの願いを最後まで見届ける。それが約束じゃ。

(けんど)

















生きて、生きて、天寿を全うして、おまさんが己の業から解かれた、その時は──




(どうか、わしと永劫を)